観測的宇宙論の松本明訓さんと梅田滉也さん、卓越大学院プログラムFoPMのQEで優秀賞を獲得

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 東京大学の国際卓越大学院教育プログラムの一つ「変革を駆動する先端物理・数学プログラム (FoPM)」の大学院生で、観測的宇宙論グループに所属する松本明訓さんと梅田滉也さん(修士2年/現時点は博士1年)がこのほど、博士後期課程でのプログラム履修に必要なQualifying Examination(QE)に合格し、優秀賞を受賞しました。

 国際卓越大学院プログラム(WINGS ― World-leading Innovative Graduate Study Program)は、高い研究力と専門性をもって人類社会に貢献する博士人材を育成するため、東京大学の研究科等が連携し、修博一貫(又は学修博一貫)の学位プログラムとして展開しているものです。テーマ別に20のプログラムがあり、2人は理学系研究科、工学系研究科、数理科学研究科が運営する「変革を駆動する先端物理・数学プログラム(FoPM)」(日本学術振興会の卓越大学プログラムに2019年度採択)の大学院生です。

観測的宇宙論グループの松本明訓さん

 松本さんの研究テーマは「すばる望遠鏡の分光観測で探る原始ヘリウム存在比と宇宙論の検証」です。すばる望遠鏡のHSC探査から得られた極金属欠乏銀河5つを、先行研究の3つに加え、分光観測の結果を検証したところ、原始ヘリウムの存在比(He/H)が0.2370と従来より低く、素粒子の標準理論から大きく外れた結果を得たというもので、理論グループが提案するレプトン非対称性のモデルで説明ができる可能性があるとの論文を、米国の天文学誌Astrophysical Journalに投稿し、すでに掲載されています。松本さんは今回の優秀賞を受け、「指導教官の大内先生や助教の皆さんをはじめ、多くの先輩方に、解析方法などを丁寧に教えていただいたおかげです。理論グループの川崎先生には定期的にゼミにも参加させてもらい、ビックバン直後の元素合成がどのように関わるかなども教えていただき、とても今回の研究に役立ちました。今回の結果は、まだ2σ程度の精度しかないので、もっとサンプルを増やして決定的な議論ができるようにしたいです。将来は、アイデアを持って観測し、大きな発見を続けてきた大内先生のような研究者を目指し、いろいろな研究にチャレンジしていきたいです」と抱負を語りました。

観測的宇宙論グループの梅田滉也さん

 梅田さんの研究テーマは「すばる望遠鏡の可視撮像分光で探る宇宙再電離史と電離源」です。すばる望遠鏡などの観測データから選び出した比較的近傍にある極金属欠乏銀河(EMPG)3つの可視光輝線や強いHe II輝線から、EMPGの電離スペクトルの形状を導き出したもので、こうした高エネルギー電離源がビッグバンからの宇宙年齢で10億年までに起きたとされる宇宙再電離でも寄与した可能性に言及しました。この成果は、2022年4月に米国の天文学誌Astrophysical Journalに掲載されています。梅田さんは今回の優秀賞を受け、「指導教官の大内先生や研究室の先輩の皆さんにコメントをもらいながら研究できたおかげで受賞できました。現在は遠方銀河の光度関数と空間分布から、銀河間にある水素ガスの中性状況を調べ、どのように宇宙再電離が進んだかを調べています。人間が生まれるずっと前に起きたこと、宇宙がどのように形成されてきたかが、観測データを見ることで調べることができる点が面白く、とてもワクワクします。大内先生や播金先生のような遠方銀河の研究者になることを目指し、努力していきたいと思います」と抱負を語りました。

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変革を駆動する先端物理・数学プログラム (FoPM)
宇宙線研究所・観測的宇宙論グループ