ニュートリノについて

特集

ニュートリノってなに?

ニュートリノについて

ニュートリノっていうのはとっても不思議な粒子。
宇宙には数え切れないくらい一杯お星様がある。その全部のお星様を、分子から原子、原子から素粒子、と究極までバラバラの粒子にして数えると、ものすごい数になる。でも、ニュートリノは、その1億倍もあるんだよ。この宇宙は、本当はお星様でなくてニュートリノで一杯なんだ。
宇宙にこんなに一杯あるのにまだ良く分かっていないから、ニュートリノを調べることはとっても大事。だって一杯あるもののことが分からなかったら、宇宙のことも物質のことも分かったことにはならないでしょ。

ニュートリノについて

もともとニュートリノは、1930年にオーストリアのパウリという学者が「ものすごく小さくて電気を帯びていない粒子があれば、物理学のつじつまが合うのだけれど」と、仮に考えた粒子。その考えがとても魅力的だったので科学者はニュートリノの存在を信じたけれど、本物が見つかったのは1956年のことだった。アメリカのライネスという学者が、膨大な数のニュートリノが生まれている原子炉のそばで実験して見つけたんだ。そして1980年代になって、もっとたくさんのニュートリノがつかまえられるようになり、やっと研究が進み始めたんだよ。

ニュートリノの不思議さ

ニュートリノは孤独

ニュートリノについて

お星様や私たちの身体といった物質を究極までバラバラにすると、たった3種類の粒子になる。では物質の粒子はこれだけかというとそうではなくて、もう一つある。それがニュートリノなんだ。物質の粒子なのに現実の物質を作らないなんて変な粒子だよね。
ニュートリノがどうして現実の物質を作れないかというと、電気を帯びていないからなんだ。物質の他の基本粒子は何段階にも階層をなして結びついて物質を作ってゆくのに、いくらたくさなってもニュートリノはバラバラ。ニュートリノはひとりぼっちなんだよ。

ニュートリノの小ささ

ニュートリノって本当に小さいんだよ。高性能電子顕微鏡でも全然見えない、とても小さい原子。その原子の中心にある原子核は、東京23区の中心にサッカーボールを置いた位小さい。ところがその原子核の粒の一つの陽子とニュートリノを比べると、地球と米粒とを比べるみたいに小さいんだ。ニュートリノがどんなに小さいか、君に想像できるかな。

ニュートリノについて

ニュートリノは3兄弟

ニュートリノについて

物質の基礎粒子は皆3兄弟。だからニュートリノも3兄弟なんだ。物質の基本粒子は似ているものどうし2つのグループにわかれていて、ニュートリノは電子と、レプトンというグループを作っている。電気を帯びていることと少し重いことを除けば、電子はニュートリノにとてもよく似ている。だから電子の3兄弟の名前をもらって、それぞれのニュートリノに「電子ニュートリノ」「ミューニュートリノ」「タウニュートリノ」という名前を付けたんだよ。

ニュートリノの捕まえにくさ

ニュートリノはすごく小さいから、なんでもスイスイ通り抜けてゆく。だからニュートリノを捕まえるのはとても大変。例えば太陽から地上にやってくるニュートリノは、1平方cmに毎秒660億個。だから、直径40m 高さ40mの水タンクにやって来る数は膨大なものになる。でもその内で捕まえられるのはたった10個くらいなんだ。太陽から来るニュートリノを全部捕まえようと思ったら、水を40光年位の厚さに並べなければならないんだよ。

ニュートリノの体重

ずっと長い間、ニュートリノには重さがないと考えられてきた。ところが1998年に日本のスーパーカミオカンデが、ニュートリノの体重はゆらりゆらりと2つの重さの間で変化を続けていることを見つけ、これがニュートリノに重さがある決定的証拠となった。
物質の基本粒子の3兄弟は体重の違い。だからニュートリノは兄になったり弟になったり変化していることになる。不思議だよね。
これは大変な発見だった。物理学は大前提を崩され、始めから考え直さなければならなくなった。それに、とてもたくさんあるニュートリノに重さがあると、宇宙全体の重さに影響してくる。宇宙全体の重さは宇宙の運命の鍵を握っているのでとても重要なんだ。

ニュートリノは情報伝達人

いくら高性能の光学望遠鏡で覗いてもお星様の表面のことしか分からないけれど、飛んできたニュートリノに聞けばお星様の内部のことが分かる。いくら高性能の光学望遠鏡でも、暗黒星雲の向こう側は見えないけれど、ニュートリノは暗黒星雲なんてへっちゃらで通り抜けて飛んでくる。
ニュートリノなら超新星爆発だって望遠鏡より早く見つけられる。第一、超新星爆発のエネルギーの99%を持ち出すのはニュートリノなんだよ。太陽も、内部の核融合活動が表面に現れて輝くのに10万年かかるので、望遠鏡で見ていたら、10万年前の活動のことしか分からないけれど、ニュートリノなら中心から真っ直ぐ飛び出してくるから、8分後には現在の活動状況が分かる。
ニュートリノは、磁場の影響を受けずに何でも突き抜けてまっすぐに飛ぶので、逆にたどれば生まれたところが分かるし、飛んでいる途中で他からの影響を受けないから、生まれたところの情報をそのまま持っている。だからニュートリノの情報を集めれば、宇宙や物質のことがもっと分かってくる。ニュートリノは情報伝達人なんだよ。

ニュートリノのつかまえ方

ニュートリノはいろいろなところで生まれるんだよ。一番たくさん生まれたのはビッグバンのときのはずなんだけど、このニュートリノはエネルギーが弱すぎて捕まえられないんだ。超新星爆発ではニュートリノがいっぺんに大量に生まれるし、太陽などの輝く星からはいつもニュートリノがやって来ているし、宇宙線が大気中に飛び込んだときにもニュートリノが生まれる。その他、原子力発電所でも生まれるし、加速器で人工的に作ることもできる。
電気を帯びていないニュートリノをつかまえるには、ニュートリノが電気を帯びた物にぶつかって反応を起こすのを待つんだよ。ぶつかるものは出来るだけたくさんあった方がよいので、大きなタンクを作って物質をたくさん入れる。また、地上では、もっと大きな反応を起こす粒子がたくさん飛びかっているけど、地下だとこれらの粒子が途中の岩に吸収されて少なくなるので、地下に潜って実験をするんだ。

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