重力波グループの鈴木幹基さん(D1)が、8月26日から28日まで大阪公立大学で開催されていたThe 37th KAGRA Face-to-Face Meetingにおいて、KAGRA Poster Award Prizeを受賞しました。KAGRA F2F Meetingは、大型低温重力波望遠鏡KAGRAの研究者が国内外から一堂に会し、研究の進捗や今後の計画を議論する会議で、35件のポスター発表の中から鈴木さんら2人がポスター賞を受賞しました。
宇宙で2つのブラックホールが合体してできた新しいブラックホールは振動して、やがて静かな一つのブラックホールに落ち着きます。この振動によって重力波が発せられる現象を「リングダウン」と呼びます。鐘を叩いたときの音にいくつもの音色が混ざっているように、この重力波にもブラックホールごとに決まった「音色」(ブラックホール準固有振動モード)がいくつも含まれています。そして一般相対論によれば、その音色はブラックホールの質量と回転の速さ(スピン)だけで決まります。観測した重力波からこの音色を聞き分け、理論の予言どおりかどうかを調べる手法は「ブラックホール分光学」と呼ばれ、アインシュタインの一般相対論を極限的な重力の場で検証する方法として注目されています。
ところが、ブラックホールの音色は互いにとてもよく似ており、どの音色がどれだけ鳴っているのか区別がつきにくいということが知られていました。また、聞き分ける音色の数を増やすほど解析に時間がかかるという問題もありました。そこで、鈴木さんたちは、よく似た音色をあらかじめ数学的に「混ざらない形」に整理し直してから解析する新しい手法を開発してきました。今回の研究ではこの手法を、2025年1月に検出された、これまでで最も大きな信号の重力波イベント「GW250114」の実際のデータに適用しました。その結果、従来の方法よりも2番目の音色を高い確からしさで検出できることを示しました。さらに、高速で回転するブラックホールで起こると予想されている、2つの音色がほぼ同じ高さで鳴って互いに打ち消し合うような難しいケースについても、新しい手法でそれぞれの音色を正しく取り出せることを示しました。これらの成果は、今回の手法がリングダウンを用いた一般相対論の検証に有用であることを示唆しています。
鈴木さんは「Applications of the Orthonormal Framework for Ringdown Analysis: Real Data and Avoided Crossings」というタイトルでポスター発表を行いました。鈴木さんは「理論、実験問わず様々な人に今回の研究の魅力を伝えられたことを嬉しく思います。また、前回の受賞(The 34th KAGRA Face-to-Face Meeting)ではKAGRA Best Poster “Design” Prizeだったので、今回は研究内容に関しても評価していただけたことを大変光栄に思います。」とコメントしています。