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ボリビアでALPAQUITA建設作業

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 15年ぶりにボリビアに行ってきました。初めてラパスに行ったのは25年前ですが、そのころに比べて街が大いに発展しています。高層ビルがたちならび、おしゃれなカフェやレストランも増えています。街中に張り巡らされたロープウェイ網も便利。

 今回は、9月30日から10月11日の2週間、チャクルタヤ山中腹の4740m地点で、ALPAQUITA(アルパキータ)実験の建設作業です。ALPAQUITAは「アルパカちゃん」という意味で、ALPACA(アルパカ)実験の小型版です。2019年度に地上検出器を設置し、2020年度には地下ミューオン検出器一台を設置する予定です。4700mの力仕事は息が切れて大変ですが、ボリビアメンバーもはりきって作業がすすみました。最初は日焼け止めをぬらずに行ったので顔がぼろぼろ。週末にラパスの町であわてて日焼け止めを買いました。

 ALPAQUITAが完成して最初の宇宙線観測がはじまるのが楽しみ。そのあとはフルサイズのALPACAですね。

 


写真:チャカルタヤ山を背景にしたALPAQUITAサイト。赤い屋根の建物が観測ハット。よくみるとすでに設置したシンチレーション検出器がみえる。

2019年10月17日

メキシコ・オーストラリア・韓国

大忙しの一ヶ月。

11月16日から27日はメキシコへ出張。

まずは世界遺産都市グアナフアトで”Worskshop on Forward Physics and QCD at the LHC, the Future Electron Ion Collider and Cosmic Ray Physics” (https://indico.cern.ch/event/823693/)に出席。LHCf実験とRHICf実験の最新成果と今後のプラン(35分トーク)に加えて、宇宙線観測グループが共同でまとめた「空気シャワー観測におけるミューオン超過問題」を代表して発表(35分)。

次は、メキシコ第二の都市グアダラハラに移動。グアダラハラ大学で新たにALPACA実験に参加予定の研究グループと情報交換。また、同大学の立派なスーパーコンピューター施設を見学。学生向けのセミナーで宇宙線空気シャワー実験の基礎とALPACA実験についてお話しました。(夜のテキーラはほどほどで。)ちなみに、翌週に宇宙線研梶田所長が同大学を訪問してセミナーをするということで、スタッフがみな盛り上がっていました。私が(間違えて)何度か写真撮影を頼まれました。

最後は、メキシコシティーのメキシコ国立自治大学(UNAM)へ。UNAMでは 2003年からメキシコ国内シエラネグラ山で一緒に宇宙線観測を続けているグループのメンバーに久しぶりに会いに行きました。本当はシエラネグラ山に行って、ひさしぶりに装置の確認をしたかったけど、予定があわず。ここでも学生向けセミナーをしてきました。

10日足らずの大忙しの滞在でしたがメキシコパワーを感じた出張だった。

 

長くなったので、オーストラリア・韓国はまた今度。

以下写真説明

 

上:グアナフアトの町並み(Google Photoの加工あり)

中:グアダラハラ大学でスーパーコンピュータセンターの説明を聞く

下:UNAMの地球物理学科、宇宙線研究室メンバーと

 

2019年12月16日

柏サイエンスキャンプ

2020年2月25日から28日に柏サイエンスキャンプが開催されました。東京大学の1,2年生の学生さん5人が、宇宙線観測に使う技術(プラスチックシンチレータ、光電子増倍管、NIM、CAMAC等)を用いて大気中の二次宇宙線を測定しました。装置の基礎的な使い方を学んだ後、粒子が二枚のシンチレータを通過する時間差を測定して、宇宙線がほぼ光速で運動していることを実証しました。信号の大きさによって測定時刻がずれてしまうタイムウォーク補正まで加えて、短時間で実りのある実験と議論になりました。最終日のプレゼンも非常にわかりやすかったです。


 

一方で、3月3日から7日に予定されていたスプリングスクールは、新型コロナウィルス感染拡大防止のために中止になってしまいました。残念です。個々の研究室訪問は受け付けていますので、興味のある方はコロナ問題が落ち着いたらご訪問ください。

2020年03月16日

大学院入試説明会

5月30日(土)に東大大学院理学系研究物理学専攻の、6月6日(土)に宇宙線研究所の大学院入試説明会が開催されます。どちらもオンライン開催なので、関東圏以外の方も気軽に参加してください。なお、参加は事前登録制なので、下記のリンクから登録してください。

  東京大学大学院理学系研究科物理学専攻ガイダンス

  東京大学宇宙線研究所ガイダンス

説明会当日、さこはテレスコープアレイグループ(佐川教授)かチベット・アルパカグループ(瀧田教授)の会議室に参加しています。会議室には各グループの大学院生も参加するので、大学院生活についても質問できます。

(宇宙線研究所で大学院生として研究に参加するには、物理学専攻の大学院入試に合格する必要があります。)

2020年05月18日

偏極陽子衝突における超前方中性パイ中間子の左右非対称生成、ってなんだ?

6月22日に Physical Review Letter誌に”Transverse single-spin asymmetry for very forward neutral pion production in polarized p + p collisions at √s = 510 GeV"という論文を発表しました。各研究機関のウェブページにも紹介されています。(内容は同じです。)

宇宙線研:http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/9031/

理化学研究所:https://www.riken.jp/press/2020/20200623_1/index.html

米国ブルックヘブン研究所:https://www.bnl.gov/newsroom/news.php?a=117099


名古屋大学のRHICf実験のページ: http://crportal.isee.nagoya-u.ac.jp/RHICf/


論文の内容は上記のリリースをご覧いただくとして、どんな実験をしたのでしょう?宇宙線とどんな関係にあるのか(ないのか)、も含めて実験の背景を長めに説明します。

 

高エネルギーの宇宙線はその到来頻度が低いため、やってきた粒子を直接観測するにはとてつもなく大きな検出器が必要になります。どれくらい大きいか?例えば1000平方キロメートル、琵琶湖の面積よりも大きな装置が必要です。それは無理なので、「空気シャワー」とよばれる現象を利用して宇宙線を観測します。地球の大気分子に衝突した高エネルギーの宇宙線は大量の粒子を生成します。子供の粒子たちも高いエネルギーをもつので、さらに衝突をくりかえして…、地上に大量の粒子群が降り注ぎます。これが空気シャワーです。空気シャワーは、元のエネルギーによりますが、数100mから数㎞にわたってひろがるので、地上にまばらに置いた放射線検出器で観測することができます。また、空気シャワー中の粒子が放出する光(蛍光やチェレンコフ光)をとらえることでも観測が可能です。例えば、テレスコープアレイ実験は地上検出器と蛍光検出器を両方使っています。(図はチベット空気シャワー観測装置の写真と空気シャワーの模式図。)


 

しかし、われわれが測定しているのは宇宙線と地球大気がぶつかってでてきた「破片」であり、宇宙線

そのものではありません。そこで、この衝突の連鎖をシミュレーションで計算し、入射した宇宙線の特性(エネルギーや粒子の種類)と地上で観測される破片の関係を決めて、宇宙線の特性を推定します。ということは、シミュレーションが正確にできていないと推定を誤ってしまうわけです。シミュレーションの中でもっとも難しいのが「ハドロン反応」です。

 

ハドロンとは、素粒子クオークがグルーオンによって結合された複合粒子で、陽子と中性子がその代表選手です。その他に、今回の話の主役であるパイ中間子等、たくさんの種類があります。宇宙線の主成分は陽子や原子核(陽子と中性子の集合体)であり、地球の大気も原子核の集合なので、宇宙線と地球大気の反応はハドロン反応だらけなのです。ハドロンを構成する素粒子は非常に強い力で結合していますが、衝突時にはこれらの結合がちぎれたり、つなぎかわったりして大量の粒子を生成します。この複雑な過程を理論的に計算することが非常に難しいのです。特に、衝突時に前方に放出される粒子は、クオークやグルーオンの固まりとしての反応が重要なので、その計算が一層困難です。前方の粒子は親粒子のエネルギーをたくさんもっているため、空気シャワーの全体構造を決めるためにも重要です。

 

理論研究者たちは、この複雑な計算をうまく扱う手段をみつけてきました。どううまくか?かは難しくて私もちゃんと理解できないので省略。なぜ「うまく」と言えるのか、それは、実験と比較することです。加速器実験では、様々な種類のハドロンをエネルギーを正確にコントロールして衝突させ、その生成物を測定できます。これらをちゃんと説明できる理論(この場合は経験則もふくむのでモデルとよぶ)がいい理論です。しかし、宇宙線の研究の場合は、加速器で実現するよりもさらに高いエネルギーを扱うので、その理論が本当に適用できるか、が問題になります。それでも、できるだけ高いエネルギーの加速器で検証を続ける必要あります。

 

LHCf実験は世界最高エネルギーのハドロン衝突型加速器、Large Hadron Colliderを用いて、ハドロン衝突における超前方粒子生成を測定する実験です。LHCが作る粒子の最大エネルギーは7TeV(7x10^12 eV)で、空気シャワー観測が対象とする10^14 eVから 10^20 eVには全然届きません。しかし、LHCは「衝突型」加速器です。7TeVの陽子と7TeVの陽子を正面衝突させたとき、片方の陽子からみた相手のエネルギーは10^17 eVにも達します(特殊相対性理論の演習問題としてためしてみて)。宇宙線と地球大気の衝突は、片方が止まった系なので、「衝突のエネルギー」はこれで比較すべきなのです。10^20 eVの最高エネルギー宇宙線とはいかないけれど、空気シャワー観測の対象エネルギーの(対数で)ど真ん中を調べられるわけです。LHCf実験はLHCですでに多くの成果をあげています。

LHCf実験ホームページ:http://www.isee.nagoya-u.ac.jp/LHCf/index.html



さて、やっとRHICfのこと。

 

LHCfの測定が軌道にのりはじめたたころ、「RHICでも同じような測定ができるよ」との情報をもらう。RHICは Relativistic Heavy Ion Colliderで、アメリカのブルックヘブン研究所にあるハドロン衝突型加速器です。最高の加速エネルギーは255GeV、宇宙線のエネルギーにすれば 10^14 eV。初めは「あえてLHCより低いエネルギーで実験する必要はないでしょう」と考えていたが、RHICfと LHCfで空気シャワー観測の下のエネルギーと中間のエネルギーで粒子生成を理解できれば、その上への外挿の信頼度もあがるはず、と詳しい検討をはじめることに。下の図はLHCfで測定した中性パイ中間子の微分生成断面積。色の違いが衝突エネルギーの違いを現すが、エネルギーの最大を1に規格化し、横方向運動量の範囲をそろえると、結果はきれいに一致します。スケーリングとよばれるこのような一致(あるいは不一致のエネルギー依存性)をより広い衝突エネルギーで検証することが重要です

RHICは「エネルギーの低いLHC」ではありません。RHICは偏極ビーム衝突という世界で唯一の特長をもった加速器です。陽子や原子核などの粒子にはスピンと呼ばれる特性があります。偏極ビームとは、このスピンの向きをそろえた粒子ビームのことです。そして、このスピンの向きに対して右と左に生成される粒子の数が違うのが非対称粒子生成です(下図)。非対称粒子粒子生成は1970年代から知られていました。その起源はハドロンを構成するクオークやグルーオンのスピン分布を反映しているのだろうと思われてきました。これは、個々のクオークやグルーオンの特徴を示さなくなる前方粒子では非対称性がなくなることを予言します。一方、RHICで実験がすすむにつれて、前方粒子にも非対称性があることがわかってきました。「もっと前、ゼロ度直前ではどうなっているの?」という期待が高まっていました。

 

宇宙線のためのスケーリングと超前方での非対称粒子生成を測定するために、RHICf (f は forwardの意味)を開始しました。RHIC PHENIX実験で活躍していた理化学研究所の研究者たちと協力し、LHCfの二台の検出器のうちの一台をアメリカに送り、実験場所に設置できるよう改造を加えて実験に臨みました。手作り感満載の現場の写真をごらんあれ。中央左より、ハンドル付きパイプで上下に動かせるように設置されているのがRHICf検出器です。


実験は当初メンバーが所属するPHENIX実験の片隅でおこなうつもりでした。しかし、PHENIXのアップグレード作業とわれわれの希望のビーム運転の都合があわず、急遽STAR実験サイトに変更。これらの急なお願いに対して、PHENIX, STAR実験グループ、加速器グループ、RHIC科学委員の皆様から全面的なサポートを得ることができました。感謝の限りです。

 

さて、こうして突貫作業で準備をすすめ、2017年6月に無事データ取得に成功しました。無事?実は、我々のデータ取得は3日程度でよかったので、この年の加速器運転のほぼ最後に組み込まれました。ところが、「さぁ、我々の番だ」となったとたんに加速器が絶不調。数日ほとんどビームがでない状況が続く。がっくりしながら近所の中華料理屋に行くと、フォーチュンクッキーが ”Right now you need to be patiant”と。予言通り(?)、時間切れぎりぎりでやっと安定した衝突が実現。少しだけ運転時間も延長してもらい、無事データ収集を終了。

 

ひとつだけ、測定結果(下図)を。最大を1に規格化した横軸がエネルギー、縦軸が中性パイ中間子の左右非対称度です。例えば、左に55個、右に45個が生成されると、(55-45)/(55+45)=0.1 となるような値です。色の違いが測定角度の違いで、黒は過去のそこそこ前方の結果、マゼンタ赤青緑が今回のRHICfの結果です。比較的角度の小さいマゼンタは過去の結果とよく一致しています。それでも、過去の測定よりもはるかに前方を測定しているので、こんな角度まで非対称が見えたことが一番の大発見です。個々のクオークのレベルでは説明のできないメカニズムがあるはずです。一方で、緑の点は非対称はゼロといえます。これは当然で、ほぼゼロ度の角度では右も左もありませんからね。北極点で東か西かを議論するようなものです。逆に言えば、実験装置や解析による間違った非対称はできていない証拠になります。ゼロ非対称と大きな非対称の間も角度に応じて順に変化しており、この事実を説明できる理論の構築に期待がかかります。

宇宙線空気シャワーの理解のために始めた前方測定でしたが、違う方向の成果となりました。この結果が直接空気シャワー研究に影響することはありませんが、陽子陽子衝突という基本的な反応ですら、前方粒子生成が理解できていないことが改めてわかりました。スピン非対称測定は、その難しい反応の素過程をさらに詳しく調べることで、ハドロン反応の理解を深めます。複雑な反応のキーワードは「回折散乱 diffractive dissociation」。LHCでも、RHICでも、同じ衝突を測定する ATLAS, STAR実験との共同解析が始まっており、さまざまな面から前方粒子生成をより詳しく研究する活動が続きます。

 


2020年06月24日

「すぐわかアカデミア」で配信

国立大学共同利用・共同研究拠点協議会がすすめる、知の拠点【すぐわかアカデミア。】に「すぐにわかる宇宙線研究~空気シャワーってなに?~」というタイトルで動画を投稿しました。宇宙線研ですすめる空気シャワー観測による高エネルギー宇宙線の研究について、わかりやすく説明したつもりです。「高エネルギー宇宙線って何?」「空気シャワーって何?」「どうやって研究しているの?」と思った方はぜひご視聴ください。

国立大学共同利用・共同研究拠点協議会がすすめる、知の拠点【すぐわかアカデミア。】へのリンク: http://www.kyoten.org/seminar/

 

2020年12月22日

柏サイエンスキャンプ・スプリングスクール開催

2月23日から26日に、柏サイエンスキャンプが、3月1日から5日に宇宙線研究所スプリングスクールが開催されました。サイエンスキャンプでは学生が一日だけ宇宙線研を訪問、スプリングスクールは完全オンラインで実施されました。さこが担当する「最高エネルギー宇宙線」のチームでは、実験室に設置した4台のシンチレーション検出器を用いて空気シャワーを観測する実験をおこないました。実験室で、あるいはリモートで検出器の電圧閾値を調整し最適な値を決定したのち、3ーフォールドコインシデンスで空気シャワーを検出します。取得した ADC-TDCの値からタイムウォーク補正をし、シャワーの到来方向(天頂角、方位角)に変換したのち、時刻の情報もつかって赤経・赤緯にやきなおしました。放射線検出器の基礎特性から宇宙に焼き直すまでの一連の研究の流れを実践することができました。



 

スプリングスクールに関する詳細は宇宙線研究所のウェブページをごらんください。

 

2021年03月19日

2022年度大学院入試説明会

5月29日(土)に東大大学院理学系研究物理学専攻の、6月5日(土)に宇宙線研究所の大学院入試説明会が開催されます。どちらもオンライン開催なので、関東圏以外の方も気軽に参加してください。なお、参加は事前登録制なので、下記のリンクから登録してください。
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻ガイダンス
東京大学宇宙線研究所ガイダンス

 

宇宙線研究所で大学院生として研究に参加するには、物理学専攻の大学院入試に合格する必要があります。入試制度の詳しい説明や宇宙線研以外の研究室の説明も聞きたい方は29日の説明会に参加してください。宇宙線研の各研究室の説明会は16時以降に開催されます。

 

宇宙線研の研究全体について詳しく聞きたい方は5日の説明会に参加してください。柏キャンパスの様子、スーパーカミオカンデやKAGRAの説明も一緒に聞くことができます。また、状況が許せば6月12日に研究所を訪問しての説明会を実施します。興味がある方は今後の情報にご注意ください。

2021年04月27日

宇宙線国際会議終了

(画像と動画を添付していますが、Safariでみると問題があるようです。Chromeは大丈夫そうなので、できればChromeをご利用ください。)

 

7月12日から23日に、International Cosmic Ray Conference (宇宙線国際会議、通称ICRC)が開催されました。ICRCは2年に一回の開催で、今回が37回目という由緒ある国際会議です。世界の宇宙線研究者がICRCで新しい結果を発表することを目指して研究を進めています。

今回の開催予定地はドイツのベルリンでしたが、コロナ禍で残念ながら現地開催はできず、完全オンラインの開催でした。発表は事前にビデオ撮影して投稿したり、ヨーロッパ時間を中心にしたプログラムだったので、夜中の2時過ぎまで会議に出席したりと大変な二週間でした。(通常は1週間の会議ですが、時差を考慮して毎日の開催時間を短くして実施されました。)この間もなんやかんやで日中の通常業務はあるんですよね。海外出張中です、ではすまないので…

さこはALPACA実験の現状報告とCOSMOSの最新版について発表しました(せっかくなので、発表動画を一番下に添付します)。他にも、テレスコープアレイ実験、ALPACA実験、LHCf/RHICf実験の共同研究者がたくさんの結果や今後の計画について発表しました。ICRC2021については下記のホームページからアクセスしてください。

 

今回はオンライン開催だったICRCですが、宇宙線研究の特徴を反映して開催地は世界をめぐります。私が出席しただけでも

 2001年 ハンブルグ(ドイツ)

 2003年 つくば(日本)

 2005年 プネ(インド)

 2007年 メリダ(メキシコ)

 2009年 ウッチ(ポーランド)

 2011年 北京(中国)

 2013年 リオデジャネイロ(ブラジル)

 2017年 プサン(韓国)

 2019年 マジソン(アメリカ)

 2021年 ベルリン(ドイツ;オンライン)

と大陸をめぐっています。1997年は南アフリカでも開催されました。

 

では、次回ICRC2023の開催地はどこでしょう?

 

Osaka, Japan!!

です。さこも実行委員に入っており、すでに着々と準備がすすんでいます。次は完全に対面で開催できることを願っています。この記事を読んでいる方の中から、ICRC2023に出席する人がでてくれるとうれしいなぁ。

 

おまけ:ICRC2021の発表動画です。

 

 

2021年08月06日

ひさしぶりの装置製作!


TA実験の低エネルギー拡張TALE、そのさらに低エネルギーへの拡張TALE infillが始動しました。TAが観測する宇宙で最もエネルギーの高い粒子は、銀河系の外の天体からきていると考えられています。一方、比較的低いエネルギーの宇宙線(それでも無茶苦茶高エネルギーです)は、我々の住む銀河系の中で作られているはずです。では、その境界はどこだろう?境界では宇宙線の特性はどう変化しているのだろう?この疑問に答える実験が必要です。ここをねらうのが、TALE, TALE infillです。

 

利用する技術はTAと同じプラスチックシンチレータ。TAx4で改良されたものです。新たに50台の検出器を設置し、TAサイトのミドルドラム大気蛍光望遠鏡の近くに設置します。大気蛍光望遠鏡の近くにより高密度の地上検出器を配置することで、TALEよりも低エネルギーの宇宙線観測を実現します。

 

新しい地上検出器の製作は、宇宙線研究所・明野観測所の広い実験室でおこないます。

 

放射線検出器であるプラスチックシンチレータに緑色の波長変換ファイバーを丁寧に設置します。

 

ファイバーの端をを束ねて接着し、研磨したら

 

光電子増倍管(光検出器)に接着します。

 

最後に光電子増倍管からの出力信号を確認して異常がなければ合格!

 

すべて完成したらアメリカに送られます。ユタ州の観測サイトで最終確認と太陽発電パネル等との組み立てが完了したら観測地に設置し観測が始まります。楽しみ、楽しみ。

2021年10月20日

宇宙線研究所スプリングスクール参加者募集

東京大学宇宙線研究所では、毎年、全国の大学3年生を対象にした研究体験企画、スプリングスクールを開講しています。大学院に進学して宇宙・素粒子の研究をすることを希望している方はぜひ参加してください。さこも最高エネルギー宇宙線をテーマにしたプロジェクト研究を実施します。

例年は4泊5日で宇宙線研究所にきて朝から晩まで研究漬けになるのですが、コロナのため一昨年度は中止、昨年度は完全オンラインでの実施でした。今年度も原則オンラインですが、2月28日から3月4日に開講します。状況が許せば2月中に1日だけ宇宙線研への訪問を受け入れます。遠方の参加者には前後の宿泊費も支給されます。

今年度の参加者募集を開始しました。詳しくは宇宙線研のウェブページをご覧ください。定員が決まっていますが先着ではありません。課題作文があるので早めに応募方法を確認しておいてください。ウェブページには申し込み方法の他に、過去のようすなどもあります。

オンラインで研究漬けになるのが難しい分、プロジェクト研究は2月から少しずつすすめていきます。時間をかけてすすめられる分、より理会を深められるかもしれません。

スプリングスクールに限らず、大学院入学にむけた質問等は随時うけつけています。お気軽に連絡してください。

 

2021年11月17日

年度末いろいろ

2月22日から25日に東京大学の1-2年生が研究体験をする「柏サイエンスキャンプ」

2月28日から3月4日は、全国の大学3年生が宇宙線物理学を学ぶ「宇宙線研スプリングスクール」

3月15日から19日は日本物理学会

3月22、23日は「COSMOS講習会+空気シャワー観測による宇宙線の起源探索研究会」

と大忙しの一か月でした。そして、さこ研究室初の卒業生として樋口さん(博士)と沖本さん(修士)が卒業されましたおめでとうございます!

まとめてダイジェスト報告です。

 

1)柏サイエンスキャンプ

対面で実験し議論し、刺激的な4日間でした。

 

2)スプリングスクール

完全オンラインでしたが、2月から分担して研究をすすめ、最後は最優秀プロジェクト賞を受賞しました。おめでとう。

 

 

3)日本物理学会

今回は、ひさびさに対面で開催予定でしたが、残念ながら急遽オンラインに変更。TAグループ、Tibet/ALPACAグループ、LHCfグループからも学生をふくめてたくさんの発表がありました。秋はつくばでご近所だけど、是非対面で研究交流が復活することを願います。

 

4)COSMOSX講習会と空気シャワー研究会

こちらは、3月末。なんとか人数制限をしてハイブリッド開催ができました。研究会は毎年恒例ですが、対面は3年ぶり。若手セッションの初日、一般セッションの二日目ともに盛況で時間がたりないくらいでした。COSMOSX講習会は初の試み。これを機に自分の思うように空気シャワーのシミュレーションをできる研究者が増えるとうれしいです。

 



5)卒業おめでとう

 

2022年04月07日

大学院入試説明会

2023年度(令和5年度)入学のための大学院入試説明会の日程がきまりました。

入試制度の概略は「大学院受験」をごらんください。

今年度の説明会は

 物理学専攻 オンライン:5月27日(研究紹介)、28日(入試ガイダンス)

 宇宙線研「大学院進学のための交流会」オンライン説明会:6月4日(土)

 宇宙線研「大学院進学のための交流会」対面の研究室訪問:6月11日(土)

ことしは宇宙線研ではひさしぶりに対面の研究室訪問を実現する予定です。ぜひご参加ください。

詳しくは、宇宙線研ホームページから「修士・博士を目指す大学生」をご覧ください。

 

他大学から博士課程に編入をを希望する方は修士課程と同時期の出願が必要です。この時期にご相談ください。

 

 

2022年04月21日

年に一度の更新

2022年度はコロナからの回復で大忙しでした。ダイジェストで一年を振り返り、2023年度の活動話もしましょう。

6月にはひさしぶりにテレスコープアレイの現地シフトが始まりました。大気蛍光望遠鏡の鏡も砂埃をかぶってしまうので、まずは鏡洗浄から開始です。研究室の学生とPDも参加してユタで作業+観測を行いました。

6月にはさらにボリビアでALPAQUITA地上検出器の設置が再開しました。全97台のシンチレーション検出器を配置して、観測小屋までのケーブル敷設が完了です。さこも短期間ですがひさしぶりに現地作業をおこないました。

7月はICHEP国際会議でALPACAの現状を報告しました。残念ながら現地には行けずオンライン参加でしたが、「もうすぐ観測がはじまります」という発表ができました。

8月はテレスコープアレイメンバーが集中的に観測サイトを訪問し、不調な地上検出器の一斉補修をおこないました。検出器の稼働台数が一気に向上です。

8月のALPACA隊は検出器に光電子増倍管を設置し、ついに空気シャワーデータの収集を開始しました。この後100日程度のデータで期待通りの月の影の検出に成功するなど、順調にデータ取得を続けています。

さらに8月、さこは国内の乗鞍宇宙線観測所を訪問し、観測を終了した検出器からシンチレータを取り出す作業をおこないました。シンチレータは業者で加工したのち、ALPACA地上検出器の拡張に利用します。

9月、LHCのRUN3でLHCf実験があらたなデータ取得に成功しました。データ収集速度とトリガー方法を改善することで、これまでよりも多くのデータ取得に成功しています(これは名古屋大学が中心です。)

9月久しぶりの対面の学会が岡山理科大学で開催されました。

10月、イタリアで開催されたUHECR国際会議に現地出席しました。日本からもPD、大学院生が発表しました。

11月、短期でボリビアを訪問し、今後の地下ミュー粒子検出器の契約や建設等の段取りを確認しました。サンアンドレス大学の学長、副学長も訪問し、全面的なバックアップも約束してもらいました。

11月、TAチームはユタでTALE infillの設置を行いました。ヘリコプターを使っての作業です。

12月、日本の野沢温泉でテレスコープアレイグループの全体会議を実施しました。まだ人数は少ないものの、アメリカ、韓国からも共同研究者が参加しました。

1月、M2の高橋さんが無事修士論文合格です。おめでとうございます。そして進学もおめでとう。

2月、柏サイエンスキャンプで大学1,2年生が参加し、ミニ空気シャワーアレイで宇宙線観測を体験しました。

3月、ひさしぶりに対面のスプリングスクールが開催されました。全国の大学3年生がミニ空気シャワーアレイで上向きシャワーを探索しました。候補事象の正体は?

4月、TA/ALPACAともに新しいM1を迎えてにぎやかに活動しています。

 

今年は7月26日から8月3日まで名古屋大学で宇宙線国際会議が開催されます。年度明けからはこれに忙殺されてます。夏になったら、また落ち着いて近況報告しましょう。9月には乗鞍観測所70周年記念式典。

 

2023年05月15日

宇宙線国際会議など

7月26日から8月3日まで、名古屋大学で第38回宇宙線国際会議が開催され、私も実行委員の一人として大忙しの今年度前半でした。2年に一度の会議なので、38回ということは76年も開催しているわけです。実際、第一回は1947年で戦後すぐにはじまった歴史ある会議です。日本では過去に京都(1961年)、京都(1979年)、つくば(2003年)で開催されており、今回は20年ぶり4回目の開催でした。もともとは大阪で開催予定でしたが、コロナ禍となり、「本当に人がこれるの?会場キャンセルになったらキャンセル料どうするの?」ということで、開催1年半前に、急遽大学キャンパスでの開催に変更になったのです。「できるだけ対面でやりたい、でも突然オンラインになるかも。みんなオンラインに慣れちゃってこないのでは?」と悩みながらのハイブリッドの準備。そんな中エネルギー危機でみなさん予算不足で日本までこれないかも、と…

 

コロナ前は800人くらいの参加だったので、今回は600人現地、600人オンラインって感じかな、と予想して準備していたところ、結局、史上最大の現地1100人、オンライン300人の大盛況の会議となりました。会場の割り当て、バンケット会場の選定、昼食会場の手配、アルバイトの雇用と配置、と最後の3カ月は大騒ぎ。真夏の名古屋ということで、参加者が熱中症にならないよう、毎日、ペットボトルの水の注文と配送でもおおわらわ。でも、なんとか大きな問題なく成功裏に会期を終えることができました。完全ハイブリッド開催ということで、会場とオンライン状況のモニタが必要で、私は一度も会場に足を運ぶことなく期間中ずっと委員会室のすみでPC達と向かい合っていたのでした(写真)。残念。それでも、バンケットやコーヒーブレークのすきに、久しぶりに会う海外の友人たちと話すことができました。


写真は、全然国際感を感じない裏方の写真ばかりですね。ClosingセッションもZoomで参加。

 

研究発表は「Mega ALPACA計画」と「COSMOS X」のポスター発表をして、どちらも最終日のまとめ講演(ラポーター講演)で紹介されましたよ。TAグループはTAx4の最初のエネルギースペクトルを発表、ALPACAグループはALPAQUITA地上検出器の初期結果としてきれいな月の影を報告しました。LHCfグループも、初の超前方イータ中間子の生成断面積を報告。研究の紹介もしないと。

 

 

 

次回はもうひとつの大忙し「乗鞍観測所70周年記念式典」を

2023年09月22日