【論文報告】T2K実験がニュートリノを用いたCP対称性の破れの最初の研究成果を論文として発表しました

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スーパーカミオカンデで観測された T2K 電子ニュートリノ候補事象

概要

昨年夏にプレスリリースを行いましたT2K実験によるニュートリノの「CP対称性の破れ」の研究結果 [Link] が、4月10日付けのPhysical Review Letters誌に掲載され、編集者の推奨論文にも選ばれました。

T2K実験は、東海村 J-PARC で生成したニュートリノを、スーパーカミオカンデを用いて観測、その種類の変化を詳細に調べることで、ニュートリノの性質を調べる実験です。実験開始当初はミュー型ニュートリノを生成、これがスーパーカミオカンデにおいて電子型ニュートリノとなる現象を調べていましたが、2014年より反ニュートリノビームを生成、これが反電子型ニュートリノになる現象を調べ始めました。この結果、ニュートリノと反ニュートリノで電子型ニュートリノ出現が同じ頻度では起きない可能性が高く、CP対称性の破れがあることを示唆する結果が得られました。この結果は、昨年の8月にプレスリリースにより既に発表済ですが、このたび Physical Review Letters誌に掲載され、編集者の推奨論文にも選ばれました。

ビッグバン理論の予想に反して、現在の宇宙は物質で占められて反物質がほとんど存在していませんが、ニュートリノがこの問題を解決すると期待されています。解決の鍵となるのが、ニュートリノと反ニュートリノの性質の違い、すなわちCP対象性の破れです。この違いを精度よく知るには、多数の事象を観測する必要があり、今後も実験の継続が必須となります。効率的に事象を観測のためには、スーパーカミオカンデよりも一層大きな検出器が必要となります。このため、スーパーカミオカンデの約20倍の事象検出数を可能とする ハイパーカミオカンデ実験計画が立案されました。現在は2026年の検出器稼働を目指し、日本をはじめとした15カ国の協力のもとにその準備が進められています。

T2K実験は、東京大学宇宙線研究所と高エネルギー加速器研究機構がホスト機関となり、11カ国から63の研究機関の約450名が参加する国際共同実験です。論文情報

“Combined Analysis of Neutrino and Antineutrino Oscillations at T2K”
K. Abe et al. (T2K Collaboration)
Phys. Rev. Lett. 118, 151801 – Published 10 April 2017
[ Physical Review Letters as an Editors Suggestion ]Link

[ 昨年8月のプレスリリース「T2K実験・ニュートリノの『CP対称性の破れ』の解明に第一歩を踏み出す」 ]
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