東京大学柏キャンパス一般公開2023

【2023年10月28日(土)】うちゅうカフェ「わたしの研究について!」

オープンキャンパス

【2023年10月28日(土)】うちゅうカフェ「わたしの研究について!」

 うちゅうカフェには毎回、宇宙・素粒子の研究に取り組む若手研究者が登場します。皆様の寄付で支えられている若手支援基金をもとに募集・採用され、研究を進めるICRRフェロー(研究員)が中心です。
 今回は、東京大学柏キャンパスを拠点に研究を進めるテレスコープアレイ実験グループの大島仁さんと、チベット実験、ALPACA実験グループの加藤勢さんの二人に登場してもらい、研究者を志した学生時代から現在の研究に至るまでと、普段の生活や趣味などについて自由に語ってもらいます。

参加方法及びYouTubeのご視聴について

宇宙線研究所6階の大セミナー室で開催されますが、1階ピロティでも大型モニターで視聴が可能です。また、YouTubeの生中継及びアーカイブ配信も行います。こちらのURLは近く公開致しますので、しばらくお待ちください。

米国ユタ州のテレスコープアレイ実験のサイトより
米国ユタ州のテレスコープアレイ実験のサイトより
【2023年10月28日(土)】うちゅうカフェ「わたしの研究について!」

特任研究員(ICRRフェロー) 大島仁さん

 スピーカーの1人目は、大島仁(ICRRフェロー)さんです。
 千葉県出身の大島さんは、2021年までの東邦大学在学中に、茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)のニュートリノビームを使用した NINJA 実験に参加して研究を行ってきました。博士課程の間、原子核乾板と呼ばれる素粒子実験用の写真フィルムを用いてニュートリノ・鉄反応の研究に取り組み、ニュートリノ反応断面積(ニュートリノの反応のしやすさ)やニュートリノ反応によって放出されたミューオン・陽子・荷電パイ中間子の放出角や運動量などの運動学的情報を測定しました。
 2021年に博士号を取得した後、東邦大学、東京大学宇宙線研究所での研究員を経て、今年4月にICRRフェローに就任しました。現在は米国ユタ州を観測拠点とした北半球最大の宇宙線観測実験であるテレスコープアレイ(TA)実験とその低エネルギー拡張実験であるTALE実験に携わり、1015−1020 eVの超高エネルギー宇宙線観測の研究に取り組んでいます。プロフィール写真は、今年の6月にTA実験観測サイトにて検出器のメンテナンスを行なった際に撮影したものです。TA実験では、このような広大な砂漠地帯に検出器を展開し、宇宙線観測を行っています。
 大島さんは「宇宙線が発見されてからすでに100年以上経過していますが、未だその起源や加速機構は解明されていません。今日までに観測された宇宙線の最大エネルギーは1020 eVを超えており、これは世界最大の粒子加速器で到達できるエネルギーの1000万倍以上にも及びます。このような、人類がつくりだせないほど大きなエネルギーをもった粒子が宇宙には存在していて、それが宇宙のどこで・どのようにして生み出されているかを解明したい。」と語ります。
 趣味はテューバ演奏、クラシック音楽鑑賞、サイクリングということです。

宇宙・素粒子スプリングスクールでは大学3年生を指導しました
宇宙・素粒子スプリングスクールでは大学3年生を指導しました
【2023年10月28日(土)】うちゅうカフェ「わたしの研究について!」

特任研究員(ICRRフェロー) 加藤 勢さん

 スピーカーの2人目は加藤勢(ICRRフェロー)さんです。
 大阪府出身の加藤さんは2018年に京都大学工学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科に入学、修士・博士課程を宇宙線研究所のチベット・ALPACAグループで過ごしました。大学院では、南半球ボリビアでの観測を予定しているALPACA実験のテスト実験、ALPAQUITA実験に関する性能評価をおこなったほか、北半球チベット自治区で稼働しているチベット実験のデータを解析し、天の川銀河の高エネルギー宇宙線の加速天体ペバトロンを探してきました。2023年3月に博士課程を修了後、4月からICRRフェローに就任し、引き続きチベット実験・ALPACA実験に関する研究をおこなっています。
 チベット実験・ALPACA実験は地表に数百台の検出器を規則正しく並べ、地球にやってきた高エネルギー宇宙線が地球大気と衝突して生みだす大量の素粒子の雨:空気シャワーを観測します。天の川銀河の中で生まれていると考えられる、1015 eVにも達する高エネルギー宇宙線の故郷の天体:ペバトロンはどこにあるのか−空気シャワー観測を通じてその謎に迫ることができます。「チベット実験のデータ解析から、ペバトロン候補天体をいくつか見つけることができました。しかし、まだ有力な候補天体の数は少なすぎます。ボリビアに位置するALPACA実験は、数多くの高エネルギー天体で溢れる天の川の中心領域を望むため、近い将来、多くのペバトロン発見につながるでしょう。一刻も早く実験を開始させたいと考えています。」と加藤さんは語ります。
 好きなことは公園筋トレ、空手、古代聖歌を聴くこと・歌うことなどだそうです。