東京大学宇宙線研究所長 梶田隆章教授 2015年ノーベル物理学賞受賞

受賞理由

はじめに / ニュートリノとは? / ニュートリノ振動の発見 / スーパーカミオカンデ 
/ ニュートリノ全容の解明へ / 将来計画

ニュートリノ振動の発見

2015年のノーベル物理学賞は、ニュートリノ振動を実証した功績で、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長と、カナダのクイーンズ大学のアーサー・マクドナルド博士に贈られました。ここでは、梶田先生が発見した、大気ニュートリノの振動をくわしく解説します。

大気ニュートリノが変身していた!

宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線(主に陽子)が地球の大気分子と衝突して、ミューニュートリノと電子ニュートリノの2種類が生成されます。

大気ニュートリノはすべての方向からスーパーカミオカンデに到来し、その方向から飛行距離が決まります(図1参照)。

地球を通り抜けたミューニュートリノは上空からのミューニュートリノに比べて、観測数が予想値のおよそ半分でした (図2参照)。

一方で電子ニュートリノは予想どおりに観測されました。

このことから、ニュートリノ振動によって、ミューニュートリノは長い距離を飛ぶ間に観測されにくいタウニュートリノに変化したと考えられました。

ニュートリノ振動とは

ニュートリノ振動が発見されることで、ニュートリノに質量が存在することが証明されました。いったい、ニュートリノ振動とはどういう現象なのでしょう?

ニュートリノに質量が存在すると、ミューニュートリノやタウニュートリノが必ずしも一定の質量をもっているのではなく、「複数の質量をもった状態の重ね合わせ」 となることが可能になります(図3参照)。つまり、ニュートリノ1、ニュートリノ2、ニュートリノ3という、固有の質量を持ったニュートリノの状態が存在し、電子ニュートリノやミューニュートリノ、タウニュートリノはこれらの状態が少しずつ重ね合った状態であると考えることができます。

量子力学の特性から、ニュートリノも粒子であると同時に、波動の性質を持ちます。 そして、それぞれの質量の状態は、異なる波長の波となって伝わり、波の干渉によって「うなり」に似た現象が発生します(図4参照)。

その結果、ミューニュートリノ成分が「うなり」のように周期的に減ったり増えたりを繰り返します。これがニュートリノ振動です。

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