東京大学宇宙線研究所長 梶田隆章教授 2015年ノーベル物理学賞受賞

受賞理由

はじめに / ニュートリノとは? / ニュートリノ振動の発見 / スーパーカミオカンデ 
/ ニュートリノ全容の解明へ / 将来計画

ニュートリノとは?

ニュートリノとは、素粒子の一種です。素粒子とは、物質をこまかくくだいていったときに、これ以上くだけない、というところまで小さくした素となる粒子のことをいいます。しかし、ニュートリノは私たちの体や周りの物質をつくっている素粒子とは、ひと味違った素粒子です。不思議なニュートリノの性質をご紹介しましょう。

性質1:ニュートリノは幽霊粒子

ニュートリノは非常に軽く、電気を持っていないので、他の素粒子とほとんど作用しません。そのため、なんでもすり抜けて宇宙のかなたへ飛んでいってしまいます。検出器もかんたんにすり抜けてしまうので、観測も非常に難しいことがわかります。スーパーカミオカンデ(図)では、大量の水を用意して、ごくまれに水と衝突するニュートリノを観測しています。

性質2:ニュートリノはさまざまなところで生まれる

ニュートリノはなんでもすり抜けてしまいますが、非常にたくさん存在していて、今、皆さんの手のひらを1秒間に数兆個以上のニュートリノが通過しています。
・地球の大気
・太陽など星の中
・超新星爆発
・宇宙のはじまりであるビッグバン
・加速器などで人工的に作ることもできる

性質3:ニュートリノは3兄弟

ニュートリノは、電子の仲間です。(しかし電子とは違って、電気を持っていません。)ニュートリノは、電子や、電子の兄弟であるミュー粒子、タウ粒子と対になって生まれるため、ニュートリノも3種類あり、それぞれ電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノとよんでいます。

性質4:ニュートリノはとても軽い

ニュートリノの質量は、電子の100万分の1以下。電子の重さを象一頭とすると、ニュートリノは1円玉よりも軽い計算になります。長い間、ニュートリノの質量はゼロだと考えられており、それはニュートリノ振動の発見までは、素粒子理論の定説でした。

性質5:ニュートリノは変身する

ニュートリノは飛んでいる間にその種類が変わり、また元に戻るということを繰り返します。これをニュートリノ振動と言います。ニュートリノ振動は、ニュートリノに重さがないと起きない現象です。

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