川田助教が「チベットから見る宇宙、そしてアルパカ・・・」をテーマに講演〜西東京市・多摩六都科学館のサイエンスカフェで

イベントレポート

 チベット実験、ALPACA実験、テレスコープアレイ実験という、宇宙線研究所高エネルギー宇宙線研究部門の三つのグループに所属する川田和正助教が登壇するサイエンスカフェ「チベットから見る宇宙、そしてアルパカ・・・」が2月11日、西東京市の多摩六都科学館の科学学習室で開かれ、応募して当選した40人の一般市民が参加しました。

 多摩六都科学館でのサイエンスカフェは、同館と宇宙線研究所が2015年に締結した広報・啓発活動に関する相互協定に基づくもので、研究現場で得た知見を広く市民に提供し、科学文化の発展に寄与することなどを目的としており、1年に2回ほど開催されています。

宇宙からやってくる放射線(宇宙線)をとらえる

多摩六都科学館の科学学習室で開かれたサイエンスカフェ

 川田助教はまず、宇宙線について、「宇宙からやってくる素粒子のことで、陽子、電子/陽電子、ガンマ線、ニュートリノなどがあります。1912年にオーストリア出身の科学者ヘスが初めて見つけ、ノーベル賞を獲得しました」と解説したうえで、霧箱という道具を使って宇宙線を観察する方法について説明しました。その中で、ドライアイスで冷やして過飽和になったエタノールを荷電粒子が通過すると、エタノールの分子が電離し、周りの分子を引きつけ、通り道に白い筋が見えることを丁寧に説明し、「見える太さや長さ、曲がり具合によって、宇宙線の種類を判別することができます」と述べました。

 ここで、研究仲間でもある日本大学の塩見昌司准教授が、説明の助っ人役として登場。自らの大学で所有する大型の霧箱(40センチ四方)を使い、宇宙線のほか、小さな鉱石から出るβ線、ランタンの芯に塗布されたトリウムが崩壊して生じたα線などを可視化する実験を行い、「鉱石の中にはウランとか重い元素が入っていますが、これら不安定な状態から安定な状態になろうとして放射線を出し、それがこんな形で見えています」などと解説しました。

宇宙線の研究者で、助っ人として登場した日本大学の塩見准教授は、
霧箱を通過した宇宙線が見える理由を丁寧に解説してくれました

太陽の磁場、反転、そして宇宙天気予報へ

 川田助教は続いて、標高4300メートルのチベット高原にシンチレーション検出器を等間隔に敷き詰めたチベット実験で、宇宙線が大気と衝突して作る空気シャワーを捉え、そのエネルギー量や到来方向を読み取る方法について説明。さらに、太陽が作る強い磁場の様子を知るために、宇宙線が太陽に遮られて作る影を利用する研究についても紹介し、「地球圏にも影響を与えるコロナ質量放出(CME)は4日で地球に到着しますが、宇宙線なら8分で届きます。太陽の影をモニターしていれば、太陽から地球に向かうCME現象を事前に知ることができ、将来は宇宙天気予報にも使えるかも知れません」と語りました。

多摩六都科学館の学習室で開かれたサイエンスカフェ

かに星雲から450兆電子ボルト(TeV)ガンマ線を観測

 また、かに星雲方向から24個の100兆電子ボルト(TeV)以上のガンマ線とみられる信号を観測したという最近のニュースにも触れ、「最大450TeVというエネルギーは、可視光のエネルギーのおよそ100兆倍で、他の天体も含め史上最大です。新しいエネルギー領域のガンマ線天文学を開拓するものです」。

 さらに、南米ボリビアにも、チベットとほぼ同規模のALPACA実験を準備中であるとし、「南半球にあって有利なことは、超巨大ブラックホールがあるとされる天の川銀河の中心を視野に含められることです。ここも高いエネルギーの宇宙線の発生源である可能性があり、観測の結果が得られるのが大変楽しみです」と述べました。

アルパカとリャマの違いを説明したスライド

 また、アルパカと聞いて動物のアルパカを思い浮かべた小学生なども多いことにも配慮し、「実験装置のあるチャカルタヤ山頂には、アルパカもたくさんいますが、リャマというアルパカとよく似た動物もいます。両者の見分け方はアルパカが可愛くフサフサな顔をしているのに対し、リャマは耳が大きくてちょっとブサイクなことですね」などと語り、会場に集まった小中学生たちを笑わせていました。

縦40センチ、横40センチ、深さ10センチの霧箱。エタノールをドライアイスで冷やし、過飽和の状態を作り出すと、宇宙線の軌跡に沿ってエタノールの分子が電離し、筋状の霧が作られます
宇宙線を捉えるシンチレーション検出器(縦25センチ、横25センチ、高さ50センチ)。ミュー粒子などの宇宙線がプラスチックシンチレータを通ると光を発し、光電子増倍管が電気信号に変えます

会場からは多くの質問が寄せられる

講演を聴き、熱心に質問する参加者

 会場からは「太陽で生じる磁場のメカニズムは地球と同じか」「太陽磁場の反転は地球にも影響があるのか」「太陽の活動に静穏期があるのはなぜか」「磁場の強さはどのくらいか。黒点との関係はあるのか」など多くの質問が出たほか、講演後も個別に質問を求める人たちも見られ、川田助教は一人一人の質問に丁寧に答えていました。