宇宙・素粒子スプリングスクール2022|プロジェクト研究の紹介

スプリングスクール

最高エネルギー宇宙線

Supervisor:﨏隆志 Supporter:藤末絋三(D1)、高橋薫(M1)

参加人数 : 6人
研究所での実習  : 2月9日(3人)、2月10日(3人)
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 10の20乗電子ボルトのエネルギーを持つ最高エネルギー宇宙線が宇宙からやってきています。人工加速器で人類が到達できたビームエネルギーよりも一千万倍以上も高いものです。このような膨大なエネルギーを持った粒子がどこで、どのように生まれ、どのように地球にやってきたか未だ解明されていません。この謎に包まれた粒子の起源を探るために、米国ユタ州に巨大な宇宙線観測装置、テレスコープアレイ(TA)を建設しました。日・米・韓・露・ベルギー・チェコの6か国の研究者チームが、その謎に挑戦しています。
 プロジェクト研究では、TAと同じ原理の検出器を使って宇宙線空気シャワーをつかまえる実習を行います。個々の検出器の基礎特性を理解したのち、複数の検出器を組み合わせて地上に到達する宇宙線空気シャワーの信号を測定します。測定したデータを解析し、宇宙線の到来方向分布を測定しましょう。

2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
柏キャンパスに設置された実験装置(発表スライドから)
柏キャンパスに設置された実験装置(発表スライドから)

ニュートリノ物理

Supervisor:竹田敦 Supporter : 金島遼太 (M1) 、清水光太郎 (M1)

参加人数 : 3人 →  5人
研究所での実習 : 2月10日
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 1998年のニュートリノ振動と質量の発見以来、ニュートリノ研究は飛躍的に発展しました。太陽、大気、加速器、原子炉などのニュートリノを用いたニュートリノ振動の精密測定によって、3種類のニュートリノ間のフレーバー混合モデルがほぼ解明し、さらに宇宙創世の謎を解くヒントとなるレプトンCP非保存パラメータの測定に手が届き始めています。スーパーカミオカンデ(SK)実験やT2K実験はこの研究で世界をリードしています。
 また、SK検出器中の純水にガドリニウム(Gd)を溶解し、反ニュートリノ事象の識別が可能なSK-Gdプロジェクトが進行しています。SK-Gdでは、宇宙の始まりから現在まで、過去に起こった超新星爆発によって生じ宇宙に漂っているニュートリノを初めて検出しようという試みがなされます。一方では、レプトンCPや陽子崩壊などに飛躍的な進展が期待できるハイパーカミオカンデプロジェクトも進められています。また、10^15eV以上のエネルギー領域では宇宙の高エネルギー天体起源と思われるニュートリノも発見されました。今後もニュートリノ研究のさらなる進展が期待できるでしょう。
 本プロジェクト研究では、一般的なニュートリノ実験で用いられる光電子増倍管と宇宙線ミューオンを用いた実験を予定しています。光電子増倍管から得られた電気信号のデータ取得、事象選択などの実験に必要な基本的な手法を学び、同時にシミュレーション研究やデータ解析などを行い、研究に必要な理論・検出器・解析の全過程を、自主的に学べる機会となることを予定しています。

2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
神岡の地下に設置された実験装置とその仕組み(発表スライドから)
神岡の地下に設置された実験装置とその仕組み(発表スライドから)
スーパーカミオカンデのある地下の実験室で、光電子増倍管を使った実験をサポートする竹田先生とTAの皆さん
スーパーカミオカンデのある地下の実験室で、光電子増倍管を使った実験をサポートする竹田先生とTAの皆さん

高エネルギーガンマ線天文学

Supervisor:齋藤隆之、Giovanni Ceribella、Daniela Hadasch、Moritz Hütten、Marcel Strzys、武石隆治、Ievgen Vovk Supporter : 大谷恵生、バクスター・ジョシュア・稜

参加人数 : 4人
研究所での実習 : 2月24日(2人)、2月25日(2人)
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 高エネルギーガンマ線による宇宙の研究は、フェルミガンマ線衛星、HESS、MAGIC、VERITASなどの地上チェレンコフ望遠鏡により、過去15年の間に大きく発展してきました。多数の高エネルギー天体からGeV・TeVガンマ線が発見され、宇宙で起こる様々な高エネルギー現象が明らかになってきました。超巨大ブラックホール、超新星残骸、高エネルギー宇宙線加速、宇宙論、暗黒物質探索において重要な成果をもたらし、今や、高エネルギーガンマ線天文学は、宇宙物理学における極めて重要な分野を形成しています。本プロジェクト研究では、MAGICガンマ線望遠鏡と、フェルミガンマ線衛星で観測されたかに星雲からのTeVガンマ線データを解析し、かに星雲のエネルギー源を考察研究し、その正体をつきとめます。

2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
観測結果の解析から導き出した結論を示すダイアグラム(発表スライドから)
観測結果の解析から導き出した結論を示すダイアグラム(発表スライドから)

超高エネルギー宇宙線

Supervisor:川田和正 Supporter:佐古崇志、加藤勢(D2)、横江誼衡(D1)、川島輝能(M1)

参加人数 : 4人
研究所での実習 : 2月14日(2人)、2月17日(2人)
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  銀河系内のどの天体が超高エネルギー宇宙線(10の12乗〜10の17乗電子ボルト)を加速しているのか?」 宇宙線発見以来続くこの謎を解明するため、宇宙線および宇宙ガンマ線を中国・チベット(標高4300m)に数万平米の宇宙線観測装置を建造し観測を続けています。
 近年、我々のグループは天の川銀河方向から史上最高エネルギーのガンマ線放射の観測に成功し、60年来の謎であった宇宙線の起源「ペバトロン」の決定的証拠をつかんだ。そして現在、南米ボリビア・チャカルタヤ山(標高4740m)にも同型の装置を建設し、「ペバトロン」の有力候補とされる巨大ブラックホールのある銀河中心方向の観測も計画しています。
 プロジェクト研究では、素粒子の一つであるミューオンを、チベットでの実際の観測で使用している粒子検出器を組み合わせて測定します。空から絶え間なく降り注ぐ目に見えない素粒子の性質をどのように調べるのでしょうか?宇宙線観測装置を通して体験します。

2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
柏キャンパスに用意された観測装置(発表スライドから)
柏キャンパスに用意された観測装置(発表スライドから)

観測的宇宙論

Supervisor:大内正己 Supporter:磯部優樹(D1)、松本明訓(M1)、 梅田滉也(M1)、西垣萌香(総研大M1)、青山尚平(特任研究員)、 中島王彦(国立天文台特任助教)

参加人数 : 6人
研究所での実習 : 2月15日(2人)、2月16日(2人)、2月17日(2人)
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 現在の宇宙を満たす星や銀河が、どのように形成されたのかについては、理解されていない物理プロセスが多く、宇宙進化さらには観測的宇宙論研究の最重要課題の一つとして残されています。本プログラムでは、すばる望遠鏡による最新の可視光3次元分光観測データを解析し、形成後まもない銀河と考えられる極金属欠乏銀河に隠された、星や星間ガス、ブラックホール、暗黒物質に関わる物理現象を調べます。宇宙観測のデータによって、ビッグバン元素合成により作られた元素の組成比との違いやガスの温度・密度、電離状態、力学構造など様々な物理状態を測定し、理論モデルと比較することで、未知の物理プロセスの発見を目指します。参加する学生の経験や知識は問わないので心配しなくて大丈夫です。
 ただし、しっかりとした研究指導のもとで、参加者には十分な準備と研究活動が期待されます。スプリングスクール期間中に、研究に没頭してみたい人向けのプログラムです。

2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
銀河のガス質量と金属量の関係から導き出した結論(発表スライドから)
銀河のガス質量と金属量の関係から導き出した結論(発表スライドから)

重力波天文学

神岡での実習 / Supervisor:内山隆、押野翔一(特任研究員)
データ解析(オンライン) / Supervisor:田越秀行,成川達也(特任研究員),内潟那美(同),Supporter:加藤鷹志(D1),Eunsub Lee (D1)

参加人数 : 6人
研究所での実習(岐阜県飛騨市神岡町で実施) : 2月15日 または 2月16日 / それぞれ1日のみ,3名ずつ2回に分けて実施
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 重力波が初観測されてから、もう6年が経ちました。最初に検出された重力波は、13億光年離れた太陽質量の30倍程度の連星ブラックホールの合体からやってきたものでしたが、その後も連星中性子星やブラックホール・中性子星連星の合体がとらえられるなど、急速にこの分野は発展しています。これからも、次々と新しい重力波天体が発見されるはずです。こうしたなかで、日本の重力波グループは、KAGRA検出器により重力波天文学へ貢献すべく日々努力を続けています。
 今年度の重力波プロジェクト研究は、神岡鉱山のKAGRAサイトで行う見学・実習と、オンラインで行うデータ解析演習からなります。
 KAGRAサイトでは、まず鉱山内のKAGRA施設の見学を行い、実物のレーザー干渉計を体感します。その後、坑外の研究棟にてテーブルトップのマイケルソン干渉計を用いた体験学習を行います。オンラインのデータ解析実習では、測定されたデータの解析や、公開されている重力波検出器のデータを用いた解析の演習などを行います。KAGRAの現場を見学体験できる絶好の機会です。ふるってご応募下さい。
 なお,KAGRAサイトの見学実習は,コロナウイルス感染防止の対策を最大限取りながら行います。また、感染状況によっては、東京大学の指針に従いKAGRAサイトでの見学実習は中止となる場合があります。

2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
2022年のプロジェクト研究のメンバーたち
離心率を初めて確認したGW190814の解析結果(発表スライドから)
離心率を初めて確認したGW190814の解析結果(発表スライドから)
3月末に重力波観測研究施設内で行われた現地見学会で、レーザー干渉計を組み立てる学生たち
3月末に重力波観測研究施設内で行われた現地見学会で、レーザー干渉計を組み立てる学生たち