窪 秀利

高エネルギー宇宙線研究部門

プロフィール

窪 秀利

KUBO,Hidetoshi

窪 秀利

教授

研究テーマ「高エネルギーガンマ線観測による極限天体の探究」

 宇宙から地球に届くガンマ線は、人工の粒子加速器のエネルギーを超えるものを含んでいます。このガンマ線を使って、人工で作り出すことができない極限状態を持つ天体の性質を調べることができます。これまでの研究から、超巨大ブラックホールと光速近い速度で噴き出しているジェットを持つ天体(活動銀河核)や、太陽が一生かかって放出するエネルギーをわずか数秒で放出する天体であるガンマ線バースト、地球磁場の1兆倍以上の磁場を持つ中性子星などからのガンマ線が捉えられており、これらの天体における放射機構や放射源となる粒子の加速機構の謎が解明されつつあります。
 ガンマ線の中でも、100ギガ電子ボルトを超える超高エネルギーガンマ線の観測が始まったのは1990年頃で比較的新しい分野であり、その後の観測技術の進歩により、現在、約250個の天体が検出されています。これら極限天体をさらに詳しく研究するために、約100台の望遠鏡を設置する、次世代ガンマ線天文台Cherenkov Telescope Array(CTA)計画が進められています。この計画には、31か国1500名以上が参加し、我々の研究室を含め、日本からは100名を超える研究者・大学院生が参加し、望遠鏡建設と天体観測に大きな貢献を果たしています。
 我々の研究室は、このCTA計画の中で、最大の口径23mを持つ大口径望遠鏡の設計段階から参加し、初号機をスペイン・カナリア諸島ラパルマ島に建設し、2018年に完成させました。さらに、2024年度の完成に向けて望遠鏡2号機から4号機の建設を進めています。
 宇宙を見る手段は、従来の電磁波や粒子線に、近年、高エネルギーニュートリノや重力波が加わり、マルチメッセンジャー天文学が大きく発展しつつあります。高エネルギーニュートリノや重力波源の正体解明にも、高エネルギーガンマ線観測は重要な一翼を担っています。また、宇宙ガンマ線の観測は、天体物理学にとどまらず、宇宙赤外線・可視背景放射による星・銀河形成史の解明や、対消滅ガンマ線観測による宇宙暗黒物質探索、量子重力理論の検証など、素粒子物理学と天体物理学にまたがる重要な課題も含んでいます。
 我々の研究室では、稼働開始したCTA大口径望遠鏡に加え、稼働中の高エネルギーガンマ線望遠鏡MAGICやガンマ線天文衛星Fermiも用いて、上記の課題の解明に取り組んでいます。大学院生は、海外グループの研究者・大学院生と協力して、第一線で、望遠鏡建設や天体観測、データ解析で活躍しており、国際グループの中で大きな存在感を示しています。みなさんも、望遠鏡建設や天体観測に関わり、世界最高感度を持つCTA大口径望遠鏡を使って、上記の課題に挑み、発見の興奮を味わってみませんか。

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