梶田隆章教授の最終講義「宇宙線研での研究生活を振り返って」に約400人が参加

トピックス

 2024年3月末に定年を迎える梶田隆章教授の最終講義「宇宙線研での研究生活を振り返って」(ICRRセミナー)が3月27日、柏キャンパスの宇宙線研究所6階大セミナー室で開かれ、会場に約100人、ZoomとYouTubeの中継に約300人の合わせて約400人が参加しました。

約100人が詰めかけた宇宙線研究所の大セミナー室。ZoomとYouTube中継も約300人が視聴した

 梶田教授は1981年4月、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻に入学し、小柴昌俊特別栄誉教授の研究室に所属。1986年3月、同研究科の博士後期課程を修了(理学博士)。理学部附属素粒子物理国際センターの助手を経て、1988年に宇宙線研究所の助手となり、1992年に助教授、1999年に教授に就任。1999年から2016年まで宇宙線研究所附属宇宙ニュートリノ観測情報融合センター長、2008年から2022年まで宇宙線研究所の所長を務め、2020年から3年間、日本学術会議会長も務めました。

 専門は宇宙物理学で、カミオカンデ、スーパーカミオカンデの実験に携わり、「ニュートリノ振動」の発見により、1999年仁科記念賞、2010年戸塚洋二賞、2012年日本学士院賞、2015年ノーベル物理学賞、文化勲章、文化功労者など数多くの賞を受賞。東京大学卓越教授・特別栄誉教授の称号を受けています。

笑顔を浮かべながら最終講義を行う梶田教授

 最終講義の冒頭、中畑雅行所長が挨拶に立ち、「梶田先生の最終講義にご参加いただき、ありがとうございました」と述べ、梶田教授のプロフィールを紹介。続いて梶田教授が「宇宙線研での研究生活を振り返って」と題して講義を行い、大学院の学生時代に経験したカミオカンデ実験、宇宙線研究所へ来てから携わったスーパーカミオカンデ実験、宇宙ニュートリノ観測情報融合センターでの取り組み、宇宙線研究所所長時代の仕事、現在研究代表者を務める大型低温重力波望遠鏡KAGRAでの体験などについて、約1時間にわたって語りました。

 スーパーカミオカンデ実験では「ニュートリノ振動の発見」という大きな成果が得られた一方、2001年に光電子増倍管が割れる事故が起き、「私の研究者人生の中で最悪の日だったと思います。良かったことは戸塚先生が個々の研究者の意見を聞いたうえで、『測定器を再建する。これには議論の余地はない』と世界に向けて発信したことです。この素早い決断があったおかげで、多くの皆さんの支援を受けて再建に向けて一丸となって進むことができました。本当に感謝しています」と述べました。また、宇宙線研究所の所長を14年間務めたことに触れ、「所長を務めたことで理論系や天文系の皆さんを含め、いろいろな方と話をし、それ以前に比べて広い視野で研究を見るようになり、大変良かったと思います。特にさまざまなプロジェクトの立ち上げやアップグレード等を見る機会に恵まれたことは幸運でした。研究を行う、あるいは支えるのは人なので、人を大切にすることを心がけてきました。可能な限り若い世代をサポートすることにも気をつけました」と述べました。最後に、これまでを振り返り「私はありがたいことに、良い研究所、先生、仲間、研究プロジェクトに恵まれ、成果にも恵まれました。宇宙線研究所は国際共同研究拠点として、宇宙線研究者の研究を支えることがミッションで、それを忘れてはならないですが、それと共に『科学者の自由な楽園』として今後も発展してほしいと思っています」と結びました。

 梶田教授は4月以降も、東京大学卓越教授(宇宙線研究所)として東京大学に最長で10年は在籍し、大型低温重力波望遠鏡KAGRAの研究代表者を務めながら宇宙物理学の研究に携わる予定です。