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宇宙線研究所

私と研究、そして未来 若手研究者インタビューInterview

チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ 助教 辻直美さん

CEO
多波長観測で紐解く宇宙線起源の謎

我々の天の川銀河で作られている宇宙線の最高エネルギーがKneeと呼ばれる10の15乗eVのところなんですけど、それが宇宙のどこでどのように作られたか分かってなくて、その起源に興味があります。基本的には天の川銀河系内の天体を対象として研究をしてきました。宇宙線を作るような天体は、高エネルギーの光、ガンマ線を出しますので、ガンマ線を出している天体が見つかったら、それが宇宙線を作り出す可能性が高いです。超新星残骸、ブラックホール、パルサー風星雲、いろんな天体が銀河系内にあってガンマ線を出していて、興味を持ってこれまでやってきています。よくわかってないガンマ線天体が結構半分くらいあるんですよ。超新星残骸か、ブラックホールかも分からないガンマ線天体を、ガンマ線だけではなくX線とか、野辺山の電波望遠鏡とか、別のいろんな望遠鏡を組み合わせてやることで何なのかを突き止めると、宇宙線を作り出してる天体の何割が超新星残骸で何割がブラックホールと、その内訳が分かってくるので。他の人に比べると、色々な天体かつ色々な波長をやってきたのが、自分の研究の特徴かなと思っています。
長年、超新星残骸で宇宙線を作られていると考えられてきたんですけど、最近のガンマ線の結果から、どうも10の15乗eVまでは超新星残骸では作れなさそうと分かってきて、じゃあ誰が作ってるのかというと、またそれも新しいガンマ線の結果からブラックホールが出すジェットなのではないかというのが、ここ2、3年で分かってきた最新の結果です。ブラックホール自体は電波とかX線でよく研究されているんですけど、ガンマ線を出している外側のジェットのところは研究が全く進んでなかったので、そこをX線や電波、ガンマ線望遠鏡も使って一緒にやって、粒子加速のもっと詳しいところや、本当にブラックホールジェットで、10の15乗eVの銀河宇宙線最高エネルギーが作り出せるのかっていうのがホットトピックで、そこを今やってますね。新しいX線観測プロポーザルを書いたり、電波望遠鏡とかを使って新しい観測データがたくさん取れてきているので、その課題の解明に繋がると思っています。
宇宙線は徐々に加速されていきます。最初は低エネルギーから始まって、超新星残骸の周りに衝撃波ができると、それを行ったり来たりしながら粒子が加速されていく衝撃波加速というメカニズムがあります。それが標準的な加速の理論なんですけど、それがブラックホールのジェットでどう起きているか、まだ全然わかってないので、そのあたりをもっと観測的にわかってくるといいかなと。

高エネルギー天文分野に進んだきっかけ

父が機械工学系の大学教授なんですけれども、昔からあまり抵抗なくて親も博士課程に進学することに反対とか全くなかったです。割と小さい頃からなんとなくその道を歩くっていうか。 この分野に進もうと思ったのは、2014年に宇宙線研のスプリングスクールに参加して、その時は佐川さんの最高エネルギー宇宙線のところに。立教大学で研究室どうしようか、X線天文学と「はやぶさ」などの地球惑星系とで迷ってたんですけど、宇宙線研のスプリングスクールに参加して、高エネルギー天文学面白そうだなと思ってX線天文学に。東大受験も考えたんですけど、立教のX線の研究室の先生がアメリカから帰って来たばかりの若手で、エネルギッシュでやる気があって、この人の下でやったら楽しそうでいいなと(笑)。それがきっかけですよね。それで面白かったので、今までずっと続けてます。学生の時はガンマ線を出している超新星残骸をX線で観測してましたが、基本的に興味は今と同じで、超新星残骸をX線で観測して膨張速度を測定することによって、粒子加速のメカニズムに繋がるような研究をしていました。

科研費で進める多波長観測

今年度、学術変革(A)の公募研究に採択されました。ペタ電子程度の宇宙線の加速現場として「ペバトロン」が注目されるようになってきたので、電波、X線、ガンマ線、さらにはニュートリノを組み合わせたマルチメッセンジャー観測を行って、新たな銀河宇宙線の加速器と目されるマイクロクエーサーでの粒子加速機構の解明を目指しています。公募研究では2回目の採択で、前回は百万円で出したんです。私は基本的にデータ解析なので、実験の開発に比べると研究費はそんなにかからない方なんです。百万から入ってみて結構うまくいったので、今回ちょっと大きく三百万の方にトライして、前回のテーマをもとに拡張させて申請しました。電波の野辺山望遠鏡が観測にお金がかかるようになって、お金があれば観測できるのでそれに充てました。X線だとプロポーザルを書いて観測計画を出して採択されるとデータを取ってもらえるんですけど、競争率は結構高くて6~7件に1件ぐらいしか当たらない。野辺山も昔はそうだったんですけど、最近方針が変わって一時間一万円で使えるようになった。野辺山には一度行きましたが、基本的に大学や家からリモートで出来ます。
H.E.S.S.のコラボレーターにもなっていて、昨年はブラックホール連星「V4641 Sgr」から放出される超高エネルギーガンマ線を観測・分析して、銀河系内で最高エネルギーの宇宙線を生み出す供給源になり得ることを示す論文をまとめたりしました。H.E.S.S.はアフリカにありますが、コロナ以降リモートでできるようになりまして。ナミビアという南半球にあるので、CTAでは見えない南の星が見えるのでどっちもやることが重要です。CTAもいずれは南にできるっていう話ですよね。

これまでの科研費申請経験を振り返って

研究活動スタート支援や若手も取りましたが、科研費は自分の好きなように使えて国際会議も行けますし、野辺山のデータも買えたりするので、研究には繋がりますね。その書類をどう書くかは、結構難しいと思いますね。コツみたいなのはある気がします。やっぱり綺麗な図を作るとか、あと表が結構効果的に入っていると通りやすいかなと。プロポーザルでもそうなんですけど、こういうデータがあって、今までどこを取ってきてここだけ取れてません、なのでここ取りたいですみたいな、例えばそういう表とか。あとタイムラインっていうんですかね、今ここをCTAが走っててH.E.S.S.がここ走っててここに向かっていくから今これをしますみたいな、そういう表とかがあると、よかったりします。図はもちろんですけれど、そういう表があるといい。 日本語の書き方とか文章の書き方もやっぱりある気がします。私は全部一気にダアーッと書くんじゃなくて、書く前にどういう骨組みで書いて、まず一章何を書く、二章何を書くって大まかに決めて、更にサブセクションで何を書いて、このパラグラフでは何を書くかまで決めてから文章を書くようにしてて、その骨組みが出来るのがもう半分くらいだと思ってます。この構成は、多分もう慣れなんでしょうけど、なかなか学生の時に教えてもらう機会がなかったような気がします。あと一回寝かすっていうのも大事だなと思います。二週間前くらいから図を作ったり、骨格は決めて、一週間前には初版の文章はできて、それを直しつつ他の人に見てもらったりしてる間に二、三日寝かせて見てみると、やっぱここ違うなということがあります。それは大事かもしれないですね。どうしてもギリギリでやってると気づかないまま、できたらこれでいいなってなってしまう。

共同研究者との連携について

この分野でアメリカの人と一緒にやったり、H.E.S.S.のヨーロッパの人と一緒にやったりするようになって知り合いがどんどん増えてきたんですけど、プロポーザル応募や新しいプロジェクトを始めるにはどういうチームを組んでやっていくかがすごく大事です。仕事を一緒にやっていくうちに、この人はどの程度ちゃんとタスクをこなしてくれるか、どれだけ自分のビジョンを持ってやっているかは分かってきます。人を「解析する」のも大事だと最近学びました。自分がやりやすくて、ストレスフリーで気持ちよく、かつ効率的にプロダクティブに進むようなチーム作りみたいなのをすごい気をつけています。誰とやるかって最近重要ですね。
あと共同研究者が増えるのはとても良いことではあるのですけど、人が増えすぎるとコントロールが難しくなる面もあります。CTAもすごく大きいコラボレーションじゃないですか。自分だけの意見では通らないというか、そこがちょっと難しいですね、今の課題な気がします。自分がこうしたいと思っても、プロジェクトの方針とかで動くときがあって、それをどうしたらいいかはちょっと分かんないです。大きいコラボレーションであればあるほど、いろんな人がいますし。多分ある程度経験とか実績を積みながら説得力を出さないといけないと思います。

今後の研究の進め方、今後挑戦してみたいこと

宇宙線研の研究環境はとても良いと感じています。研究者も多いですし、研究費のサポートもありますし、秘書さんに言えば全部やってくださるので事務的な負担はほとんどないです。アウトリーチもやります、需要があるとは聞くので。4月に一般講演もお引き受けしました。あとオープンキャンパスもありますよね。毎週金曜日のコーヒーブレイクはいいなと思って。神奈川大で授業を持っているのでほとんど参加できてないんですけど、もうちょっと頻繁に、毎日やってくれたらいいなと。
今本当にすごく楽しく研究できてるので、それを続けていきたいなと思っています。いろんなプロジェクトをやっていて、自分だけじゃもう全然回らなくなってきてるので、現役でやりつつ指導してうまく回していければと思ってます。なので学生さんが多いといいんですけどね。
宇宙線研にはいろんなグループがいて、ALPACAは南半球にガンマ線望遠鏡を建てているので今CTA―LSTで見ようとしてる空とは違う所が見えるので、すごく一緒にやっていきたいなと思っています。あとTAの最高エネルギー宇宙線は銀河系外から来てる宇宙線なので天の川銀河系で見えてる宇宙線とはエネルギーが桁で違うんですけど、銀河系外の最高エネルギー宇宙線を作り出してるものも、AGNという巨大なブラックホールが中心にある活動銀河核、巨大なブラックホールが中心にあってジェット出しているような銀河系外にある天体だと言われてるので、結局、私がやってる銀河系内のブラックホールジェットとその活動銀河核のジェットと、粒子加速のメカニズムの機構はもしかしたら同じかもしれないので、そういう共通点を持ってできたらいいなと思っています。


科研費と私 過去

     
2024年インタビュー2
神岡宇宙素粒子研究施設 特任助教(応募採択時) 中野佑樹さん
(2024年4月より富山大学学術研究部理学系助教)
2024年インタビュー1
観測的宇宙論グループ 助教 播金 優一さん
2023年インタビュー
重力波観測研究施設 兼 高エネルギー天体グループ 助教 川口 恭平さん
現マックス・プランク物理学研究所Senior Scientist
2022年インタビュー
神岡宇宙素粒子研究施設 特任准教授 平出 克樹さん(2024年12月准教授に昇任)
2021年インタビュー
理論グループ 准教授 伊部 昌宏さん(2026年4月教授に昇任)
2020年インタビュー
TA 兼 チベットグループ 助教 川田 和正さん(2024年9月准教授に昇任)
2019年インタビュー
神岡宇宙素粒子研究施設 助教 竹田 敦さん(2020年2月准教授に昇任)
2018年インタビュー
観測的宇宙論グループ 准教授 大内正己さん
(2019年8月より宇宙線研究所と国立天文台のクロスアポイントメント教授)
2017年インタビュー
チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ 助教 大石理子さん、特任助教 齋藤隆之さん
(齋藤さんは2024年4月准教授に昇任)
2016年インタビュー
神岡宇宙素粒子研究施設 准教授 関谷洋之さん
2015年インタビュー
重力波推進室助教 山元一広さん(2017年2月より富山大学理学部物理学科准教授)

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