ICRR レポート「電磁相互作用の基礎とその応用—宇宙線現象の解釈のために—」(著者:西村純・東京大学名誉教授/宇宙科学研究所名誉教授)を出版

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 宇宙線研究所は2022年11月、東京大学及び宇宙科学研究所の西村純名誉教授が電磁カスケードシャワーの解析的扱いについて執筆した講義録「電磁相互作用の基礎とその応用—宇宙線現象の解釈のために—」(ICRRレポート)を出版しました。

 現在の宇宙線研究において、高エネルギー宇宙線が大気の分子と衝突して起こす広範囲の空気シャワーのモンテカルロシミュレーションは欠かすことのできない重要なツールで、多くの宇宙線研究者がシミュレーションソフトCORSIKAのお世話になっています。しかし、その利用者である研究者の誰もがCORSIKAの中身を熟知しているとは言えないと言います。そのエッセンスをブラックボックス化させてはいけないという問題意識のもと、水本好彦・国立天文台名誉教授の声掛けで研究者有志が集まり、2013年に発足したのが「モンテカルロシミュレーション研究会」です。

 本レポートは研究会の初期の活動の中で、西村名誉教授が2015年、モンテカルロシミュレーションとは対極にある解析的な方法で、空気シャワーの宇宙線現象を解釈する目的で講義したもので、講義を受けた研究会のメンバーから「講義内容を文章として残し、今後の研究者のバイブルにしたい」という依頼があったことに応え、西村名誉教授が自ら執筆しました。

 さらに講義の記録に加え、1961年に京都で開かれた宇宙線国際会議(第一回京都会議)についての西村名誉教授の回想録(3ページ)も、付録として加えられています。

 レポートの編集に関わった、﨏隆志准教授は「編集者の一人とはいえ、モンテカルロに慣れてきってしまった自分の頭は数式の連続に面食らいました。西村先生の研究が宇宙線分野の発展に果たした役割を考えると、まだまだ勉強と痛感します。このレポートは懐古のためではなく、若い方が自然現象を多面的に捉える機会に活かしてもらえればと期待します。」と話しています。

 レポートのWeb版はこちらからご覧になれます。出版物をご希望の方は広報室(icrr-pr@icrr.u-tokyo.ac.jp)までお問い合わせください。