東京大学宇宙線研究所長 梶田隆章教授 2015年ノーベル物理学賞受賞

ノーベルウィーク

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2015年12月10日の授賞式前後で開催されるノーベルレクチャーや晩餐会などの催しに関するニュースを随時更新してまいります。

12月4日 − 出国記者会見

梶田教授は、来週にはじまるノーベルウィークに向けて羽田空港から出国しました。出発前には奥様とともに記者会見をひらき、「スーパーカミオカンデの仲間も行くので、いっしょにイベントを楽しみたい」と述べました。

提供:東京大学



12月6日 − ノーベル博物館へ光電子増倍管を寄贈

 2015年のノーベル物理学賞受賞者である東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章教授は、2015年12月6日(日)に受賞の理由となった研究にゆかりのある品として、2種類の光電子増倍管(こうでんしぞうばいかん)をストックホルム市内のノーベル博物館に寄贈しました。

 光電子増倍管とは、ニュートリノの観測施設であるスーパーカミオカンデの「内水槽」と「外水槽」に取り付けられている光センサーです。今回、梶田教授はスーパーカミオカンデの内水槽/外水槽のそれぞれに取り付けられている光電子増倍管をノーベル博物館に寄贈しました。

スーパーカミオカンデのタンクは、50,000トンの超純水を蓄えており、タンク壁面から厚さ2m厚の外水槽と、その内側にある32,000トンの内水槽とで構成されています。(図1参照)。内水槽の内面には約11,000本の20インチ径(50 cm径)の光電子増倍管(図2参照)が取り付けられており、内水槽内部で起こるニュートリノ反応が発するチェレンコフ光を捉えます。20インチ径光電子増倍管はカミオカンデのために1981年に浜松テレビ(株)(現、浜松ホトニクス(株))と、東京大学と高エネルギー物理学研究所(現、高エネルギー加速器研究機構)(KEK)との協力で開発されました。その後改良を重ねた製品がスーパーカミオカンデで使われています。20インチ径光電子増倍管は世界最大の口径をもつものであり、2014年には「IEEEマイルストーン」に認定されています。IEEEマイルストーンとは、電気・電子・情報・通信などの分野で歴史的な偉業を達成したと認められる技術に贈られるものです。

図1. スーパーカミオカンデのタンクの構成

図2.内水槽に取り付けられている20インチ径光電子増倍管
(写真:浜松ホトニクス(株)提供)

一方、外水槽には1,885本の8インチ径(20 cm径) 光電子増倍管(図3参照)が取り付けられており、ニュートリノと同様に地球を通過する、ミュー粒子が発するチェレンコフ光を捉えます。外水槽は2mの厚みしかないため、なるべく多くのチェレンコフ光を8インチ光電子増倍管が受けられるように光電子増倍管の周りには60cm正方、厚さ1.3cmの「波長変換板」が取り付けられています。波長変換板は、アクリル製の板で、短い波長のチェレンコフ光を受けて、光電子増倍管が最も捉えやすい(感度の高い)波長に変換する材料が入っています。

今回梶田教授が寄贈した光電子増倍管は、現在スーパーカミオカンデで使われているものと同型の20インチ光電子増倍管と8インチ光電子増倍管(波長変換板付き)です。 なお、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大学特別栄誉教授が、同博物館に自身の研究にゆかりのある品としてカミオカンデの光電子増倍管を寄贈しています。

図3.外水槽に取り付けられている8インチ径光電子増倍管(波長変換板付き)



ノーベル博物館にて

ノーベル博物館に寄贈された展示の様子。梶田教授とマクドナルド教授から寄贈された展示がひとつのケースに入れられ、梶田教授からは20インチと8インチの光電子増倍管が、マクドナルド教授からは重水と軽水が寄贈されました。 なお、ノーベル博物館での光電子増倍管の展示は、場所の都合で波長変換板なしの状態で展示されています。



ノーベル博物館には、2002年に小柴先生より寄贈されたカミオカンデの光電子増倍管も展示されています。

ノーベル博物館訪問の際にサインされた2015年ノーベル物理学賞受賞者の椅子。梶田教授の名前の下には「スーパーカミオカンデ・コラボレーション」と書かれています。



12月8日 9:00 - 10:20 − ノーベルレクチャー

ストックホルム大学のアウラ・マグナ会館にて、午前9時からノーベル物理学賞受賞者の記念講演会が開催され、ストックホルム大学の学生と思われる若い人もたくさん聴講しました。梶田教授はカミオカンデやスーパーカミオカンデ実験の当時を振り返り、大気ニュートリノ振動発見にいたるまでの道のりや今後のニュートリノ研究への期待を語りました。梶田教授による講演のあと、共同受賞者のマクドナルド教授は、大気ニュートリノ振動実験と同時に進行していた太陽ニュートリノ振動の研究について語り、最後にはニュートリノや暗黒物質探査など現在進行している実験を紹介しました。両者ともに、多くの研究者に支えられた研究成果であることを述べ、宇宙の物質の起源など宇宙の謎を解明していく今後の研究に期待をよせました。

スーパーカミオカンデ・コラボレーションから贈られたネクタイを着用し講演する梶田教授



12月8日 12:00 − 在スウェーデン日本大使館主催レセプション

梶田教授は大村教授とともに在スウェーデン日本大使館主催レセプションに招かれ、グランド・ホテルにてスピーチを行いました。
写真:左から山崎大使、梶田教授、大村教授



12月8日 19:00 − ノーベル・コンサート

ストックホルム・コンサート・ホールにて、ノーベル・コンサートが開かれ、梶田教授やゲストが参加しました。
写真:手前は梶田教授ご夫妻



12月9日 18:00 − レセプション

ノルディック博物館にて、受賞者や家族、ゲストが招かれ、レセプションが行われました。



東京大学総長、そして研究者仲間と記念撮影



12月10日 16:30 - 17:45 − 授賞式

授賞式の前

ノーベル賞授賞式が12月10日16:30からストックホルムコンサートホールにて 開催されました。梶田教授は、受賞者の中で一番最初にカール16世グスタフ国王からメダル とディプロマを受け取りました。授賞式には1500人以上が客席を埋め尽くしました。

©Nobel Media AB 2015/ Pi Frisk

©Nobel Media AB 2015/ Pi Frisk



12月10日 19:00 − 晩餐会

晩餐会の様子

授賞式の後、会場を市庁舎に移して晩餐会が開かれました。スウェーデン王室や受賞者 の関係者など1350人が参加しました。受賞者らの入場においては、梶田先生の 奥様がカール16世グスタフ国王にエスコートされて先頭で入場し、梶田先生ご自身は ソフィア妃にエスコートされての入場でした。