観測的宇宙論グループの影浦優太さん(M2) 第55回天文・天体物理若手夏の学校でオーラルアワードを受賞

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 観測的宇宙論グループの影浦優太さん(M2)が7月下旬、長野県千曲市で開催された「第55回天文·天体物理若手夏の学校」に参加し、銀河・銀河団の部でオーラルアワード(2位)を受賞しました。

オーラルアワードを受賞した影浦さん

 天文・天体物理若手夏の学校は、天文・天体物理学を専攻する若手研究者が自ら企画する若手研究者のための研究会で、今回で55回目です。今年は長野県千曲市の上山田温泉のホテルで7月28-31日まで開催され、全国の大学からM1からD2までの大学院生300人以上が、太陽・恒星、コンパクト天体、星間現象/星・惑星形成、素粒子・重力・宇宙論、観測機器、銀河・銀河団の6部門に分かれた講演・ポスター発表の枠にエントリーしました。

 ビッグバンの後、宇宙の晴れ上がりによって宇宙は中性水素で満たされましたが、その後天体からの紫外線によって中性水素は電離され、現在の宇宙は電離水素で満ちていいます。この過程が宇宙再電離と呼ばれ、影浦さんは、その進行ペース(再電離史)や再電離を引き起こした天体(再電離源)を主要な研究テーマとしています。影浦さんら観測的宇宙論グループは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡により分光観測されたz=5-14の銀河586個のLyα輝線の強度を測定。Lyα輝線は中性水素に吸収されるため、さまざまな距離にある銀河のLyα輝線を調べることで、宇宙再電離史を詳しく知ることができます。影浦さんを主著者に、米国の天文学誌The Astrophysical Jornalに初めて掲載された論文では、Lyα輝線が高赤方偏移にいくほど減少することを確認したのに加え、宇宙論シミュレーションとの比較から、宇宙の中性水素割合をz=6, 7, 8-9, 10-14においてそれぞれ、<40%、63±23%、79±17%、88±12%と推定しました。これらの結果は、z~15からゆっくりと再電離が進む標準的な理論モデルとは異なり、再電離がz~7ごろに急速に進む「遅い再電離」の可能性を示しています。

 影浦さんは30日、銀河・銀河団のセッションで、論文で得られた成果を「z=5-14のLyα輝線観測で探る宇宙再電離史」と題して講演。参加者の投票の結果、オーラルアワード(2位)に選ばれました。影浦さんは「初めて論文にまとめることができた成果を何とか伝え、理論を研究する学生にも興味を持ってもらえたことが嬉しいです。z〜7ころに急速に再電離を進めた再電離源は、例えば活動銀河核(AGN)などが考えられ、すばるPFSなどの観測で両者の関与がわかれば面白いと思います」とワクワクした表情で語りました。

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第55回天文·天体物理若手夏の学校