スーパーカミオカンデ観測開始20周年記念行事を開催しました

お知らせ(イベント)

世界最大の地下ニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ(SK)」は、1996年4月1日に観測を開始してから今年で20年を迎えました。大気ニュートリノ振動の発見や太陽ニュートリノ振動の発見、世界に先駆けて実施された加速器を用いて人工的に生成したニュートリノビームを使った「長基線実験」――。数多くのエキサイティングな発見があり、非常に活気に満ち溢れた20年間でした。

2009年に始まったT2K(Tokai to Kamioka)実験では、2011年にミューニュートリノビームから電子ニュートリノが出現する事象を発見し、第3の振動モードの存在を示しました。この20年間は、SKが世界の先陣を切ってニュートリノ振動の全貌を解明してきた期間と言っても過言ではありません。

SKの観測開始20週年を記念したシンポジウムと祝賀会が6月17日、富山県で開かれました。会場には、これまでのSKを使った研究に関わった研究者が、日本、アメリカ、ポーランド、韓国、中国、スペイン、カナダ、イギリスの8カ国から130人が集結。また、地元の自治体やSKの建設に関わった企業、大学などの関係者ら120人も合わせて250人が参加しました。

シンポジウムでは東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長が登壇し、「20年間、ニュートリノ研究を進められたのは関係者の協力あってこそ。心から感謝している。スーパーカミオカンデは、ニュートリノ物理学が大きく変化する原動力となった。科学は予想もしなかったことが起きる。若い人たちにも果敢にチャレンジしてほしい」などとあいさつ。その後、小松弥生文部科学省研究振興局長、アメリカ合衆国エネルギー省Alan Stone代理のJames Stone教授からご挨拶をいただきました。

その後は、スーパーカミオカンデ共同研究者らがこれまでの20年間のスーパーカミオカンデの研究成果を発表し、次の目標であるハイパーカミオカンデやスーパーカミオカンデのアップグレードの計画を発表しました。

祝賀会では、五神真東京大学総長の挨拶の後、ご来賓の都竹淳也飛騨市長、岡田安弘高エネルギー加速器研究機構理事からご祝辞をいただきました。その後、掛け声に合わせて樽に木づちを振り下ろし、富山の銘酒をみんなでいただきました。続いて、お世話になった関係者の方や、共同研究者たちから思い出話のスピーチなどがありました。

観測開始から20年という節目に際し、スーパーカミオカンデ実験代表者の中畑雅行教授は、「これまでの20年間、スーパーカミオカンデはニュートリノ振動に関する数々の発見をし、素粒子物理学に大きく貢献してきました。これからもT2K実験のデータ増加などによって更なる素粒子物理学の進展が期待できるとともに、過去の超新星爆発からのニュートリノ観測を通して宇宙観測にも貢献できると思います。」と述べ、また共同代表者の1人であるヘンリー・ソーベル カリフォルニア大学アーバイン校教授は、「スーパーカミオカンデは、世界をリードする研究成果や受賞の栄誉を受けた発見を生み出しただけでなく、新しい世代の実験においてリーダーとなる博士号取得者を約70名輩出してきました。」と述べています。

20年の歩み

1991年12月 空洞掘削開始
1994年6月 空洞掘削完了、検出器の建設開始
1996年4月1日 午前0時ちょうどに観測開始
1998年6月 大気ニュートリノ振動の発見
1999年6月 K2K実験を開始
2001年6月 太陽ニュートリノ振動の発見
2001年11月 光電子増倍管の半数が破損する事故が発生。
      「我々は検出器を再建する。疑問の余地はない」(戸塚洋二先生)
2002年12月 小柴昌俊先生がノーベル物理学賞を受賞
2002年12月 約半数の光電子増倍管で運転を再開
2006年7月 再建作業完了。全ての光電子増倍管で観測を再開
2008年9月 データ収集システムを一新
2009年4月 T2K実験を開始
2011年6月 T2K実験で電子ニュートリノ出現事象の発見
2013年7月 T2K実験で電子ニュートリノ出現事象の観測と測定
2015年11月 ブレークスルー賞を受賞
2015年12月 梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞

Link

[ スーパーカミオカンデの公式ページ ]
[ T2K実験のページ ]