第67回仁科記念賞の授賞式を開催 瀧田正人教授に表彰状と記念の賞牌

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 第67回仁科記念賞の授賞式が12月6日、オンラインで開催され、瀧田正人教授ら受賞者4人に対し、仁科記念財団の小林誠理事長から表彰状と記念の賞牌が授与されました。

 小林理事長は、最初の挨拶の中で、日本における原子物理学の父と呼ばれる仁科芳雄先生と、理研に作られた仁科研究室について説明した上で、「仁科記念財団は仁科先生の功績を記念して1955年に設立されました。仁科記念賞と仁科記念講演会の二つは財団設立以来続く事業です。仁科記念賞は今回で67回を数え、これまでの受賞者は197人となりました。この分野における学術賞として高い評価を得ていると考えています。受賞者の皆さんにお喜びを申し上げるとともに、今後一層のご活躍をお祈りしております」と述べました。

授賞式で挨拶する小林誠理事長

 この後、安藤恒也理事から4人の受賞理由について説明があり、小林理事長から表彰状と記念の賞牌がオンライン上で授与されました。

瀧田教授への表彰状

瀧田教授「メンバー全員が受賞したものと受け止めています」

 表彰状などの授与を受けた瀧田教授は、「チベットASγ実験は日本と中国の約100人の研究者からなるグループですが、今回の仁科記念賞はこれらのメンバー全員が受賞したものと受け止めています」と前置きした上で、中国チベット(標高 4,300m)に設置された宇宙線の空気シャワー観測装置を改造し、高エネルギー宇宙ガンマ線を宇宙線から区別して観測することに成功した経緯を紹介。さらに、「観測データから宇宙線の分を大きく落とすと、数百TeVのガンマ線が、天の川に沿った何もないところから来ていることがわかりました。PeV以下の宇宙線は、銀河系が起源ですから、宇宙線のプールを銀河系内に作り、それが星間物質の水素と衝突してガンマ線を出すと推測できます。我々はそれを観測したと確信し、エネルギースペクトルや空間の分布を分析すると、予想と合っていました。これによりPeV 以下の宇宙線の起源が銀河系内にあると確かめることができ、今回の受賞につながったと考えています。実験グループのコラボレータの皆さん、梶田隆章所長を含む宇宙線研究所の皆さま、その他たくさんの応援してくれた方々に、感謝の意を表したいと思います。どうもありがとうございました」と、お礼の言葉を述べました。

お礼の言葉を述べる瀧田教授

梶田所長「非常に意義深いことで、本当によかったと思います」

 また、理事として授賞式に出席した梶田所長は、「瀧田先生の研究がユニークだった点は、昔からある空気シャワー装置を改良することでガンマ線の観測に挑んだことだと思います。世界の他の多くの研究者たちは電磁シャワーが出すチェレンコフ光を観測し、ガンマ線を捉えてきましたが、まさに瀧田先生は世界の研究者たちがやらない方法で、陽子起源の宇宙線のノイズを100万分の1まで落とし、天の川から来るガンマ線の信号を捉えることに成功した、そしてPeV宇宙線の起源が銀河系内にあることを示したというのは、非常に意義深いことだったと思います。日中の共同実験では大変なこともありましたが、長年にわたり、とくに日本のグループをまとめ上げてやってきた瀧田先生のご苦労もありますので、今回の受賞は本当によかったと思います」と祝辞を述べました。

仁科記念財団の理事として瀧田教授に対する祝辞を述べる梶田所長

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