【トピックス】乗鞍観測所が「乗鞍WEEK」に参加 16年ぶりの一般見学会も実施

トピックス

瀧田所長が乗鞍バスターミナルで講演

 宇宙線研究所乗鞍観測所の所長でもある瀧田正人教授が2019年8月27日、岐阜県高山市畳平の乗鞍バスターミナルで「乗鞍観測所のご紹介」と題して講演、続く午後には乗鞍観測所の一般見学会も行われました。一般見学会は、同観測所が50周年を迎えた2003年に行われて以来、16年ぶりとなります。

乗鞍バスターミナルで行われた瀧田所長の講演会

 本イベントは、岐阜県が乗鞍岳の魅力を知ってもらう目的で、8月22日から31日まで開催した観光イベント「乗鞍WEEK」の一環で、1953年から乗鞍に観測所を置く宇宙線研究所も、山小屋や宿泊施設とともに、イベントに協力しました。

登山客や関係者など20人が参加

 乗鞍バスターミナル2階の食堂で開かれた講演会には、事前に応募して訪れた登山客や関係者など約20人が参加。瀧田教授/観測所長は「宇宙線とは、宇宙から地球に絶えず高速で降り注いでいる原子核や素粒子のことです」と説明した後、その観測をしてきた66年の歴史を概観しました。大阪市立大学など四つの機関が朝日新聞の学術奨励金を受け、標高2770メートルの室堂ケ原に「朝日の小屋」を建設したことがきっかけとなり、全国の宇宙線研究者の強い要望で、施設の共同利用を目的とした東京大学宇宙線観測所(現在の乗鞍観測所)が同じ場所に建設された経緯を説明。その上で、初期の研究が超高エネルギー領域での素粒子・原子核反応で、高圧水素霧箱や空気シャワー観測装置、大型エマルションチェンバーなどが設置されて様々な実験が行われ、成果を上げてきたことを、当時の写真を示しながら紹介しました。さらに、山頂での観測態勢を維持するため、電気、ガス、水道、通信、道路などのインフラを独自に整備してきたこと、2004年11月に冬季自動運転が実現するまで、スタッフが雪深い冬にも泊まり込み、施設を管理してきたことなどにも触れました。

乗鞍観測所について紹介する瀧田所長

 瀧田教授/観測所長はまた、今年度に採択され、乗鞍観測所を拠点に実施中の九つの共同研究課題を紹介。その中から、①名古屋大による太陽中性子観測による太陽活動についての研究、②日本大学などによる雷雲中での二次宇宙線の加速についての研究、③信州大学が行うミューオン強度の精密測定を用いた宇宙天気予報について——の三つの状況について、詳しく説明しました。

 瀧田教授/観測所長は「乗鞍観測所でやっていることは、このように基礎科学の分野であり、すぐにお金になるとか、役に立つというわけではありませんが、梶田隆章所長の言葉を借りれば、『私たちの知りたいという欲求を満たし、人類の知の地平線を拓く』という意味があります。今後とも観測所をよろしくお願い致します」と結びました。

乗鞍観測所で16年ぶりの一般見学会

一般見学会で説明する信州大学の加藤千尋教授、木原渉さん(修士1年)
瀧田所長の案内で太陽中性子の観測施設を見学する参加者たち

 集まった登山客らは同日午後、乗鞍バスターミナルから徒歩30-40分の距離にある乗鞍観測所まで歩き、16年ぶりに開かれた一般見学会に参加。瀧田教授/観測所長や研究者たちの案内で、赤いトタン屋根の建物内にある太陽中性子望遠鏡、宇宙天気予報に使われる多方向ミューオン計の検出器、さらに雷雲による二次宇宙線加速について調べるために屋外に設置された大気電界計、ガンマ線検出器、シンチレーション検出器などを見学しました。

宇宙線の観測装置が多数設置された乗鞍観測所

関連リンク

東京大学宇宙線研究所の公式ページ
乗鞍観測所の公式ページ