博士課程の中塚さん、村井さん 西脇さんが、日本物理学会・第77回年次大会(2022年)の学生優秀発表賞を受賞

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 理論グループの中塚洋佑さん(当時・博士課程3年)、村井開さん(同)、高エネルギー天体グループの西脇公祐さん(同1年)の3人が、2022年3月に行われた日本物理学会・第77回年次大会で、学生優秀発表賞を受賞し、ホームページ上で公表されました。

 中塚さんは「超軽量AxionがCMB偏光モードに作る宇宙の複屈折の数値的研究」と題し、年次大会で発表しました。中塚さんは、宇宙の暗黒エネルギーを説明できる可能性がある超軽量Axionが、宇宙背景放射(CMB)に引き起こす複屈折を推定する研究に取り組みました。先行研究では十分調べられていなかったという、複屈折が引き起こすCMB偏光モードの角度依存の変化に注目した計算を行いました。その結果、超軽量Axionの質量に応じてCMB偏光成分の相関パワースペクトルが特徴的な形状を持つことを突き止め、将来の観測から超軽量Axionの質量を正確に決められる可能性も示しました。中塚さんは自身の研究について、「宇宙の複屈折は、これまで見つかったことのない新粒子を探索できる可能性を持っています。将来の観測実験で、ワクワクするような結果が出ることを楽しみにしています」と語りました。

理論グルーブの中塚洋佑さん

 同じ理論グループの村井さんは「SU(N)ナチュラルインフレーション」と題し、年次大会で発表しました。村井さんは、宇宙初期に起きたとされるインフレーションについて、インフレーションを引き起こす場としてはたらくAxionがSU(N)ゲージ場と結合する模型の研究を紹介しました。SU(2)群の場合には、非可換ゲージ場がインフラトンと結合することで真空期待値を持ち、大きなテンソル揺らぎを生成することが知られています。発表ではこの群をSU(N)に拡張し、ゲージ場の背景解として新たな等方解が存在することを示すとともに、その背景解の周りでの摂動の振る舞いについても議論しました。村井さんは自身の研究について、「今回はこのような賞をいただけて大変光栄です。指導教官および共同研究者に心より感謝いたします。今後もより魅力的な研究ができるよう精進してまいります」と語りました。

理論グループの村井開さん

 高エネルギー天体グループの西脇さんは「銀河団の電波観測を考慮した高エネルギーマルチメッセンジャー放射の推定」と題し、年次大会で発表しました。西脇さんは、銀河団同士の衝突をきっかけに生まれるとされる電波ハローの観測結果をもとに、従来の衝突による乱流が相対論的電子を加速するというシナリオに、高エネルギー宇宙線が相対論的電子を作り出すという物理を組み込み、数値計算した結果を、かみのけ座銀河団(Coma)の観測結果と比較。これまで一時的とされてきた電波ハローが、10億年以上も持続する可能性があることを引き出しました。西脇さんは自身の研究について、「宇宙線の起源を探ることがゴールなのですが、その候補の一つである銀河団について、あまり研究されていないことに驚きました。まだ観測されていないガンマ線やニュートリノなども含め、銀河団の観測データを集め、宇宙線が加速され、地球に飛来する仕組みや物理を明らかにしていきたいと思います」と抱負を語りました。

高エネルギー天体グループの西脇公祐さん

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