最高エネルギー宇宙線
Supervisor:さこ隆志 Supporter:木戸英治(助教)、高橋薫(D3)、小山千里(D1)、丹下雄太(M1)
参加人数 : 5人 (受け入れ可能な上限)
事前の準備 : 2月中旬の1日:ハイブリッド(可能な限り柏で対面)事前講習
◼︎目的と達成目標
宇宙からは、地上の加速器では実現できないような非常に高いエネルギーを持った粒子が到来しており、10の20乗電子ボルトにも到達する粒子を最高エネルギー宇宙線と呼びます。その起源は不明ですが、ブラックホールや極超新星などの極限的な環境の天体・物理現象が関係していると思われます。到来頻度の低い最高エネルギー宇宙線を観測するには、宇宙線と地球大気が反応してできる空気シャワーを観測します。本プロジェクトでは、空気シャワーの生成と観測の原理を学び、実際に実験室と屋外で空気シャワーの観測を行います。世界初の技術にも挑戦します。
◼︎手法と指導内容
実験室と屋外に設置したシンチレーション検出器で、同時計測法によって空気シャワーを観測します。テレスコープアレイ実験で使用しているデータ収集回路を利用して、できるだけ大きく広がった空気シャワーの検出に挑戦しましょう。観測した空気シャワーの頻度や広がりからエネルギー推定にも挑みます。さらに、将来の大型計画に向けた検証のために、世界で初めてスターリンク通信を利用した空気シャワーデータ取得にチャレンジします。どのような条件にすれば空気シャワーを検出できるか、本当に空気シャワーを検出できたか等、さまざまな観点から一緒に議論しましょう。
2月中に1日、オンラインで(全参加者が可能であれば柏で対面で)背景の物理の説明と実験装置の基礎的な扱い方を習熟し、期間までにデータ解析手法を学んでもらいます。期間中(3/9-13)は、取得したデータの解析や観測方法の改良を行い、結果をまとめて発表資料を作成します。
重力波天文学
Supervisor:宮川治、森崎宗一郎、田越秀行 Supporter:未定 神岡KAGRA見学担当 : 内山隆
参加人数 : 5人
事前の準備 : 2月中旬:オンライン(zoom)でレーザー干渉計とデータ解析に関する講義と事前学習
◼︎目的と達成目標
アインシュタインの一般相対性理論で予言された時空のさざ波、重力波は2015年の初検出以来、ブラックホールや中性子星の連星合体から放出された重力波が数多く検出されています。従来の電磁波観測とは異なる情報をもたらす重力波は、宇宙を観測するための新たな手段となっており、さらなる天文学の発展に貢献することが期待されています。
現在の重力波検出の主流は、マイケルソン干渉計を基本とした大型レーザー干渉計です。本プロジェクト研究では、テーブルトップのレーザー干渉計を構築しながら、レーザー干渉計の基礎をじっくりと学びます。最後には、取得したデータを用いてデータ解析も行います。これらにより重力波研究への興味を更に深めてもらいます。
なお、スプリングスクール申し込み者全員の中から希望者を対象にして、レーザー干渉計型重力波検出器KAGRAの神岡現地での見学会を予定しています。
◼︎手法と指導内容
事前のオンラインでのレーザー干渉計についての講義に基づき、テーブルトップのミニレーザー干渉計を構築します。また、重力波信号のデータ解析の基礎を学び、レーザー干渉計によって取得したデータの解析を行います。
宇宙ニュートリノ研究
Supervisor:竹田敦 Supporter : 未定
参加人数 : 5人
事前の準備 : 2月中旬の1日:スーパーカミオカンデ見学。小型検出器でデータを取得する。
◼︎目的と達成目標
ニュートリノは電荷をもたず物質とほとんど相互作用をしないため、観測が非常に難しい素粒子です。このニュートリノを観測しその性質を理解することは、宇宙の起源や進化の解明に深いかかわりをもちます。岐阜県飛騨市にあるスーパーカミオカンデは、世界最大のガドリニウム水溶液を用いた宇宙素粒子観測装置であり、太陽・大気・加速器・超新星爆発等を起源とするニュートリノ観測・探索を通して宇宙初期に物質がどのように作られたかという根源的な謎の解明等を行っています。2022年度初頭にはガドリニウム濃度が0.03%まで高められ、ニュートリノ反応が起きた際に発生する中性子を効率よく検出することで、超新星背景ニュートリノの世界初観測を目指しています。
本プロジェクト研究では、神岡鉱山の地下にあるスーパーカミオカンデの見学と、テーブルトップの小型水槽を用いた実験により、ニュートリノ研究をより身近なものとして体験します。
◼︎手法と指導内容
2月26-27日に神岡にて小型検出器でのデータ取得、スーパーカミオカンデ・KAGRAの見学を行います(都合が合わない方は相談して日程調整します)。1日目、富山駅前に集合し、研究者の運転する車に乗って富山駅から神岡へ移動します。神岡到着後、小型の水槽と光電子増倍管からなるテーブルトップの実験装置を使って、中性子捕獲の実験を行います。夜は研究所のドミトリーに宿泊します。2日目は、スーパーカミオカンデとKAGRAの見学等を行ったあと、富山駅前まで移動し、そこで解散をします。
期間中(3/9~13)は、神岡にて取得したデータの解析を行い、結果をまとめて発表資料を作成します。
高エネルギーガンマ線天文学
Supervisors:野崎 誠也 Supporters:永田 柊弥(M1), 森田 開(M1)
参加人数 : 5人
事前の準備 : 2月中旬:オンラインで実験の説明と事前講習・演習
■目的と達成目標
超新星残骸、巨大ブラックホール、ガンマ線バーストといった極限的な環境で放射された高エネルギーガンマ線は地球大気と反応して空気シャワーをつくるため、地上まで到達しません。しかし、空気シャワー中の荷電粒子が発するチェレンコフ光を地上望遠鏡で捉えるという手法で、高エネルギーガンマ線を間接的に検出することができます。チェレンコフ光は、荷電粒子が媒質中での光速以上の速度で進んだときに発する青い光で、他にも高エネルギー粒子検出器など様々な実験で利用されています。
本プロジェクトでは、高エネルギーガンマ線望遠鏡で実際に使用されている高性能の光電子増倍管を使って、大気ミューオンが水中で放射するチェレンコフ光を測定します。プロジェクトを通して、大気ミューオン・チェレンコフ放射の性質、高エネルギーガンマ線望遠鏡の測定技術・データ解析について学んでもらいます。
■手法と指導内容
本実験の前には、光電子増倍管の高圧の調整など、実際の望遠鏡でも行われている実験装置のキャリブレーションも行ってもらいます。本実験では、大気ミューオンが水槽を通過したときに放射するチェレンコフ光を、水槽の下部に設置した多数の光電子増倍管で検出します。水槽の周囲に設置したシンチレーション検出器による外部トリガーや、光電子増倍管の信号をもとにしたセルフトリガーを使って取得したデータを自分たちで解析し、チェレンコフ光のパルス波形や光量、カメライメージから、大気ミューオンのエネルギーや到来方向などを推定します。また、シンチレーション検出器の位置や水の量などを変えることができるので、参加者の皆さんの自由な発想でセットアップを変更して実験を行い、検出光量やイベントレートの違いなどから、大気ミューオンやチェレンコフ放射に関する考察をしてもらいます。
超高エネルギー宇宙線
Supervisor:川田和正 Supporter:川島輝能(D3)、杉本布達(M2)、今和泉銀河(M2)
参加人数 : 5人
事前の準備 : 2月中旬に1日 : オンライン(zoom)で実験説明、ROOTのインストール、使い方の説明
◼︎目的と達成目標
「銀河系内のどの様な天体が超高エネルギー宇宙線をどのように加速しているのか?」 宇宙線の発見以来100年以上続くこの謎を解明するため、宇宙線および宇宙ガンマ線を中国・チベット(標高4300m)に数万平米のシンチレーション検出器のアレイを設置し観測を続けています。また、南米ボリビア・チャカルタヤ山(標高4740m)にも同型の装置の一部が稼働を開始し、将来的に宇宙線の発生源の有力候補である銀河中心方向の観測も計画されています。本プロジェクト研究では、素粒子の一つであるミュー粒子を、チベットで稼働しているものと同型の粒子検出器を組み合わせて測定します。複数の複数検出器からの信号を論理回路モジュールで制御し、パイ中間子およびミューオンを効率良く検出する装置を実際に組み上げ、粒子のライフタイム等の正確な測定を目指します。空から絶え間なく降り注ぐ目に見えない素粒子の性質をどのように調べるのか?宇宙線観測装置を通して体験します。
◼︎手法と指導内容
宇宙線研究所の実験室で、シンチレーション検出器を複数組み合わせ、宇宙から降り注ぐパイ中間子やミューオン等の素粒子の観測を行います。事前にオンライン(zoom)にて実験の概要を説明し、解析ソフトウェアのインストール・動かし方を学びます。開催期間初日に実験装置のセットアップを実際に組んでデータ収集の開始を目指します。その後、ROOTをベースとした解析ツールを用いて、データを解析し、ミューオンのライフタイム等の物理量を推定します。データ解析、考察、研究発表準はすべて対面形式を想定しています。必要であれば解析用ノートPCは貸し出す予定です。
観測的宇宙論
Supervisor:大内正己 Supporter:影浦優太(M2)、武知可夏(M1)
参加人数 : 5人(受け入れ可能な上限)
事前の準備 :1日目(2/10 or 2/12):ガイダンス、課題発表会、研究指導(対面+zoomのハイブリッド)。2日目(2/17)および3日目(2/25): 研究指導(zoom)
◼︎目的と達成目標
現在の宇宙を満たす星や銀河、ブラックホールなどの天体が、どのように形成されたのかについては、理解されていない物理プロセスが多く、宇宙進化さらには観測的宇宙論研究の最重要課題の一つとして残されています。2022年から科学観測を始めたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、これまでになく高い感度を赤外線域で達成し、銀河に基づく宇宙進化の観測研究に飛躍的な進歩をもたらしています。本プログラムでは、JWSTの最新の分光および撮像データを用いて初期の宇宙の銀河や超巨大ブラックホールの性質を探る研究を行います。ほとんど手付かずの最新のデータを読み解くことで、参加学生が自らの手で新たな発見をすることを目標としています。
本プログラムでは高い目標を掲げていますが、専門知識や研究の経験は無くても問題ありませんので、どなたでも安心して参加できます。ただし、参加学生の皆さんには、スプリングスクールの開始約2ヶ月前から各自(自宅)で課題に取り組んで頂き、初日に課題についての発表をしてもらう予定です(所属大学の授業や試験には影響が出ないようにしっかり配慮します)。また、下記のように、2月中に合計3日間、研究指導を行う予定です。全て参加できなくても大丈夫ですが、準備に時間がかかりますので、ちょっとだけ参加して、軽く研究の様子を知りたいと考えている学生さんにはあまり向いていません。一方で、教員もSupporterも手厚く皆さんを指導しますので、プロの研究者が行うような宇宙の研究に取り組んでみたい人にとっては、自身を大きく成長させる、素晴らしい機会になることでしょう。
◼︎手法と指導内容
JWSTの分光観測により得られた最新のデータを用います。研究室のMac Book Airを学生に貸し出し、対面とオンライン(zoom)を用いた指導と議論を通じて、データ解析および理論モデルとの比較、考察、研究発表準備を行ってもらいます。具体的には、2/10か12に柏キャンパスに1日だけ皆さんに来てもらい、Mac Book Airを貸出し、解析ソフトウェアの使い方を教員とSupporterで対面指導をします。柏で対面指導を受ける学生は首都圏在住の参加者を想定していますが、それ以外の地域の皆さんに対しても、Mac Book Airを郵送しておき、同日にzoomを用いて指導します。その後、2/17と25に2回程度zoomで指導を行う予定です。スプリングスクール 実施期間(3/9-13)は、通常通りの指導を対面で行います。