研究所紹介
About ICRR
各研究グループ
重力波 (宇宙線基礎物理研究部門) [研究所HP]
研究目的と装置
アインシュタインの一般相対性理論によれば、質量を持つ物体の周囲の空間は歪んでおり、物体が運動するとその歪みが光速の波となって伝わります。これが重力波です。

重力波の検出は大きな意味を持っています。例えば、超新星爆発やブラックホール形成などの強い重力場での一般相対性理論の検証は、唯一重力波によってのみ可能です。また、可視光、電磁波、ニュートリノと広がってきた天体観測の手段に新たに重力波が加われば、今まで観測不可能であった星や宇宙の情報が得られる可能性が出てきます。しかし、重力波は検出がきわめて難しく、間接的にしか見つかっていません。私たちの最終研究目標は、重力波を直接検出することです。

重力波は、質量を持つ二つの物体間の距離が重力波によって変化することを利用して検出します。その変化は、地球太陽間の距離が水素原子一個分変わる位小さいものです。測定にはレーザー光による光干渉計を用います。光を直交する2本の光路に分け、鏡で折り返してまた重ねることによって、小さな変化を見つけます。感度を上げる根本条件は干渉計の光路を長くすることですが、雑音を極力取り除くことも大切です。
研究の実況
図1: 観測感度改良の経緯(TAMA)
図2: 100m低音レーザー干渉計

私たちは国立天文台などと共同で完成した光路300mの干渉計(TAMA)を用いて実験しています。2002年に感度を向上し、数ヵ月毎に1-2週間単位の観測を行い、9月には世界最高の感度で千時間を越える観測に成功しました(図1参照) 。

しかし、検出できる重力波は天地がひっくり返る程の天変地異が発するもので、観測範囲が広くないと見つかりません。TAMAに見えるのは300万光年(我々の銀河の少し先)までです。一方海外では、7千万光年(銀河団)まで観測できる、3km、4kmの大型干渉計が完成しつつあります。

私たちは、TAMAで獲得した世界最高の雑音除去技術を基盤に、これに改良を加え、光路も充分な3kmの測定器、LCGTを計画しています。LCGTなら7億光年(超銀河団)まで見ることが出来ます。
LCGTには3つの大きな特徴があります。
(1) 出力の極めて強いレーザー光を用いる。
(2) 熱雑音を下げるために、極低温鏡を用いる。
(3) 雑音排除のために、地下1,000mに設置する

私たちは、LCGT実現に向けての予備研究として、神岡地下での20mタイプの実験、柏での小型低音レーザーの実験をしてきましたが、さらにテストを進めるため、現在神岡地下に100m低音レーザー干渉計を設置しているところです(図2参照)。