<柏キャンパス一般公開2021>
【うちゅうラボ】大型霧箱で宇宙線を探す! 約300人が視聴
川田助教、塩見・日本大学准教授の特別セッションも

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 地球に降り注ぐ高エネルギーの小さな粒「宇宙線」を見える化する霧箱実験。オンライン一般公開2021でも昨年に引き続き、「戸田式卓上型霧箱B-112」(横幅38㌢、奥行き43㌢、高さ17㌢)をお借りし、10月24日、GoProで撮影した映像をYouTubeで生中継しました。

 今回の霧箱は、同じ東京大学柏キャンパスにある同大学院新領域創成科学研究科の飯本武志教授の研究室からお借りしました。

  中継日の24日は午前10時から午後6時まで、霧箱内の縁部分に無水アルコールを満たし、底部からドライアイスで冷却。そこに宇宙線などの放射線が飛ぶと、過飽和状態のアルコール分子が電離し、そこに引き寄せられた周囲のアルコールが液体に戻り、飛行機雲のように飛跡が浮かび上がる様子が多く観察されました。宇宙線以外にも、アルファ線源のユークセン石を中央に置いたり、ランタンの芯由来のラドン(アルファ崩壊する)を含む空気を吹き込むことにより、多くの飛跡が走る様子が見られました。

宇宙線などの飛跡が飛行機雲のように現れた霧箱のようす

 中継では、ほぼ1時間に1回のペースで特別セッションが開催され、宇宙線研究所で学ぶ修士・博士課程の大学院生や研究者が「宇宙線とは何か?」「霧箱でなぜ宇宙線が見えるのか?」について解説。加えて自らの研究テーマについて紹介しました。チェレンコフ宇宙ガンマ線グループのMoritz Huetten特任研究員(写真左)、三輪柾喬さん(M1、写真中央)、宇宙ニュートリノ観測情報融合センターの田代拓也特任助教、チベット実験グループの川島輝能さん(M1、写真右)にご協力いただきました。

 この日16時からの最終セッションは、チベット実験グループの川田和正助教(写真右下)と塩見昌司准教授(日本大学生産工学部、写真左下)が「宇宙線のふるさと ぺバトロン」と題し、チベット実験で発見されたぺバトロンの証拠について紹介。チベット実験の詳細、宇宙線の中からターゲットのガンマ線を見分ける工夫、宇宙線をPeV領域(1015eV程度)まで加速する天体「ぺバトロン」が銀河系内にあった証拠を発見し、2021年4月にプレス発表した経緯について、詳しく解説しました。

 さらに、視聴者から質問サイトに寄せられた質問に回答しました。 

 視聴者からは、「霧箱の中に強力な磁石を入れると曲がると思いますが、曲がり方から何か情報は得られるでしょうか。霧箱の中で飛跡が終わる点では大気の原子に放射線が吸収されているのでしょうか」「銀河系の磁場がわかって地図なようなものができれば、エネルギーが低い宇宙線でも宇宙線の源がわかるようになるのでしょうか」「エネルギーが高いガンマ線は地球に届くかなり前の段階で対生成などの現象を起こして減衰することはないでしょうか。その場合何らか補正をされるのでしょうか」「μ粒子の数ででガンマ線と宇宙線を判別されるということは両者が同時に検出器に来る頻度は少ないということでしょうか」「超新星残骸がペバトロンの候補とのことですが、マゼラン星雲の超新星1987Aは今後の観測対象になるでしょうか」「宇宙線研究の世界で今後予想される大きな成果、ニュースには、どんなものが考えられるでしょうか」「鉄筋コンクリート造ではどんな放射線が観察できるのですか」など多くの質問が集まり、これら全てに回答しました。

 本中継は10月31日までのアーカイブ配信も含め、約300人に視聴いただきました。大変ありがとうございました。