ハイパーカミオカンデ : 光センサー取り付け用の試験フレームを使ったテストが本格化

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 スーパーカミオカンデに続く次世代の大型水チェレンコフ検出器となるハイパーカミオカンデと同じ設計のフレーム(架構)を設置し、光センサーを取り付けるテストが今年度から、東京大学柏キャンパスの宇宙線研究所で本格化しています。

ハイパーカミオカンデと同じ設計の試験フレームへの光センサー取り付けのようす 宇宙線研究所・北棟1階の共同実験室で

 ハイパーカミオカンデは、現行のスーパーカミオカンデの約8倍の有効質量を持つ巨大水タンク(体積 : 26万トン)とそのタンクの中に並べる超高感度光センサーからなる実験装置で、陽子崩壊の探索やニュートリノのCP対称性の破れ(ニュートリノ・反ニュートリノの性質の違い)の測定、超新星爆発ニュートリノの観測などを通し、素粒子の統一理論や宇宙の進化史の解明を目指します。同事業は2020年2月、日本で最初の予算が成立して正式にスタート。2022年11月から本体空洞の掘削を開始し、2023年10月にドーム部分の掘削が終了するなど建設が本格化しています。

 同実験には、日本を含めて世界20カ国が参加・協力を表明していますが、光センサーの光電子増倍管(PMT)に取り付ける防爆ケースなど一部の実験機材を日本以外の国から調達する計画です。テストでは、フレーム設計や組み立ての精度、実験機器の取付方法やフレームとの干渉、また、取付方法の効率化や安全性、などを確認します。これまでも2020年1月ごろから柏キャンパスの宇宙線研究所北棟1階の共同実験室にモックアップのフレームを設置して、主に50センチ口径PMTの取付テストを行ってきました。

 さらに今年4月からは、最終設計の側面用フレーム(ステンレス製 : 縦280センチ、横380センチ)と、天井・底面用フレーム(鉄鋼製 : 縦420センチ、横210センチ、高さ210センチ)を新たに設置。国内外の研究者や技術職員が、日本製PMTと防爆ケース、海外で生産されるマルチPMTのレプリカ、さらにはハイパーカミオカンデから水中に設置することになった読み出し用の電子回路モジュールを、天井クレーンや手動のリフターを使い、フレームの架構に設置する確認作業を行いました。今後は施工業者なども加わり、作業手順の確認や見直しを行い、2026年度開始予定のタンク内設置への準備を行う予定です。

 テストの責任者である宇宙ニュートリノ観測情報融合センター長の奥村公宏准教授は「今回は、日本製の50センチ口径PMTだけではなく、海外グループが製作したマルチPMT、外水槽PMT、電子回路モジュール、タイベックシートなど、およそ全ての実験装置を使用した統合試験を行いました。装置をフレームに実際に設置してみて初めてわかることも多く、不具合があれば設計の変更が必要です。設計が確認できたらいよいよ製作段階に入ります」と話しました。また、ハイパーカミオカンデ実験の共同代表である神岡宇宙素粒子研究施設長の塩澤真人教授は「プロジェクトが本格化していることを実感します。国内外の研究者が各担当実験機器を用意して、2026年度にタンク内に集結できるよう、準備を進めていきます」とコメントしました。

4月半ばから始まった側面用フレームへのPMTの設置テスト

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