宇宙・素粒子スプリングスクール2021をオンライン開催 大学3年生28人が参加

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 宇宙・素粒子の分野で大学院への進学を希望する大学3年生のための「宇宙・素粒子スプリングスクール2021」が3月1日から、東京大学宇宙線研究所を拠点にオンラインで開催され、全国から28人が参加しました。

スプリングスクール最終日に撮影した参加者及び教員、TAなどの集合写真

 今回はCOVID-19の感染拡大を防ぐため、首都圏に緊急事態宣言が出される中での開催となり、集中講義及び成果発表会などは、ZOOM会議によるオンラインで実施しました。プロジェクト研究については、「観測的宇宙論」「高エネルギーガンマ線天文学」「最高エネルギー宇宙線」「超高エネルギー宇宙線」の各グループが全面オンラインで実施する一方、岐阜県飛騨市での実習が必須だった「ニュートリノ物理」「重力波天文学」の両グループはプロジェクト研究自体を中止し、実験施設のオンライン見学会のみを行いました。

 「観測的宇宙論」グループは、すばる望遠鏡HSCとスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)の観測データから機械学習を用いた分類により、近傍の極金属欠乏銀河(EMPG)の候補天体を25個選び出し、その性質を分析しました。このうち3個の天体は、He II輝線とX線の測定結果から、中間質量ブラックホールを持つと考えるのが合理的と推論しました。そのうえで、プラックホールの質量を見積もり、比較・考察した結果、中間質量ブラックホールが、直接崩壊よりも、恒星質量ブラックホールから進化したとする説が支持できることを示しました。さらに、中間質量ブラックホールを探すためにEMPGを用いる手法を提案しており、指導にあたった大内正己教授は「ブラックホール形成の謎の解明に新しい道を切り拓く素晴らしい研究でした」と話しました。

 「最高エネルギー宇宙線」グループは、TA実験などで実際に使用しているプラスチックシンチレータ、光電子増倍管などを柏キャンパスの宇宙線研究所の実験室の四隅に設置し、空気シャワーを観測するという実験を行いました。その結果、観測できた1013電子ボルトの宇宙線が、赤経方向に一様に分布して到来していることを確認し、天球図にプロットした結果を披露。観測された宇宙線のエネルギーが、宇宙の磁場で曲げられないほど大きくはないため、宇宙線の到来方向が一様であるという仮説を裏付ける結果となりました。指導した﨏隆志准教授は「完全リモートでの実験機器の調整とデータ取得から、生データの較正、解析、宇宙物理的考察まで短期間で一連の研究体験をすることができました。3チーム分業を進めましたが、チーム内、チーム間の連携もよく最終結果にたどり着きました。初めはプログラミングで苦労していましたが、最後は技術も向上し、解析の新しいアイディアを自分達で実現していました。一緒に楽しむことができました。」とコメントしています。

 「高エネルギーガンマ線天文学」グループは、ペルセウス座銀河団内の二つの活動銀河核(AGN)を観測したNASAの人工衛星Fermiのデータから、激しく変動するIC310に着目。チェレコンフ望遠鏡MAGICの観測データから、IC310の300GeV以上のガンマ線放射が10倍も大きくなるフレア(放射)が発生していた様子を捉えました。検出されたエネルギーフラックスから中心にあるブラックホールの質量の下限値を計算し、先行研究の結果と矛盾しないことを確かめました。また、フレアの時間変動の速さからフレアの領域がシュバルトシルト半径より小さいことを突き止め、ブラックホール近傍の複雑な構造を示唆する結果と考察しています。指導した斎藤隆之助教は「ZOOMを使ったリモートでのスクールとなり、例年より指導が大変でしたが、学生たちも積極的に取り組んでくれて楽しくやれました。データから物理情報を正確に抜き出して、ブラックホール近傍の物理現象に迫れたのはよかったと思います」と語りました。

 「超高エネルギー宇宙線」グループは、地表に降り注ぐμ粒子の寿命を、PMTと三枚のプラスチックシンチレータとアルミニウム、鉛の板を挟んで推定する実験を行い、その結果を分析しました。アルミニウムや鉛を挟んだのは、原子核に引きつけられて吸収され、寿命を計測する妨げとなるμの影響をあらかじめ除く意図があり、その結果、μ粒子の寿命については2019年より文献値に近い好結果が得られました。これを用いて計算したフェルミ結合定数の値も文献値に近い値が求められました。解析の過程で、光電子増倍管の経年劣化に伴うアフターパルスの影響にも言及しており、指導にあたった川田和正助教は「実験装置に触れてもらうことはできませんでしたが、データの解釈や理論的な考察に多くの時間を割くことができたのは非常に良かったと思います。最初はアルミニウムを挟んだ実験が上手く行かず、鉛を挟む案が学生さんから提案され、寿命測定による基礎物理学定数の決定などの動機づけも議論の中から生まれるなど、私自身も非常に勉強になりました」と話しています。

 最終日の5日午後、各グループによる35分間のプレゼンテーションが行われ、審査の結果、「超高エネルギー宇宙論」グループが最優秀賞を受賞しました。

 一方、「ニュートリノ物理」グループの竹田敦准教授は2月10日、「重力波天文学」グルーブの内山隆准教授は3月4日、岐阜県飛騨市神岡町の実験室内からの生中継で研究内容について説明し、質問を受けました。

■ プロジェクト研究の詳しい様子は、こちらのページをご覧ください。

■ 宇宙・素粒子スプリングスクール2021の概要は、こちらのページをご覧ください。