LIGO-Virgoの発表を受けての梶田所長のコメント

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メッセージ

 連星中性子星合体による重力波の観測は、ブラックホール連星の合体の信号と共に、重力波観測の最初の目的の一つでした。今回のLIGOとVIRGOによる連星中性子星合体による重力波の観測は素晴らしい成果だと思います。このような成果を出されたLIGOとVIRGOチームを祝福いたします。

 また、ガンマ線バーストと同時観測されたことで、この連星中性子星合体がショートガンマ線バーストを発生させたことが分かりました。LIGOとVIRGOの3台の検出器を用いることで方向の決定精度が向上し、その結果、光学望遠鏡による追観測による光学対応天体の発見と母銀河の同定に成功したことは、まさに重力波天文学の始まりを告げるものといえるでしょう。今後連星中性子星合体を多数観測することで、様々な天文学的、天体物理学的研究(*)が更に発展していくと思いますので、KAGRA としても可能な限り早く装置の建設と調整を終え、観測に入りたいと思っています。

(*)例えば:

1)連星中性子星の合体直前には、星同士の潮汐効果が軌道進化に影響を与えますが、その潮汐効果は中性子星の状態方程式によって変わるため、重力波波形の詳細な解析により潮汐効果を通じて状態方程式の情報が得られます。今回の観測でも既に制限がされましたが、今後多くの観測データを集めることで更に情報が得られ、原子核物理学の発展にもつながると考えられます。また、連星中性子星合体の後、ブラックホールが生まれますが、この際に合体直後に直接ブラックホールになるのか、一時的に重い中性子星を経由してブラックホールになるのかなど、元々の連星中性子星の質量をいろいろ測定しながら調べることでも、中性子星の状態方程式の情報が得られるものと期待されます。

2)そもそも連星中性子星の合体頻度はよくわかっていませんでした。今後は連星中性子星の合体の事象をたくさん観測して、合体頻度を精度よく測定することが重要です。それにより,連星中性子星の形成過程解明が進むと考えられます。

3)ショートガンマ線バーストの発生源は連星中性子星の合体と考えられていました。今回のガンマ線との同時観測はそれと基本的に矛盾がないようです。今後は、重力波による連星中性子星合体の観測とガンマ線衛星などによるショートガンマ線バーストの観測例を増やすことで、ガンマ線バーストからのガンマ線の放射機構の解明などを進めていく必要があると考えています。

KAGRAプロジェクト代表 東京大学宇宙線研究所長 梶田 隆章