研究所紹介
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各研究グループ
理論 (宇宙線基礎物理研究部門) [研究所HP]
研究目的と装置
理論グループは、様々な角度から素粒子と宇宙とに関する理論的研究を行っています。

素粒子の研究では素粒子間に働く力が問題となります。この力には、電磁気力、弱い力、強い力、重力、の4つのあることが分かっていましたが、このうち電磁気力と弱い力とは同じ力だと判明し統一されました。これは「統一理論」または「標準模型」と呼ばれ、実験的に高い精度で検証されています。しかし、この理論は何らかの修正が必要であると考えられており、いくつかの実験結果もそれを示唆しています。例えば、標準模型ではニュートリノの質量はゼロとされていますが、ニュートリノ振動の発見からニュートリノには質量のあることが判明しています。さらに、標準模型を超え、強い力も加えた3つの力を統一する「大統一理論」も提唱されています。

理論グループでは、標準模型を超える理論の構築、およびその検証を実験でどのように行えばよいかということを研究しています。中でも注目されているのが、超対称性と呼ばれる高い対称性を持つ模型で、この研究は現在、理論グループの重要な研究テーマとなっています。
 
図1: ニュートリノ振動から期待される、 超対称模型におけるミューオンの崩壊

素粒子間に働く4つの力について研究するときには、初期宇宙や天体について考えることが欠かせません。我々の宇宙は今から約150億年前にビックバンの大爆発で誕生したと考えられています。その誕生直後の宇宙は地球上ではとうてい再現できない高温高密度状態で、様々な素粒子が光速で飛び回っており、素粒子間に働く力がまだ4つに分かれていない世界、即ち、標準模型を越えた世界でした。理論グループでは、熱環境での基礎理論を研究し、宇宙初期と天体の極限状況を論拠することによって、標準模型を超える法則を構築しようとしています。