野田浩司准教授が第18回(令和3年度)日本学術振興会賞を受賞

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 独立行政法人日本学術振興会は12月16日、日本の学術研究の将来のリーダーと期待される日本学術振興会賞の受賞者を発表し、宇宙線研究所からチェレンコフ宇宙ガンマ線グループの野田浩司准教授(宇宙線物理学)が選ばれました。受賞理由は「ガンマ線バーストからのテラ電子ボルト領域超高エネルギーガンマ線放射の研究」で、東京大学宇宙線研究所からの受賞は、第15回(平成30 年度)の大内正己教授に続いて二人目となります。

日本学術振興会賞を受賞した野田准教授

 ガンマ線バーストは、宇宙から爆発的に短時間にガンマ線が到来する現象です。その正体は、大質量の恒星が燃え尽きる際に起きる超新星爆発や中性子連星の合体と考えられ、発見以来100年以上も謎である宇宙線の起源・加速機構の一つである可能性が示唆されています。

マルチメッセンジャー天文学の発展に向けて重要な貢献

 日本学術振興会の発表資料によりますと、野田准教授は2019年1月14日、スペイン・カナリア諸島ラパルマ島の山頂に設置された大気チェレンコフ望遠鏡MAGICにおける観測で、多国籍の研究者からなるガンマ線バーストチームを率い、ロング・ガンマ線バーストに付随したテラ(1012)電子ボルト領域の高エネルギーガンマ線を世界で初めて確認。さらに、月光下での観測データの扱いや大気状態のモニターなどで工夫を重ね、ガンマ線スペクトル成分の観測と解析を成功させました。その結果、ガンマ線バーストには、電子シンクロトロン放射では説明できない、より高いエネルギーの別の放射機構が存在していたことが明確になりました。

 さらに、過去の観測である2016年8月21日のショート・ガンマ線バーストの観測データから、テラ電子ボルト領域の信号を見つけた成果もあったとし、「野田氏の成果は、宇宙線の起源、高エネルギー天体現象の解明、マルチメッセンジャー天文学の発展に向けて重要な貢献であり、将来の発展が大いに期待できる」と高く評価しています。

 日本学術振興会賞は2004年、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者の研究意欲を高め、研究の発展を支援することで、日本の学術研究の水準を世界のトップレベルに発展させることを目的として創設されました。人文学、社会科学及び自然科学の全分野が対象とされ、トップレベルの学術研究者で構成される審査会が選考を行い、今年度は25人の受賞者が選ばれています。

 授賞式は2022年2月3日、日本学士院(東京都台東区)で行われる予定です。

関連リンク

東京大学宇宙線研究所 チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ
第18回(令和3年度)日本学術振興会賞の受賞者決定について
日本学術振興会賞の受賞者一覧
野田浩司准教授の受賞理由と詳細なプロフィール (16ページを参照)