【トピックス】TAUP2019で山田智宏さん(D2)がポスター最優秀賞を受賞

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KAGRA実験グループに所属する博士課程2年の山田智宏さんがこのほど、富山市で開催された第16回宇宙素粒子・地下物理国際会議(TAUP2019)の最優秀ポスター賞の一人に選ばれました。

山田さんのポスターは「国際共同観測(O3)に向けたKAGRA極低温鏡懸架システムの制御」(“KAGRA Cryogenic Suspension Control toward the Observation Run 3”)というタイトルで、KAGRAのサファイア鏡を吊るす懸架システムで実施したDamping制御の結果と、鏡を極低温まで冷やすためのヒートリンクの接続で揺れが伝わるのを防ぐシステムを、二つ合わせて図解で解説したものです。

KAGRAなどの重力波望遠鏡では、宇宙から到来するわずかな重力波の信号を捉えるため、地面の揺れや、鏡内部の熱雑音を極限まで抑える設計がされています。地面の揺れは多段の振り子を利用して鏡自体を吊ることで防振しますが、振り子にはその特性から共振周波数で大きく振動してしまうという問題点があります。検出器全体を安定的に運用するためには、この懸架システムの振動を抑える必要があり、Damping制御を実施しました。しかし、熱伝導によって鏡を極低温まで冷やすためのヒートリンクが、せっかくキャンセルしたはずの揺れを伝えてしまう課題があり、山田さんらは、このヒートリンクの防振システムを設計・製作し、2018年度中に設置までを終えていました。

山田さんは「極低温鏡懸架システムの制御とその冷却について、同一のポスターで触れることができたのが良かったと思っています。13.5メートルの防振システム全体図を効果的に配置することで、極低温鏡懸架システムの位置とその役割を簡単に説明し、なぜヒートリンクが問題になり得るのかについても付け加えました」とコメントしたうえで、「KAGRAは今年度中のO3参加を目指していますが、自分の関わった装置で重力波を観測できるよう、今後も精力的に研究に取り組んでいきたいと思っています」と抱負を語りました。

TAUP2019のポスターセッションは9月10日に開催され、エントリーされた107点のうち、4点が最優秀ポスター賞に選ばれています。

TAUP2019のポスターセッションについて