女子学生イベント「やっぱり物理が好き!」に東京大学理学系研究科・馬場彩准教授が出演

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 女子学生のためのイベント「やっぱり物理が好き! 〜物理に進んだ女子学生・院生のキャリア〜」が11月19日、Zoom会議によるオンラインで開催され、全国から約50人が参加しました。

 本イベントは、物理学を専攻する女子学生や大学院生の割合が、日本では特に低いことから、これから物理を学ぼうという女子学生や、物理分野に進学した学部生・大学院生を支援する目的で、東京大学柏キャンパスのカブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、物性研究所、宇宙線研究所が合同で企画しています。7回目となる今回は、物理学科の出身で大学や企業で活躍する講師4人を招いて開催し、宇宙線研究所の推薦により、東京大学理学系研究科の馬場彩准教授が出演して講演を行ったほか、スーパーカミオカンデグループに所属する柏木ゆりさん(修士2年)もTAとして自己紹介を行い、バーチャル空間SpatialChatで参加者からの質問に答えました。

Zoom会議に参加して講演する東京大学理学系研究科の馬場彩准教授

 馬場さんは「星たちの熱い声を聴くと」と題し、生い立ち、研究者としての日常、目に見える宇宙と見えない宇宙の違い、人工衛星による超新星残骸の観測と最新の研究成果までについて、講演しました。

 滋賀県出身の馬場さんは、研究者に憧れた小学校時代、天文学者カール・セーガンの著書「COSMOS」が好きで、来日して京都を訪れた本人からサインをもらった中学生時代について振り返り、「学者を目指していても、学校の成績は体育以外はオール3で、少し変わった子でした」と語りました。「高校時代も合唱にはまって、高校3年の11月まで活動し、浪人中は『一番にならないと研究者は無理』と友人に泣きついていました。親は『食いっぱぐれのない医者』を勧めてくれましたが、ビビリで怖がりの私には無理だし、やっぱり夢は諦めきれませんでした」「大学に入っても、自分より頭の良い天才のような人がたくさんいて、それでも誰かが引導を渡してくれるまでしがみつこうと。勉強で一番になれなくても、他のことでも頑張り、運も味方してくれて、現在に至るという感じです」と馬場さん。

 研究者の日常については、『しんどい』『めんどうくさい』『あきた』と思う日々がほとんどを占めているとし、「それでも一年間に何日かは楽しい日があります。このために生きている、と思える日があり、新しい発見の興奮のための日々、頑張っています」と語りました。

 研究のお話では、「私たちが望遠鏡で見ている宇宙の姿は、ほんの一面でしかありません」とし、星の「死」である超新星爆発が記録された平安時代の「明月記」に言及。「夜でも三日月より明るい星が空に輝いていた、昔の人はきっと驚いたことでしょう」。この超新星爆発のエネルギー1044ジュールの凄さについて「太陽が一生の100億年かけて出すエネルギーを一瞬にして出すだけでなく、星一つ分の質量1033グラムの物質が衝撃波を伴う超音速で飛び散ったということです」。さらに、1000年後となった現在の超新星残骸をX線望遠鏡で撮影した画像を示し、「直径は50光年もあり、今でも秒速3000キロで膨張を続けている熱いシャボン玉です」と解説。また、超新星爆発により、星の中で核融合によって作られた重元素が撒き散らされていることに触れ、JAXAのX線天文衛星「すざく」によるティコの新星SN1572のスペクトル分析のグラフを示し、「鉄やシリコン、アルゴン、ニッケルなどに特徴的な波長が見られます。拡大してみると、クロムやマンガンなどレアメタルもあることが発見されました」と最近の成果について説明しました。

 質疑応答では「宇宙物理は気が遠くなるほど難しいですが、勉強にあたっての心意気や良い教科書はありますか」「勉強以外にも研究する上で必要な力はありますか」「女性であるが故の苦労はありましたか」「一番でないとやる気が出ないことがあります。自分より出来る人がいる場合、どのようにすれば良いのか。秘訣はありますか」などの質問が出て、馬場さんは一つ一つ丁寧に回答していました。

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