スーパーカミオカンデ実験グループのChristophe Bronner特任助教 日本物理学会若手奨励賞を受賞

トピックス

 宇宙線研究所のスーパーカミオカンデ実験グループに所属するChristophe Bronner特任助教がこのほど、日本物理学会の各領域で優れた学術論文を執筆した若手研究者に贈られる第18回(2024年)日本物理学会若手奨励賞を受賞したことがわかりました。

神岡宇宙素粒子研究施設で研究するChristophe Bronner特任助教

 Christophe Bronner特任助教は素粒子実験領域から選ばれ、受賞対象研究は『3.13×1021 個の入射陽子での T2K 実験によるニュートリノ混合の制約の改善』。対象の論文は、” Improved constraints on neutrino mixing from the T2K experiment with 3.13×1021 protons on target, Phys. Rev. D 103, 112008(2021) です。

T2K 実験は,茨城県東海村J-PARCの高強度陽子加速器で生成・発射したニュートリノビームを、295キロ離れた岐阜県飛騨市神岡町の Super-Kamiokande で検出する「長距離ニュートリノ振動実験」です。受賞論文は、2018 年5 月までのT2K 実験のデータを解析し、ニュートリノ振動における各種パラメータの最新値を報告。日本物理学会の領域選考委員は「とくに混合角や質量二乗差絶対値に対する最高精度での決定および CP 対称性の破れや質量順序に対する有意性の確認は価値が高く、特筆に値する。論文では緻密で網羅的な解析が分かり易く記述されている」と高く評価し、解析を主導した日本グループの中心人物である同特任助教が、日本物理学会の若手奨励賞にふさわしいと解説しています。

 Christophe Bronner特任助教は「日本物理学会からこのような賞をいただき、たいへん光栄です。この賞は、ニュートリノと反ニュートリノの振る舞いの違いに関する最初の重要な結果を導いたT2K実験の共同研究者による、すべての研究活動が評価された結果だと考えています。日本のニュートリノ研究はいま、とてもわくわくさせる時を迎えています。T2K実験は、大幅なアップグレードの後、まもなく新しいフェーズに入ります。また、次世代のハイパーカミオカンデの建設が着々と進んでいます。これらによって、私たちは、ニュートリノの振る舞いをより正確に理解し、陽子の安定性など物理学の多くの根本的な課題に迫る研究をすることができます。新たなフェーズへの展開と、そこから生まれる成果がとても楽しみです」と喜びの気持ちを語りました。