【プレスリリース】梶田隆章教授のノーベル博物館への寄贈品について

プレスリリース

概要

 2015年のノーベル物理学賞受賞者である東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章教授は、2015年12月6日(日)に受賞の理由となった研究にゆかりのある品として、2種類の光電子増倍管(こうでんしぞうばいかん)をストックホルム市内のノーベル博物館に寄贈しました。

内容

 光電子増倍管とは、ニュートリノの観測施設であるスーパーカミオカンデの「内水槽」と「外水槽」に取り付けられている光センサーです。今回、梶田教授はスーパーカミオカンデの内水槽/外水槽のそれぞれに取り付けられている光電子増倍管をノーベル博物館に寄贈しました。

スーパーカミオカンデのタンクは、50,000トンの超純水を蓄えており、タンク壁面から厚さ2m厚の外水槽と、その内側にある32,000トンの内水槽とで構成されています。(図1参照)。内水槽の内面には約11,000本の20インチ径(50 cm径)の光電子増倍管(図2参照)が取り付けられており、内水槽内部で起こるニュートリノ反応が発するチェレンコフ光を捉えます。20インチ径光電子増倍管はカミオカンデのために1981年に浜松テレビ(株)(現、浜松ホトニクス(株))と、東京大学と高エネルギー物理学研究所(現、高エネルギー加速器研究機構)(KEK)との協力で開発されました。その後改良を重ねた製品がスーパーカミオカンデで使われています。20インチ径光電子増倍管は世界最大の口径をもつものであり、2014年には「IEEEマイルストーン」に認定されています。IEEEマイルストーンとは、電気・電子・情報・通信などの分野で歴史的な偉業を達成したと認められる技術に贈られるものです。

一方、外水槽には1,885本の8インチ径(20 cm径) 光電子増倍管(図3参照)が取り付けられており、ニュートリノと同様に地球を通過する、ミュー粒子が発するチェレンコフ光を捉えます。外水槽は2mの厚みしかないため、なるべく多くのチェレンコフ光を8インチ光電子増倍管が受けられるように光電子増倍管の周りには60cm正方、厚さ1.3cmの「波長変換板」が取り付けられています。波長変換板は、アクリル製の板で、短い波長のチェレンコフ光を受けて、光電子増倍管が最も捉えやすい(感度の高い)波長に変換する材料が入っています。

今回梶田教授が寄贈した光電子増倍管は、現在スーパーカミオカンデで使われているものと同型の20インチ光電子増倍管と8インチ光電子増倍管(波長変換板付き)です。
なお、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大学特別栄誉教授が、同博物館に自身の研究にゆかりのある品としてカミオカンデの光電子増倍管を寄贈しています。

図1. スーパーカミオカンデのタンクの構成
図2.内水槽に取り付けられている20インチ径光電子増倍管
(写真:浜松ホトニクス(株)提供)
図3.外水槽に取り付けられている8インチ径光電子増倍管(波長変換板付き)

問い合わせ先

東京大学 宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設
特任専門職員 武長 祐美子

リンク

・ スーパーカミオカンデ 公式ホームページ
・ 光電子倍増管の説明