観測的宇宙論グループの中根美七海さん(M2)、柳澤広登さん(M2)の2人が、3月24日、本郷キャンパスの小柴ホールで開かれた学位授与式で、修士課程の学位記とともに研究奨励賞(修士)の表彰状を授与されました。

研究奨励賞は、理学系研究科物理学専攻で修士の学位を授与された104人のうち、学生としての研究に励み、優れた業績を挙げ、他の学生の範となった4人に送られました。
中根さんは、宇宙再電離と元素合成で探る初期宇宙について研究。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データをもとに、Lyα輝線が非検出の銀河も含めたベイズ推定の手法を観測データに適用することで、これまでで最も高い精度でz~10の中性水素割合の測定を行い、遅い再電離史が正しいことを世界に先駆けて示しました。さらに元素合成では、z〜10の初期宇宙におけるO/Feの測定方法を工夫し、予想よりもO/Feが小さく、鉄の多い天体を発見するなど、修士課程で13本の査読付き論文(うち3本が主著者論文。査読中含む)を執筆し、9回の口頭発表を行いました。中根さんは「この度は、理学系研究科研究奨励賞をいただき、大変光栄です。修士課程では、宇宙再電離と遠方銀河の元素組成についての研究を行いました。研究を進めるにあたり、指導や議論をしていただいた大内先生をはじめとする多くの先生や学生の方には大変感謝しています。博士課程でもより一層研究活動に励んでいきたいと思います」と喜びのコメントとともに、今後の抱負を語りました。
柳澤さんは、すばる望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の分光観測データをもとに、遠方銀河における星間物質の物理や化学進化に関する研究を行い、修士課程で8本の査読付き論文(3本が主著者論文。査読中を含む)を執筆。海外など多くの研究会で口頭発表を行い、優秀賞も獲得しました。とくにジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データから、水素輝線比の異常の原因を世界に先駆けて示した研究や、初期宇宙の銀河におけるHe存在比が予想に反して高いことを示した研究は大きな注目を集め、多くの論文で引用がされています。柳澤さんは「この2年間の成果を理学系研究科奨励賞という形で評価していただき、大変光栄です。指導教員の大内先生をはじめ、研究室の先生方のご指導や、学生との切磋琢磨のおかげで大きく成長することができました。また、家族の支えがあったおかげで、研究に専念することができました。このような恵まれた環境で研究ができたことに感謝しながら、博士課程ではより良い研究ができるよう精進していきたいと思います」と抱負を語りました。
