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【記者会見及び見学会】「大型低温重力波望遠鏡・KAGRAのトンネル完成」

発表者

東京大学総長       濱田 純一
東京大学宇宙線研究所長  梶田 隆章
東京大学宇宙線研究所教授 大橋 正健
東京大学宇宙線研究所助教 内山 隆 
全体司会 東京大学宇宙線研究所・神岡分室 准教授 三代木伸二

発表のポイント

* 大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)は、重力波の直接観測と重力波天文学の創成を目指しています。
* KAGRAは1辺3kmのL字型のレーザー干渉計(注1)で、重力波に対して超高感度を達成するために、地面振動の小さい地下に設置され、また極低温の鏡を使用する世界的にユニークな装置です。
* KAGRAを設置する地下空洞の工事は2012年5月に開始され、本年3月に完成しました。現在地下空洞を実験室として整備する工事が進んでいます。
* 今後は、地下実験室の整備に引き続き、装置を設置・調整し、2015年末の初期運転、引き続き高感度化をめざし極低温鏡などを導入して、2017年度には極低温鏡を用いた観測運転に入る予定です。

概要

東京大学宇宙線研究所がホスト研究機関となり、高エネルギー加速器研究機構と自然科学研究機構・国立天文台を共同ホスト機関として密接な協力体制のもと、アインシュタインの一般相対性理論により存在が予測されている重力波の世界で初めての直接的検出を目指した、大型低温重力波望遠鏡・KAGRA(かぐら)(以下KAGRA)の建設を、2010年より岐阜県飛騨市神岡町池ノ山の地下において進めてまいりました。2014年3月末をもって、そのKAGRAを格納する地下トンネルの掘削が完了し、引き続き地下空洞を実験室として整備する工事が進んでいます。本日はKAGRAが設置されることになる地下空洞の工事の様子を報道関係者に公開いたしました。

重力波望遠鏡の設置場所として地下環境が選定されたのは、世界でKAGRAが初めてです。地下が好環境である理由は、極めて微弱な重力波の信号をとらえるKAGRAにとって、信号を掻き消す雑音となりうる地面の振動が、地表に比べて100分の1程度と小さいためです。KAGRA本体を格納するトンネル部は、地表より200メートル以深の地下に掘削され、一辺3kmを2本持つL字構造をしております。今後は、現在進めている実験設備の整備、装置の構築を経て、2015年末に最初の試験運転を行い、2017年度には、極低温鏡を用いて重力波観測運転を開始する予定です。

発表内容

背景
 重力波はアインシュタインが彼の一般相対性理論によって1916年に予言した時空の波です。重い物体が激しく動く際に強い重力波が放出されるはずで、超新星爆発(注2)や、中性子星連星の合体(注3)などの天体現象に伴って強い重力波が放出されると考えられています。このような重力波が到来すると、我々のまわりの空間は伸び縮みするはずです。

 重力波の観測は、もし成功すれば、一般相対性理論の予言した物質の動きと時空という我々が住む世界の入れ物の間の動的な関係が確かめられ、また、ブラックホール形成のようすなど、光では観測できない宇宙の姿を観測する「重力波天文学」という新たな分野の創成につながると期待されています。

 しかし、重力波の観測は簡単ではありません。それは重力波による空間の伸び縮みの予想が3kmに対して10のマイナス17乗cm(10-17cm)程度と極めて小さいためです。このため、重力波の予言から100年程度たった今に至るまで重力波の直接観測には誰も成功していません(注4)。KAGRAはこのような重力波を直接観測することを目指しています。

KAGRAプロジェクトとトンネル掘削
 KAGRAは重力波の直接観測と重力波天文学の創成を目指して進められている研究プロジェクトです。東京大学宇宙線研究所をホスト研究機関とし、高エネルギー加速器研究機構と自然科学研究機構・国立天文台を共同ホスト機関として密接な協力体制のもと、国内外200人以上の研究者の協力のもとでプロジェクトを進めています。

 宇宙線研究所においては、1993年の研究所の将来計画検討委員会によって、スーパーカミオカンデの次に実現すべき重要な研究課題として推薦されて以来、その実現に努力してきました。2010年に文部科学省の「最先端研究基盤事業」によって一部予算化され、プロジェクトが開始され、その後も文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業などにより支援をいただきながら推進してきました。
重力波の観測には極めて微弱な信号をとらえる必要があり、観測に適した場所を選ぶことが重要です。そこでKAGRAでは200メートル以深の地下深くに装置を設置することにしました。この程度深くなると、信号を掻き消す雑音となりうる地面の振動が、地表に比べて100分の1程度と小さいためです(図1)。2012年5月からKAGRAを設置するための地下空洞(トンネル)の掘削は鹿島建設株式会社によって行われ、2012年5月から掘削が開始され、本年3月に完成しました。KAGRAのトンネルは一辺3kmの2本の腕を持つL字構造をしており(図2)、両腕部合計6kmには地下の湧き水を流すため0.3%の傾斜がつけられています。この本体用トンネルのみならず、そこに到達するための誘導トンネルも掘削する必要がありました。そのため掘削の総延長は約7.7kmになりました。


(図1) 柏キャンパスの地面振動(赤)と池ノ山の山頂から1,000メートル以深にあるCLIO実験室の地面振動(緑)との比較。200メートル以深で1,000メートルとほぼ同等の振動レベルが得られます。KAGRAで観測が予想される重力波の周波数は10から1000Hzあたりです。


(図2) KAGRA地下空洞の全体像。それぞれ長さ3キロメートルの2本の腕を持つL字型構造をしたレーザー干渉計。

 現在は地下空洞を実験室として整備する工事が進行中で、現在床のコンクリート工事や実験室壁の防塵塗装工事が行われており、コンクリート床工事は現在(図2)でL字のトンネルの1本と中央実験室まで終えています。

今後の予定

今後は実験室工事と真空パイプなどの設置を今年度末までに終える予定です。また今年秋にはレーザー光源の設置など実験装置の搬入やテストも開始します。
来年度は、様々なKAGRAの機器の搬入・設置とそれに引き続いて試験や調整を進め、来年末に割合単純な干渉計の構成で初期運転を行う予定です。
それと共にKAGRAのもう一つの特徴である極低温鏡関連の準備を進め、また初期運転で得られたノウハウなども生かしながら、引き続き高感度化をめざし、2017年度には極低温鏡を用いた観測運転に入る予定です。そして、一刻も早く世界初の重力波の直接観測を成し遂げ、重力波天文学の創出を目指したいと考えています(注5)。

注釈

(注1)
レーザー干渉計の原理は、振幅と位相が揃った(コヒーレントな)光であるレーザーを用いた干渉計です。レーザー光源の光をビームスプリッターで2つに分割し、それぞれの光を鏡で反射させてビームスプリッターに戻します。すると2つの光の微小な光路差により干渉縞が生じるので、それを測定します。重力波観測に用いられる干渉計は、高感度を達成するために、レーザー光を1,000回程度往復させるなど、様々な工夫が施されています。

(注2) 
太陽より約8倍以上重い星は、核融合で星が燃えつきた後、星自らの重みに耐えられなくなって、あるとき一気に星の中心部に向かって物質が落ち込む(爆縮)と考えられています。中心部に落ち込んだ物質は、非常に密度が高くコンパクトな原始中性子星となります。このため、爆縮は一気に止まり、その反動で衝撃波が形成され、これが星の外側を吹き飛ばします。このような爆発現象を超新星爆発といい、1987年の超新星SN1987Aからのニュートリノをカミオカンデがとらえたことで、この機構が確認されました。このような激しい現象では、重力波の放出が予想されています。

(注3)
注2で述べた超新星爆発の後に残るのが中性子星です。この宇宙には2個の恒星がお互いの周りをまわる連星がたくさんあるように、中性子星が連星になった中性子星連星もあることが知られています。中性子星は半径10km程度で、重さは太陽の1.4倍程度であるため、お互いの距離が近ければ、お互いの周りを高速度で回ります。そのため強い重力波を放出すると考えられています。また重力波を放出することで、だんだん回転エネルギーが失われてお互いの軌道が近くなり、最終的には2つの中性子星が合体してブラックホールが形成されると考えられています。

(注4)
重力波の存在の間接的な証拠は、ラッセル・ハルス博士とジョゼフ・テイラー博士により初めて得られました。1974年に両博士により発見された連星中性子星の公転周期の観測減少値が、連星系からの重力波の放出を仮定した場合の公転周期の計算減少値と高い精度で一致したことにより、中性子星の加速運動による重力波放射が裏付けられました。両博士はこの業績によって1993年度のノーベル物理学賞を受賞しています。

(注5)
 現在重力波の直接観測を目指したプロジェクトが日米欧で進行しています。アメリカのプロジェクトはAdvanced LIGO, ヨーロッパのプロジェクトはAdvanced Virgoと呼ばれ、今まで運転してきたレーザー干渉計を抜本的に改造する計画です。これらはすべて一辺3から4kmの長さのレーザー干渉計で、いずれも2017年頃に高感度での観測の開始を予定しています。


日時

平成26年7月4日(金)
見学会 :13時20分〜14時10分(13時00分 受付開始)
記者会見:15時00分~15時30分(14時30分 受付開始)

場所

見学場所:東京大学宇宙線研究所・KAGRAトンネル
記者会見:岐阜県飛騨市神岡町東茂住238 北部会館二階大広間


問い合せ

・KAGRAのことについて
 東京大学宇宙線研究所 准教授
 三代木 伸二
・見学会・記者会見のことについて
 東京大学宇宙線研究所
 担当:林田 美里
 TEL:04-7136-5148
 E-mail:misato@icrr.u-tokyo.ac.jp


1.KAGRAトンネル見学会

13時00分: 受付開始
場所:岐阜県飛騨市神岡町東茂住238
北部会館(東京大学宇宙線研究所重力波推進室神岡分室)
13時20分: KAGRAトンネルへの移動
皆様をマイクロバスにてKAGRA地下トンネルへご案内いたします。
ヘルメットを用意していますので、ご着用ください。
東京大学宇宙線研究所・重力波推進室・三代木伸二がご案内いたします。
13時40分: KAGRAトンネルに到着・見学開始
主に、中央実験室1階と2階をご案内いたします。
14時10分: 見学終了・KAGRAトンネルを出発
14時30分: 重力波推進室に到着
記者会見の会場へご案内いたします。
記者会見資料

1. 見学会資料
2. 記者会見資料
3. 画像データ(クレジット表記はzipファイル中「クレジット.txt」をご参照ください。)
トンネル内映像(111MB)
トンネル内画像(103MB)
4. KAGRAリーフレット
5. ICRR News No.89 p.4 「KAGRA トンネル掘削工事・・・内山 隆」
6. 重力波望遠鏡KAGRA紹介ビデオー7月4日

参考リンク

1. 2014年3月31日プレスリリース
「世界初の重力波直接観測を目指す大型低温重力波望遠鏡 KAGRAのトンネル掘削が完了」
2. 「重力波望遠鏡KAGRAのYアームが貫通しました」
3. KAGRAホームページ