宇宙・素粒子スプリングスクール2024|プロジェクト研究の紹介

最高エネルギー宇宙線

Supervisor:荻尾彰一 Supporter:高橋薫(D1)、小山千里(M1)、藤末紘三(D3)

参加人数 : 6人 (受け入れ可能な上限)
事前の準備  : 2月中旬の1日:ハイブリッド(可能な限り柏で対面)事前講習


 ◼︎目的と達成目標
 宇宙からは、地上の加速器では実現できないような非常に高いエネルギーを持った粒子が到来しており、10の20乗電子ボルトにも到達する粒子を最高エネルギー宇宙線と呼びます。その起源は不明ですが、ブラックホールや極超新星などの極限的な環境の天体・物理現象が関係していると思われます。到来頻度の低い最高エネルギー宇宙線を観測するには、宇宙線と地球大気が反応してできる空気シャワーを観測します。本プロジェクトでは、空気シャワーの生成と観測の原理を学び、実際に実験室で空気シャワーの観測を行います。観測データを解析し、宇宙線の到来方向を測定します。
 ◼︎手法と指導内容
 実験室に設置した6台(昨年より台数増加!)のシンチレーション検出器で、同時計測法によって空気シャワーを観測します。取得したデータを解析し、天球図上に到来方向分布として表示します。議論を通してデータ較正や結果の解釈を進めます。2月中に1日、オンラインで(全参加者が可能であれば柏で対面で)実験装置の基礎的な扱い方の習熟と練習用データ取得を行い、期間までにデータ解析手法を学んでもらいます。期間中(3/4-8)は、取得したデータの解析と追加データの取得を行い、結果をまとめて発表資料を作成します。

2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段の写真は、北棟1階の望遠鏡組立実験室で、実験装置を配置して機器を調整するようす)
2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段の写真は、北棟1階の望遠鏡組立実験室で、実験装置を配置して機器を調整するようす)

宇宙ニュートリノ研究

Supervisor:竹田敦 Supporter : 神長香乃(M2)、河内弘輝(M2)

参加人数 : 5人
事前の準備 : 2月中旬の1日:スーパーカミオカンデ見学。小型検出器でデータを取得する。


 ◼︎目的と達成目標
 ニュートリノは電荷をもたず物質とほとんど相互作用をしないため、観測が非常に難しい素粒子です。このニュートリノを観測しその性質を理解することは、宇宙の起源や進化の解明に深いかかわりをもちます。岐阜県飛騨市にあるスーパーカミオカンデは、世界最大のガドリニウム水溶液を用いた宇宙素粒子観測装置であり、太陽・大気・加速器・超新星爆発等を起源とするニュートリノ観測を通して宇宙初期に物質がどのように作られたかという根源的な謎の解明を行っています。2022年度初頭にはガドリニウム濃度が0.03%まで高められ、ニュートリノ反応が起きた際に発生する中性子を効率よく検出することで、超新星背景ニュートリノの世界初観測を目指しています。
 本プロジェクト研究では、神岡鉱山の地下にあるスーパーカミオカンデの見学と、テーブルトップの小型水槽を用いた実験により、ニュートリノ研究をより身近なものとして体験します。
 ◼︎手法と指導内容
 2月中旬頃に神岡にてスーパーカミオカンデの見学および小型検出器でのデータ取得を行います。前泊をして早朝に富山駅前に集合し、研究者の運転する車に乗って富山駅から神岡へ移動します。神岡到着後、スーパーカミオカンデの見学を行い、その後に小型の水槽と光電子増倍管からなるテーブルトップの実験装置を使って、ガドリニウム水溶液による中性子捕獲の実験を行います。実験終了後、研究者の運転する車に乗って富山駅前まで移動しそこで解散をします。
 期間中(3/4~8)は、神岡にて取得したデータの解析を行い、結果をまとめて発表資料を作成します。

2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、柏キャンパスでの議論のようす)
2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、柏キャンパスでの議論のようす)

高エネルギーガンマ線天文学

Supervisors:齋藤隆之、大石理子、Daniela Hadasch Supporters:糸川拓海(M1)、笛吹一樹(M2)

参加人数 : 5人
事前の準備 : 検討中


 ■目的と達成目標
 CTAは、宇宙から到来する高エネルギーガンマ線が大気中で生じさせるチェレンコフ光を検出します。チェレンコフ光は、高エネルギーの荷電粒子が通過す
れば、水の中でも生じます。本プロジェクトでは、CTA大口径望遠鏡に使われている光電子増倍管(Photomultiplier Tube, PMT)モジュールを用い、大気
ミューオンの測定をします。水槽の下に多数のPMTを設置し、ミューオンが水中を通過する際に放射するチェレンコフ光を捉えます。得られた信号から、
ミューオンの到来方向やエネルギーを推定します。また、水槽の位置や水の量の違いで検出光量がどのように変化するか調べます。大気ミューオンのフラッ
クスを測定すること、チェレンコフ放射の性質について定量的に理解すること、測定技術を学ぶことが目的です。
■手法と指導内容
 CTA大口径望遠鏡で使われているPMTモジュールと、その収納用ラックを利用します。通過するミューオンがつくるチェレンコフ光がPMTで検出できるよう、
ラックの上部に水槽を設置します。また、トリガー生成用の小型シンチレーションカウンターを用意します。ミューオンがシンチレーションカウンターを通過
した信号は、ディスクリミネーターに送られ、トリガー信号が生成されます。そのトリガー信号をPMTモジュールが受け取ると、信号の読み出しが行われま
す。必要な装置とプログラムは既存のものを使いますが、装置の較正(PMTの高圧の値、ディスクリミネーターの閾値、トリガー遅延時間)とデータの解析
を行なってもらいます。測定がうまくいかない場合は、原因を探って解決してもらいます。水の量を変えたり、シンチレーションカウンターの位置を変えた
りは自由にできます。得られた結果から、大気ミューオンや、チェレンコフ放射に関することの考察、議論を行なっていただきます。

2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、SiPMの回路を組み立てる実験に取り組む学生たち)
2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、SiPMの回路を組み立てる実験に取り組む学生たち)

観測的宇宙論

Supervisor:大内正己 Supporter:梅田滉也(D1)、中根美七海(M1)、渡辺くりあ(M2; 国立天文台/総研大)、 張也弛(学振特別研究員; 国立天文台)

参加人数 : 6人(受け入れ可能な上限)
事前の準備 : 1日目(2月中旬;2/13-14頃):ガイダンス、課題発表会、研究指導 (対面+zoomのハイブリッド)


  ◼︎目的と達成目標
 現在の宇宙を満たす星や銀河、ブラックホールなどの天体が、どのように形成されたのかについては、理解されていない物理プロセスが多く、宇宙進化さらには観測的宇宙論研究の最重要課題の一つとして残されています。2022年から科学観測を始めたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、これまでになく高い感度を赤外線域で達成し、銀河に基づく宇宙進化の観測研究に飛躍的な進歩をもたらしています。本プログラムでは、JWSTの最新の分光および撮像データを用いて初期の宇宙の銀河にある超巨大ブラックホールの起源を探る研究を行います。
 ◼︎手法と指導内容
 JWSTの分光観測により得られた最新のデータを用います。研究室のMac Book Airを学生に貸し出し、対面とオンライン(zoom)を用いた指導と議論を通じて、データ解析および理論モデルとの比較、考察、研究発表準備を行ってもらいます。具体的には、2月中旬頃に柏キャンパスに1日だけ学生に来てもらい、Mac Book Airを貸出し、解析ソフトウェアの使い方を教員とTAで対面指導をします。柏で対面指導を受ける学生は首都圏在住の参加者を想定していますが、それ以外の地域の参加者に対しても、Mac Book Airを郵送しておき、同日にzoomを用いて指導します。その後、スプリングスクール実施の前週までの約半月の間に3回程度zoomで指導を行います。スプリングスクール 実施期間は、通常通りの指導を対面で行います。
 参加する学生の経験や知識は問わないので心配の必要はありません。ただし、しっかりとした指導のもとで、参加者には十分な準備と研究活動が期待されます。スプリングスクール期間中に、研究に没頭してみたい人向けのプロジェクトです。

2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、柏キャンパスでデータ解析を行うメンバーたち)
2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、柏キャンパスでデータ解析を行うメンバーたち)

重力波天文学

神岡 / Supervisor:内山隆 Supporter:未定
柏/ Supervisor:田越秀行、森崎宗一郎、成川達也、内潟那美 Supporter:小林和弥(M1)

参加人数 : 5人または6人(去年までは5人)
事前の準備 : 2月中旬:オンライン(zoom)でレーザー干渉計とデータ解析に関する講義と事前学習


◼︎目的と達成目標
 Einsteinの一般相対性理論で予言された時空のさざ波、重力波は2015年の初検出以来、ブラックホールや中性子星の連星合体から放たれた重力波が数多く検出されるようになり、新発見が相次いで報告されています。従来の電磁波観測とは異なる情報をもたらす重力波は、宇宙を見るための新たな手段となっており、さらなる天文学の発展に貢献することが期待されています。
 現在の重力波検出の主流は、マイケルソン干渉計を基本とした大型レーザー干渉計です。本プロジェクト研究では、テーブルトップのミニレーザー干渉計を構築しデータ取得を行います。また公開されている重力波の観測データを用いたデータ解析の演習も行います。これらにより重力波研究への興味を更に深めてもらいます。
 また、神岡でのレーザー干渉計型重力波検出器KAGRAの見学会を予定しています。
◼︎手法と指導内容
 事前のオンラインでのレーザー干渉計についての講義に基づき、ミニレーザー干渉計を構築し干渉計からの観測データを取得します。また、連星合体重力波の探索のためのデータ解析の基礎を学び、プログラム開発を行います。そして、ミニレーザー干渉計によって取得したデータと、公開されているLIGO-Virgo-KAGRA検出器のデータを解析して、連星合体重力波の探索を行います。

2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、柏キャンパスでデータ解析に取り組むメンバーたち)
2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、柏キャンパスでデータ解析に取り組むメンバーたち)

超高エネルギー宇宙線

Supervisor:さこ隆志、川田和正 Supporter:加藤勢(研究員)、横江誼衡(D3)、川島輝能(D1)、水野敦之(M1)

参加人数 : 5人

事前の準備 : 2月中旬に1日 : オンライン(zoom)で実験説明、ROOTのインストール、使い方の説明


◼︎目的と達成目標
 「銀河系内のどの様な天体が超高エネルギー宇宙線をどのように加速しているのか?」 宇宙線の発見以来100年以上続くこの謎を解明するため、宇宙線および宇宙ガンマ線を中国・チベット(標高4300m)に数万平米のシンチレーション検出器のアレイを設置し観測を続けています。また、南米ボリビア・チャカルタヤ山(標高4740m)にも同型の装置の建設が進行中で、将来的に宇宙線の発生源の有力候補である銀河中心方向の観測も計画されています。本プロジェクト研究では、素粒子の一つであるミュー粒子を、チベットで稼働しているものと同型の粒子検出器を組み合わせて測定します。複数の複数検出器からの信号を論理回路モジュールで制御し、ミュー粒子を効率良く検出する装置を実際に組み上げ、粒子のライフタイム等の正確な測定を目指す。空から絶え間なく降り注ぐ目に見えない素粒子の性質をどのように調べるのか?宇宙線観測装置を通して体験します。
◼︎手法と指導内容
 宇宙線研究所の実験室で、シンチレーション検出器を複数組み合わせ、宇宙から降り注ぐミュー粒子等の素粒子の観測を行います。事前にオンライン(zoom)にて実験の概要を説明し、ソフトウェアのインストール・動かし方を学びます。開催期間初日に実験装置のセットアップを実際に組んでデータ収集の開始を目指します。その後、ROOTをベースとした解析ツールを用いて、データを解析し、ミューオンのライフタイム等の物理量を推定します。データ解析、考察、研究発表準はすべて対面形式を想定していますが、希望があればハイブリッドで行うことも可能です。必要であれば解析用ノートPCは貸し出す予定です。

2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、実験装置のセットアップを行うメンバーたち)
2023年のプロジェクト研究のメンバーたち (下段は、実験装置のセットアップを行うメンバーたち)