元観測的宇宙論グループの藤本征史さんが井上研究奨励賞を受賞

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 大学院生時代から宇宙線研究所の観測的宇宙論グルーブに所属し、2019年度まで研究員を務めていた藤本征史さん(現在はNiels Bohr Institute / DAWN & Marie S.Curie COFUND Fellow)が、第38回井上研究奨励賞を受賞したことが、12月13日、井上科学振興財団のホームページで公表されました。

2019年12月に都内で記者会見する藤本さん

 井上研究奨励賞(賞状・メダル及び副賞50万円)は、理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した37歳未満の研究者で、優れた博士論文を提出した若手研究者に対して贈られるもので、宇宙物理学・天文学分野からは毎年1名前後が選出されています。宇宙線研究所の関係者の受賞は藤本さんで4人目となります。

 藤本さんは、東京大学大学院理学系研究科の大学院生として宇宙線研究所の観測的宇宙論グルーブに所属。2019年3月に理学博士を取得したあと、宇宙線研究所と国立天文台ALMAプロジェクトの研究員を経て、2019年12月からデンマークにあるThe Cosmic Dawn Center のDAWN Fellowに就任、2021年1月からはMarie Skłodowska-Curie COFUND INTERCTIONS Fellowも兼務しています。

 藤本さんは、日本の国立天文台などがチリに建設したALMA望遠鏡を使って初期の宇宙に漂う冷たいガスや塵からの放射を、星間及び銀河周辺物質から宇宙の大規模構造に至るまで、包括的に研究を進めています。2019年12月には国際研究グループを主導し、宇宙初期に存在する巨大炭素ガス雲を世界に先駆けて発見した論文を出版し、プレスリリースとともに記者会見を開催しました。また今年4月にも、宇宙誕生後間もない新生銀河が回転によって支えられていることを発見し、宇宙線研究所とともに共同プレスリリースを行っています。また、12月22日にNASAから打ち上げられる予定のJames Webb Space Telescopeでは、初年度の運用という貴重な枠を高い倍率を勝ち抜き、こうした新生銀河の内部構造に迫る国際プロジェクトもリードしています。 藤本さんは、今回の受賞について、「今回このような名誉ある賞をいただけることになり非常に光栄です。受賞対象の博士論文やその後の研究活動は、柏キャンパス、そして宇宙線研究所での充実した大学院生活の賜物に他なりません。指導教員である大内正己教授をはじめとする、知的好奇心盛んな研究室の皆様や、共同研究者の皆様と普段から研究議論を楽しませていただけたことはもちろん、研究でもそれ以外でも普段から分け隔てなく交流が持てる宇宙線研究所の心温かい土壌が、その後海外でも伸び伸びと研究活動を楽しむ根幹を養ってくれたように思います。今まで関わってくださった皆様に感謝致します」と喜びと感謝の言葉を述べ、「世界中のあらゆる人々にとって、明日へのワクワク感が少しでも向上するような、そんな研究を引き続き世界の最前線で楽しんでいきたいと思います」と抱負を語りました。

 井上科学振興財団のホームページ