観測的宇宙論グループの大内正己准教授がこのほど、第15回(平成30年度)日本学士院学術奨励賞を受賞したことがわかりました。優れた研究成果をあげ、今後の活躍が特に期待される若手研究者に対して贈られるもので、昨年12月末に発表された第15回日本学術振興賞の受賞者25人の中から選ばれた6人のうちの1人です。日本学士院学術奨励賞についても、東京大学宇宙線研究所からの受賞者は初めてとなります。
受賞理由は日本学術振興賞と同様、「ライマン・アルファ放射体を用いた初期宇宙の観測研究」ですが、大内准教授の業績について、日本学士院のホームページでは以下のように詳しく紹介しています。
「宇宙初期の天体は宇宙膨張によりその発する光は大きく赤方に偏移しています。大内正己氏は大きく赤方偏移した水素のライマン・アルファ輝線で輝く天体(LAE)に着目し、この輝線を効率的に検出するための狭帯域フィルターを用いて、すばる望遠鏡で探査を行いました。大内氏の観測は、誕生後10億年の宇宙ですでに銀河団などの大構造が存在していること、予想される物質の分布と異なる銀河の不均質分布があったことを示しています。同氏はさらに、誕生から8億年頃の宇宙に「ヒミコ」と名付けた非常に巨大なLAEとなる銀河を発見しています。このような特異な銀河が銀河形成初期にあったことは驚くべきことで、学界に大きなインパクトを与えました。今、LAEの探査により作成された初期宇宙の地図は、構造形成・銀河形成を理解する基本的で重要なデータとなっています。次世代広視野観測装置を用いた国際的研究の指導者となっている同氏は、今後も初期宇宙銀河研究の発展に大きく貢献するものと期待されます。」(日本学士院ホームページより抜粋)
授賞式は2月7日、日本学士院(東京都台東区)で予定される、日本学術振興会賞の授賞式の中で行われる予定です。