チェレンコフ宇宙ガンマ線グループの阿部正太郎さん、日本物理学会若手奨励賞を受賞

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 チェレンコフ宇宙ガンマ線グループに所属する学振研究員(日本学術振興会特別研究員PD)である阿部正太郎さんがこのたび、第20回日本物理学会若手奨励賞(宇宙線・宇宙物理領域)を受賞しました。

 本賞は、将来の物理学を担う優秀な若手研究者を支援し、学会の活性化を図るため、日本物理学会が2006年に設置したものです。 受賞者は物理学会の各領域ごとに選出し、総数は概ね50名以下です。今回、宇宙線・宇宙物理領域では合計3名が選出されました。 選考は各領域の判断に基づき、学会講演・学術論文・学位論文など、本賞の趣旨に沿う業績を対象としています。

 LST (Large-Sized Telescope) は次世代ガンマ線天文台 Cherenkov Telescope Array Observatory (CTAO) に向けた解像型大気チェレンコフ望遠鏡です。 初号機 LST-1 はカナリア諸島ラ・パルマ島にあるCTAO北半球サイトに2018年に竣成し、現在同観測サイトに残る3台の建設を進めています。 阿部研究員は、2020年4月に東京大学宇宙線研究所・チェレンコフ宇宙ガンマ線グループに修士学生として入学し、2025年3月に博士課程を修了、現在は同グループで学振研究員として研究を続けています。 入学当初から LST コラボレーションに参加し、特に LST-1 を用いた天の川銀河中心領域の先駆的観測研究では、国際チームを統率するプロジェクト代表者として主導的役割を担ってきました。

 阿部研究員の研究の焦点は、暗黒物質(ダークマター)の謎の解明、そしてペタ電子ボルト (PeV) という高エネルギー粒子を生成する宇宙加速器「ペバトロン」の特定にあります。 現代宇宙物理学の双柱をなすこれらの最重要課題を解き明かすために、大天頂角観測法・広視野解析技法の開発を推進しました。 どちらの観測技法・解析技術も難易度の高さから敬遠されることも多いものの、阿部研究員はその可能性・重要性にいち早く焦点を当て、実装・高度化に果敢に挑戦しました。 当初は実現性や有効性に内部の専門家ですら懐疑的な見解もあったところを、その先入観を根底から覆し、世界最高水準の広視野・高感度観測を実現させることに成功させました。 この技術的基盤のもとに、国際的に様々な共同研究者を集めながら、LST-1 による天の川銀河中心からの超高エネルギーガンマ線観測プロジェクトを強力に推し進めました。 結果、銀河中心リッジと呼ばれる200パーセク程度に広がる領域からのガンマ線放射を高感度で検出することに成功しました。 特に、ぺバトロン問題に新たな物理的示唆を与えうる結果として、拡散ガンマ線放射スペクトルに空間的な非一様性が存在する可能性を観測的に世界で初めて指摘しました。 また暗黒物質探索では、エネルギースペクトル限界の「鋭さ」に着目することによって、LSTアレイによって暗黒物質シナリオと他の天体物理モデルを有意に識別できる可能性をシミュレーションで示し、CTAOとしては完成前の中間構成段階で得られる物理を具体化しました。 以上のような、宇宙物理学の根源的な謎に迫る研究成果、固定観念や従来の限界を突破する未来志向の構想力、および国際的な枠組みで研究を舵取るリーダーシップが高く認められました。

 阿部さんは「この度、日本物理学会若手奨励賞という栄誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。 本受賞は、研究所の皆さんからの継続的な支援、そして高度な研究環境でのご指導・ご鞭撻の賜物です。 特に、指導教員として多方面にわたりご助言・ご支援くださった窪秀利先生、手嶋政廣先生に改めて深く感謝申し上げます。 今回の受賞によって、次世代望遠鏡が持つ高エネルギー宇宙探索の可能性を改めて示すことができたと誇りに思うと同時に、CTAOやLSTが担う未来への期待感が大きいことを改めて強く感じています。 今後も責任ある立場として、研究をさらに深化させより価値ある成果を発信できるよう、邁進していく所存です。」とコメントしています。

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