東京大学宇宙線研究所は日本時間の2月12日深夜から、宇宙線研究所の研究者と、主にアメリカから参加する研究者が、オンライン上で講演・交流する特別シンポジウム「マルチメッセンジャーで宇宙をさぐる」を、一般の参加者も含めてオンラインで開催しました。その様子はZoom会議及びYouTubeライブでも同時中継され、およそ2週間のアーカイブ配信も含めて約300人の皆様に視聴いただきました。大変ありがとうございました。
本イベントは、東京大学ニューヨークオフィス(UTokyoNY)が2021年7月にリニューアルオープンしたことを記念し、宇宙線研究所が主催し、日本とアメリカおよび世界の参加者を結んで開催する初めてのシンポジウムで、講演や交流は全て英語で行われました。開催にあたっては、東京大学社会連携本部及びニューヨークオフィスのご協力をいただいています。当初はUTokyoNYが位置するニューヨーク・マンハッタンでの対面形式による現地開催とオンラインを組み合わせた開催を計画していましたが、COVID-19のオミクロン株が世界的にまん延する中、感染拡大を避けるため全面オンラインのイベントとなりました。
宇宙線研究所は、さまざまな宇宙粒子線( 電磁波、宇宙線、ニュートリノ、暗黒物質、重力波) を観測し、宇宙と素粒子物理の解明に挑んでいます。これらの宇宙粒子線のことを、情報の運び手にたとえて「マルチメッセンジャー」と呼びますが、シンポジウムでは瀧田正人教授がモデレータを務め、宇宙線研究所の研究者と海外から参加する研究者たちが、それぞれの立場からマルチメッセンジャーについて議論し、宇宙の謎に迫りました。
シンポジウムの冒頭、イベント責任者の佐川宏行教授が「イベントの申し込みが300人を超え、多くの皆さんに興味を持っていただけたことは大変嬉しいこと。ぜひ楽しんで欲しい」と呼びかけたのに続き、UTokyoNYの増山正晴理事長およびサイモンズ財団のDavid Spergel代表が来賓としてそれぞれ挨拶しました。
続いて梶田隆章所長が「マルチメッセンジャー天文学と宇宙線研究所」と題して基調講演を行いました。梶田所長は、2017年に観測された中性子連星の合体の様子が、重力波だけでなく世界中の光学望遠鏡などでマルチメッセンジャー観測され、元素合成の様子などさまざまな情報がもたらされたことに触れたうえで、宇宙線研が取り組む五種類のプロジェクトを振り返り、「興味深いマルチメッセンジャー天文学がすでに始まっており、宇宙線研究所はまさにそこで世界に大きく貢献していきたい」と結論づけました。
さらに、チェレンコフ宇宙望遠鏡アレイ(CTA)、テレスコープアレイ実験(TA)、チベット・アルパカ実験、LIGOやKAGRAなどの重力波観測プロジェクトの4分野が取り上げられ、宇宙線研側の研究者と、アメリカを拠点に活動する研究者が、最新の成果について交互に講演を行い、視聴者からの質疑応答なども受けました。
それぞれの分野の講演者は以下の通りです。
研究プロジェクト | 講演者 |
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チェレンコフ宇宙望遠鏡アレイ(CTA) | 手嶋政廣教授(ICRR) Reshmi Mukherjee 教授(コロンビア大学バーナード・カレッジ) |
テレスコープアレイ実験(TA) | 佐川宏行教授(ICRR) Glennys Farrar 教授(ニューヨーク大学) |
チベット・アルパカ実験 | 瀧田正人教授(ICRR) |
LIGOやKAGRAなど重力波観測プロジェクト | Peter K. Fritschel 主任研究員(MIT Kavli Institute for Astrophysics and Space Research) Peter Shawhan 教授メリーランド大学 田越秀行教授(ICRR) |
・イベントの詳細は、こちらのホームページをご覧ください。
・YouTubeのアーカイブ配信はこれまで限定配信でしたが、3月から一般公開とすることになりました。視聴はこちらのページをご覧ください。