宇宙・素粒子スプリングスクール2021|プロジェクト研究の紹介

スプリングスクール

最高エネルギー宇宙線

Supervisor:﨏隆志 Supporter:竹田成宏

参加人数 : 6人
完全オンラインで実施しました


  10の20乗電子ボルトのエネルギーを持つ最高エネルギー宇宙線が宇宙からやってきています。人工加速器で人類が到達できたビームエネルギーよりも一千万倍以上も高いものです。このような膨大なエネルギーを持った粒子がどこで、どのように生まれ、どのように地球にやってきたか未だ解明されていません。この謎に包まれた粒子の起源を探るために、米国ユタ州に巨大な宇宙線観測装置、テレスコープアレイ(TA)を建設しました。日・米・韓・露・ベルギー・チェコの6か国の研究者チームが、その謎に挑戦しています。
 プロジェクト研究では、TAと同じ原理の検出器を使って宇宙線空気シャワーをつかまえる実習を行います。個々の検出器の基礎特性を理解したのち、複数の検出器を組み合わせて地上に到達する宇宙線空気シャワーの信号を測定します。測定したデータを解析し、宇宙線の到来方向分布を測定しましょう。

宇宙・素粒子スプリングスクール2021|プロジェクト研究の紹介
柏キャンパスに設置した実験装置の一部。スライドから
柏キャンパスに設置した実験装置の一部。スライドから

ニュートリノ物理

Supervisor:竹田敦 Supporter : 三木信太郎(M1)

参加人数 : 3人
COVID-19の感染拡大に伴う緊急事態宣言を受け、プロジェクト研究が中止されました


 1998年のニュートリノ振動と質量の発見以来、ニュートリノ研究は飛躍的に発展しました。太陽、大気、加速器、原子炉などのニュートリノを用いたニュートリノ振動の精密測定によって、3種類のニュートリノ間のフレーバー混合モデルがほぼ解明し、さらに宇宙創世の謎を解くヒントとなるレプトンCP非保存パラメータの測定に手が届き始めています。スーパーカミオカンデ(SK)実験やT2K実験はこの研究で世界をリードしています。
 また、SK検出器中の純水にガドリニウム(Gd)を溶解し、反ニュートリノ事象の識別が可能なSK-Gdプロジェクトが進行しています。SK-Gdでは、宇宙の始まりから現在まで、過去に起こった超新星爆発によって生じ宇宙に漂っているニュートリノを初めて検出しようという試みがなされます。一方では、レプトンCPや陽子崩壊などに飛躍的な進展が期待できるハイパーカミオカンデプロジェクトも進められています。また、10^15eV以上のエネルギー領域では宇宙の高エネルギー天体起源と思われるニュートリノも発見されました。今後もニュートリノ研究のさらなる進展が期待できるでしょう。
 本プロジェクト研究では、一般的なニュートリノ実験で用いられる光電子増倍管と宇宙線ミューオンを用いた実験を予定しています。光電子増倍管から得られた電気信号のデータ取得、事象選択などの実験に必要な基本的な手法を学び、同時にシミュレーション研究やデータ解析などを行い、研究に必要な理論・検出器・解析の全過程を、自主的に学べる機会となることを予定しています。

宇宙・素粒子スプリングスクール2021|プロジェクト研究の紹介
2月10日に行われたオンライン見学会より
2月10日に行われたオンライン見学会より

高エネルギーガンマ線天文学

Supervisor:齋藤隆之、Ievgen Vovk、Daniela Hadasch、高橋光成 Supporter : 櫻井駿介(D3)、大谷恵生(D1)

参加人数 : 6人
完全オンラインで実施しました


 高エネルギーガンマ線による宇宙の研究は、フェルミガンマ線衛星、 HESS, MAGIC, VERITAS などの地上チェレンコフ望遠鏡により、過去10年の間に大きく発展してきました。多数の高エネルギー天体からGeV・TeVガンマ線が発見され、宇宙で起こる様々な高エネルギー現象が明らかになってきました。超巨大ブラックホール、超新星残骸、高エネルギー宇宙線加速、宇宙論、暗黒物質探索において重要な成果をもたらし、今や、高エネルギーガンマ線天文学は、宇宙物理学における極めて重要な分野を形成しています。本プロジェクト研究では、MAGICガンマ線望遠鏡で観測された活動銀河核(超巨大ブラックホール)からのTeVガンマ線データを解析し、活動銀河核のエネルギー源である超巨大ブラックホールの性質についてさまざまな考察研究を行います。

宇宙・素粒子スプリングスクール2021|プロジェクト研究の紹介
MAGIC望遠鏡のデータを解析に使用した
MAGIC望遠鏡のデータを解析に使用した

超高エネルギー宇宙線

Supervisor:川田和正 Supporter:佐古崇志、加藤勢(D1)、横江誼衡(M2)

参加人数 : 4人
完全オンラインで実施しました


 銀河系内のどの天体が超高エネルギー宇宙線(10の12乗~10の17乗電子ボルト)を加速しているのか?」 宇宙線の発見以来100年以上続くこの謎を解明するため、宇宙線および宇宙ガンマ線を中国・チベット(標高4300m)に数万平米の宇宙線観測装置を建造し観測を続けています。また、最近では、南米ボリビア・チャカルタヤ山(標高4740m)にも同型の装置を建設し、巨大ブラックホールが存在するとされる銀河中心方向の観測も計画しています。
 プロジェクト研究では、素粒子の一つであるミューオンを、実際の観測で使用している粒子検出器を組み合わせて測定します。空から絶え間なく降り注ぐ目に見えない素粒子の性質をどのように調べるのでしょうか?宇宙線観測装置を通して体験します。

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柏キャンパスに設置された実験装置
柏キャンパスに設置された実験装置

観測的宇宙論

Supervisor:大内正己 Supporter:磯部優樹(M2)、張也弛(D1)、青山尚平(特任研究員)、中島王彦(国立天文台特任助教)

参加人数 : 6人
完全オンラインで実施しました


 現在の宇宙を満たす星や銀河が、どのように形成されたのかについては、理解されていない物理プロセスが多く、宇宙進化さらには観測的宇宙論研究の最重要課題の一つとして残されています。本プログラムでは、最新のすばる望遠鏡などによる可視光撮像及び分光データを解析して、形成後まもない天体を検出し、星や星間ガス、ブラックホールにかかわる未知の物理プロセスの発見を目指します。膨大なデータ扱うため、機械学習といった情報工学の力も利用して取り組む予定です。探し出された天体が形成後間もない天体かどうかについては、星雲線の強度と電離モデルによる推定などを行って評価します。

宇宙・素粒子スプリングスクール2021|プロジェクト研究の紹介
グループで議論する様子。スライドの一枚から
グループで議論する様子。スライドの一枚から

重力波天文学

Supervisor:内山隆 Supporter:三代浩世希(特任研究員)、杉山拓夢(M1)

参加人数 : 3人
COVID-19の感染拡大に伴う緊急事態宣言を受け、プロジェクト研究が中止されました


 重力波が初観測されてから、もう5年が経ちました。最初に検出された重力波は、13億光年離れた太陽質量の30倍程度の連星ブラックホールの合体からやってきたものでしたが、その後も連星中性子星の合体がとらえられるなど、急速にこの分野は発展しています。これからも、次々と新しい重力波天体が発見されるはずです。こうしたなかで,日本の重力波グループは、KAGRA検出器により重力波天文学へ貢献すべく日々努力を続けています.
 今年度の重力波プロジェクト研究は、この神岡鉱山のKAGRAのサイトで行います。実施日当日には、まず鉱山内のKAGRA施設の見学を行い、実物のレーザー干渉計を体感します。その後、坑外の研究棟にてテーブルトップのマイケルソン干渉計を用いた測定実験を行います。その後は、オンラインで連絡を取りながら、各自、自宅にてデータ解析を行います。
 コロナ感染拡大防止のために、募集人数3名という限られた人数での開催となりますが、KAGRAの現場を見学体験できる絶好の機会です。ふるってご応募下さい。なお、感染状況によっては、東京大学の指針に従い中止となる場合があります。

宇宙・素粒子スプリングスクール2021|プロジェクト研究の紹介
KAGRA内部の様子。3月4日に開かれたオンライン見学会から
KAGRA内部の様子。3月4日に開かれたオンライン見学会から