研究所紹介
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チベット (高エネルギー宇宙線研究部門) [研究所HP] 研究目的と装置
中国のチベット自治区の羊八井高原(ヤンパーチン、標高4,300m)に中国と共同で空気シャワー観測装置を建設し、高エネルギー宇宙線の観測を行っています。 研究の目的は 主装置として、面積0.5?のプラスチックシンチレータを15m(一部は7.5m)間隔でほぼ碁盤目状に並べた空気シャワー観測装置を用いています。荷電粒子がプラスチックシンチレータを通過するときに発する光を光電子増倍管で検出し、その時間と発光量とをデータとして収集します。約3TeVの空気シャワー現象も検出できますが、このように低いエネルギーの空気シャワーを検出できるのは、世界で本装置だけです(図1参照)。
研究の実況
空気シャワー観測装置で、カニ星雲からのTeV領域のガンマ線を検出しました(図3参照)。空気シャワー装置による高エネルギーガンマ線の検出は世界で初めてです。また、1997年春から活発にフレアを起こした活動銀河核Markarian501からもTeV以上のガンマ線を検出しました。空気シャワー装置は、天候等の気象条件に左右されず大きな視野で天空を常時監視できるため、高エネルギーガンマ線を放射する活動天体を観測するのに大変適しています。 【Knee領域(3×1014eV〜2×1016eV)の一次宇宙線のエネルギースペクトルの観測】 空気シャワー装置により、Knee領域の一次宇宙線のエネルギースペクトルを大変良い精度で観測しました(図4参照)。 Knee領域は、超新星爆発の衝撃波による粒子加速の限界や、銀河からの宇宙線の漏れだしの問題を解く重要な鍵を握っている領域です。今までのデ−タと比べると、2×1015eV近辺からスペクトルの傾斜が緩やかになっているのが分かります。一方、空気シャワー装置とその中心に置かれたエマルションチェンバーとの連動実験からは、宇宙線組成に関するデ−タが得られていますが、このデ−タにスペクトルのデ−タを加えると、Knee領域の宇宙線の加速や起源についてもっと解明できるようになります。
チベットの空気シャワー観測装置は精巧に作られているため、銀河宇宙線による太陽と月の影を鮮明に捉えることができます。(図5)はこの装置で観測された「太陽の影」の年変化です。1991〜92年は太陽の活動期で、静穏期(1996〜97年)と比べるとその影が太陽方向から大きくずれているのが分かります。 現在このような観測ができるのは、世界で本装置のみです。この実験により、今まで観測方法がなかった太陽活動と太陽惑星間の磁場構造についても貴重なデ−タが得られるものと期待されています。 |