宇宙線研究所におけるファカルティ・デベロップメントの報告

お知らせ(イベント)

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宇宙線研究所では、平成24年4月24日にファカルティー・デベロップメント(FD)を行いました。
これは宇宙線研究所としては初の試みです。
FDとは、教員の質的向上を目指した講習会のようなもので、内容も多岐に亘ります。
大学教員が行う学生指導は、研究指導のみに留まらず、学生の様々な面のサポートに及びます。
FDには、それらを各教員の裁量のみに任せるのではなく、一定レベル以上の指導能力を全教員が持てるように全体のレベルの底上げを行い、学生にとって学び易く研究のし易い環境を提供出来るようにしようという狙いがあります。
今回宇宙線研究所で行ったFDの内容は、学生の不適応、に焦点が当てられました。
つまり、学生が研究環境に馴染めず、何らかの具体的な事象、例えば鬱病の発症等に発展したものを学生の不適応と言います。
まず、学生の不適応とは何か?から始まり、学生からのSOSサインの察知、察知後の対応の具体的事例、そして学生への普段からの接し方等を、東京大学理学系研究科・理学部の学生支援室の相談員が分かり易く解説しました。
また、それに加えて学内で教員をサポートする援助リソースが存在しているということを紹介されました。
これらに関して、あまり知る機会が無かった教員も少なくなかったのではないかと思います。
そして指導スタイルごとに分類した詳細な指導方法改善例に加えて、学生の不適応解決手法として評価の高い「提案・選択型コミュニケーション」についての解説が行われ、自身のスタイルに合わせた指導方法の改善に結びつけやすいFDになっていたのではないかと思います。
学生支援室では教員からの相談も受け付けており、教員は学内からサポートをされながら学生指導に関する質的向上に励むことが出来ます。
そのような環境整備を継続的に行われていることは、東京大学の教員、そして東京大学の学生にとって大きなメリットの一つと言えるでしょう。
最後に、当研究所の寺澤敏夫教授より、FDというものが現在大学が社会的に求められているものであるということの解説がありました。
科学研究費の増大とともに、科学者に対して様々な社会的要求が発生している等、一般的に良く言われていることを、きちんとしたデータに基づいて解説される機会はそれほど多くないので、参加していた教員にとっても印象的な話だったのではないかと思います。
加えて、科学者が持つべき倫理の問題にも触れられており、個々人が問題意識を持てるように話が進められました。
特に、論文等のねつ造・改ざん・盗用等に関しては、一部具体的事例も交えられており、積極的に質問が出ていたのも印象的でした。
出席していた教員一同、社会に対してどのような責任を持たなければならないのかを改めて実感したFDになっていたと思います。
今後宇宙線研究所では、FDを毎年定期的に行うことで、更なる教員の質的向上を目指します。
今後とも宇宙線研究所、そして東京大学の取り組みを見守って頂ければと思います。