トピックス「ありがとうございました!! 宇宙線研究所の一般公開 2000人近くが来場」

ありがとうございました!! 宇宙線研究所に2000人近くが来場
―2018年10月26・27日 東京大柏キャンパス一般公開で

 東京大学柏キャンパスの一般公開が10月26・27日の両日開かれ、宇宙線研究所には2日間で1953人が訪れました。ご来場をいただき、誠にありがとうごうございました。

1階テントの受付コーナーに多くの参加者が、整理券を求めて集まりました。
1階テントの受付コーナーに多くの参加者が、整理券を求めて集まりました。

うちゅうカフェ、梶田先生の質問コーナーには約100人が参加

うちゅうカフェで講演する牛場さん
うちゅうカフェで講演する牛場さん

 2日目に行われたメーンイベント、「うちゅうカフェ」「何でも聞ける梶田先生への質問コーナー」にはおよそ100人が詰めかけ、会場は満席となりました。

うちゅうカフェでは、牛場崇文特任助教(前ICRRフェロー)、馬渡健特任研究員(ICRRフェロー)、川口恭平助教の三人が登壇し、それぞれ自分の研究について語りました。
 牛場さんは「重力波研究と私」と題して講演。学部1年の「相対性理論」の授業の授業で重力波に興味を持ったことや、東日本大震災の影響でKAGRAプロジェクトが一時的にストップするなか、”武者修行”で取り組んだストロンチウム格子時計のレーザー光源の研究が、その後のKAGRA建設に役立っていると報告。「重力波の観測によって、太陽質量の60倍もあるブラックホールの発見や中性子連星の合体など、宇宙の重大な謎を解明する兆候が見えつつあります。大変面白い分野なので期待して見ていてください」と呼びかけました。

楽しそうに自分の研究について語る馬渡さん
楽しそうに自分の研究について語る馬渡さん

 馬渡さんは、大学2年の時に天文学を初めて志したことや、大阪産業大学、東京大学と任期付のポスドク生活を過ごしていることに触れ、「人生も研究も先が見えないから楽しい、と考えるようにしています」と前向きにコメント。宇宙線研で取り組む観測的宇宙論が、130億年前の銀河がどのように生まれたかを探索していることにも触れ、「いまだにわからないことだらけなのが天文学。これまで見えなかったものが見えたらハッピーというスタンスで研究しています」と語り、望遠鏡の限界をパソコン上の解析で乗り越えた成果の一つを紹介しました。

ユーモアたっぷりに自己紹介する川口さん
ユーモアたっぷりに自己紹介する川口さん

 川口さんは、京都、奈良で鹿と戯れてのどかに育ち、京都大で博士号を取得した後に、「じゃがいもとビールが主食」というドイツに渡り、マックスプランク研究所で重力波について研究していたことを紹介。LIGOが観測した中性子連星の合体から出てくる重力波を、一般相対論的効果を近似なしでシミュレーションした結果も示し、「重力波が当たり前のように観測される時代がもうそこまで来ています。全く予想しないものが見つかる可能性もあり、世界の仕組みに迫れるし、何よりも面白いです」と語りました。

梶田所長「若いころから研究を楽しんできた」

たくさんの質問に一つ一つ丁寧に答える梶田所長
たくさんの質問に一つ一つ丁寧に答える梶田所長

 「何でも聞ける梶田先生への質問コーナー」では、梶田所長が学生時代からの写真などを示しながら、自らの研究生活について振り返りました。指導教官だった小柴昌俊名誉教授の下、陽子崩壊の観測のため、カミオカンデの建設で苦労した経験こと、その苦労が報われ、超新星からの世界初のニュートリノ観測(1987年) につながり、小柴名誉教授が2002年ノーベル物理学賞を受賞することになったこと。さらに、陽子崩壊を観測する上では雑音となるニュートリノを観測しているうちに、μ型ニュートリノが予想より少ないことに気づき、それがスーパーカミオカンデでのニュートリノ振動の発見(梶田所長らが2015年ノーベル物理学賞を受賞した成果)につながったことにも触れ、「私たちは若いころから研究を楽しんできました」と結びました。
 質疑応答では「研究というけれど、写真を見ると土木工事のようなことばかり。どれだけの体力が必要なのですか」「研究は『辛い』『楽しい』とどちらの方が多かったでしょうか」「なぜ研究を諦めずに続けて来れたのですか」など多くの質問が出され、梶田所長が一つ一つ丁寧に回答しました。
 また、小学生から出された「ニュートリノはどれくらい軽いんですか」「ニュートリノが何でも通り抜けやすいというのはなぜですか」という質問には、小学生にもわかる言葉を選びながら、語りかけるように説明する場面もありました。

用意した座席は100人を超える参加者で埋め尽くされた
用意した座席は100人を超える参加者で埋め尽くされた

うちゅうラボ「霧箱で宇宙線を見る」「重力波望遠鏡を作ろう」に興奮

 “うちゅうラボ①”「霧箱で見る宇宙からのメッセージ」には連日、多くの子どもたちが訪れました。宇宙線についての説明をした大学院生の「せっかく宇宙線研究所に来たんだから、ぜひ宇宙線を見つけていってください」という呼びかけに、霧箱の中を懐中電灯で照らし、宇宙線やランタンの芯からの放射線を熱心に探索。見つけると、「いま見えたよ」「すごい」などの歓声があがりました。
初日だけ行われた”うちゅうラボ②”「重力波望遠鏡を作ろう」には、大学見学で訪れた高校生らがグループを作って参加。計10グループほどが重力波望遠鏡のキットを机上で組み上げ、大学院生らの助けを借りて、二つの経路を通った光が干渉するように調整。スマホの音楽で鏡を振動させ、検出器につないだスピーカーから音を出すのに成功すると「完成したね」「やったー」などと満足そうにうなずいていました。

霧箱の中を懐中電灯で照らし、宇宙線を探す親子
霧箱の中を懐中電灯で照らし、宇宙線を探す親子
グループで実験用の干渉計を組み立てる高校生ら
グループで実験用の干渉計を組み立てる高校生ら

1階テント内のパズル、ペーパークラフトにも参加者

 1階テント内に設けられたパズルコーナーには300ピースに加え、500ピースコーナーも登場し、訪れた人たちがパズルに挑戦。一人では完了できなかった500ピースも、前の人が組み上げたところから継続して取り組み、1日目夕方にはとうとう一つが完成しました。

スーパーカミオカンデのパズルに挑戦する参加者
スーパーカミオカンデのパズルに挑戦する参加者

バーチャル・リアリティ(VR)体験コーナーも大人気

 前年に引き続き、設置されたVR体験コーナーには、神岡鉱山(スーパーカミオカンデ、KAGRA、XMASS)以外にも、スーパーカミオカンデのタンク内の写真と、チェレンコフガンマ線望遠鏡(CTA)南半球サイトのCG映像が加わり、盛りだくさんの内容に。午前10時から配布を始めた整理券はすぐになくなり、座席は常に参加者で埋まっていました。

VRゴーグルで3Dの実験装置を堪能する参加者
VRゴーグルで3Dの実験装置を堪能する参加者

うちゅうの展示コーナー 研究者が丁寧に説明

 研究所のプロジェクトについて、パネルや模型などで説明するうちゅうの展示コーナー(6階)では、研究者たちが交代でパネル前に立ち、訪れた参加者にプロジェクトについて説明。展示に興味をそそられて立ち寄り、熱心に聞き入る家族連れの姿も見られました。

最高エネルギー宇宙線のプロジェクトを模型などで紹介する研究者
最高エネルギー宇宙線のプロジェクトを模型などで紹介する研究者
説明を聞きながら、重力波KAGRAのパネルを見学する参加者
説明を聞きながら、重力波KAGRAのパネルを見学する参加者
巨大な鏡を展示したCTAのコーナーに立ち寄る参加者
巨大な鏡を展示したCTAのコーナーに立ち寄る参加者
宇宙線に反応するスパークチェンバーに興味を示す参加者も
宇宙線に反応するスパークチェンバーに興味を示す参加者も