東京大学宇宙線研究所長 梶田隆章教授 2015年ノーベル物理学賞受賞

受賞理由

はじめに / ニュートリノとは? / ニュートリノ振動の発見 / スーパーカミオカンデ 
/ ニュートリノ全容の解明へ / 将来計画

将来計画

ニュートリノ研究は、さらなる飛躍を目指し次のステージへ前進しています。 ここでは、代表的な2つの将来計画をご紹介します。

将来計画1:ハイパーカミオカンデ 〜「素粒子」と「宇宙」を地下から見つめる〜

ハイパーカミオカンデ実験は、地下に設置される100万トン級の巨大水タンクと、そのタンクの中に並べる超高感度光センサーからなる検出器を用い、素粒子の統一理論や宇宙の進化史の解明を目指します。国際研究プロジェクトとして、世界各国の研究者が協力、2025年の実験開始を目指し準備が進められています。

 1998年のスーパーカミオカンデ実験によるニュートリノの変身(ニュートリノ振動)発見を突破口に、ニュートリノの性質が次々と明らかにされました。ニュートリノの性質の全容を明らかにするため、神岡では2つの新しい計画が検討されています。

 ハイパーカミオカンデ(上)は、スーパーカミオカンデを大きさ、性能共にグレードアップし、陽子崩壊の発見や、ニュートリノと反ニュートリノの違いの測定などを目指しています。SK-Gd計画(下)は、スーパーカミオカンデにガドリニウムを溶かし、検出器の高性能化を実現し、宇宙の謎に新しい方法で挑みます。

リンク:ハイパーカミオカンデ

将来計画2:SK-Gd スーパーカミオカンデ-ガドリニウム プロジェクト
 〜宇宙の謎に迫るスーパーカミオカンデの新たな挑戦〜

 SK-Gd は、スーパーカミオカンデ (SK) の純水に0.1%のガドリニウムを溶解し、SKの性能の飛躍的に改善させる計画です。

図:低エネルギーの反電子ニュートリノは「2つのチェレンコフ光」という特徴的な信号を出します。

目標① 超新星背景ニュートリノの発見

宇宙には、過去の超新星爆発から放出されたニュートリノ(反ニュートリノも含む)が飛び回っています。その中で反電子ニュートリの特徴的な信号(図)を探します。

超新星爆発とは:太陽の8倍以上の重さを持つ星の一生の最後に起きる大爆発です。超新星爆発で放出される大量のエネルギーのうち、99%はニュートリノによって放出されます。

図:1987年2月23日、大マゼラン星雲で発生した超新星SN1987A。右は爆発前。(アングロ・オーストラリア天文台/Daved Malin撮影)スーパーカミオカンデの前身であるカミオカンデは、この爆発に伴うニュートリノを世界で初めて観測しました。

目標② 超新星爆発の方向決定精度の向上
目標③ 超新星背景ニュートリノの発見

反応で発生する中性子の数を調べることでエネルギーの高いニュートリノと反ニュートリノとの区別をしやすくなります。また、陽子崩壊事象と大気ニュートリノによる事象の区別もより正確になると期待されています。

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