東京大学宇宙線研究所長 梶田隆章教授 2015年ノーベル物理学賞受賞

受賞理由

はじめに / ニュートリノとは? / ニュートリノ振動の発見 / スーパーカミオカンデ 
/ ニュートリノ全容の解明へ / 将来計画

ニュートリノ全容の解明へ

T2K実験

 T2K実験(東海ー神岡長基線ニュートリノ振動実験)は、茨城県東海村の大強度陽子加速器(J-PARC)で生成された世界最大強度のニュートリノビームを295km離れたスーパーカミオカンデに打ち込み、これを検出することによって、世界最高感度でニュートリノ振動の測定をしようとする実験で、2009年から開始されました。 

 ニュートリノ振動の精密な測定には、ニュートリノ生成時の情報を正確に把握し、飛行後の情報と比較する必要があります。人工的に生成したニュートリノビームであれば、前置検出器で生成時のエネルギー、方向、数を測定することができます。陽子加速器を用いてミューニュートリノビームを生成し、スーパーカミオカンデでとらえます。飛行前後の情報を比較することで、精度の高いニュートリノ振動の研究が可能になります。

世界初!電子ニュートリノ出現現象をとらえた

2011年、T2K実験は、ミューニュートリノから電子ニュートリノへの変化(電子ニュートリノの出現)を示唆する観測結果を世界で初めてとらえました。さらに観測を重ね、2013年にはその存在の決定的証拠を得ることができました。これにより、3つのニュートリノ振動の全ての振動が実験的に確認されました。

 
T2Kのこれから <<なぜ我々が存在するのかー宇宙の謎に迫る>>

T2K実験では、現在、ニュートリノビームに続き反ニュートリノビームをJ-PARCからスーパーカミオカンデへ打ち込み、その振動の様子を観測しています。宇宙誕生時に物質と反物質が同数あったはずなのに、現在の宇宙には反物質はほとんどなく物質で満ちあふれているというのは、宇宙の進化の大きな謎となっています。 T2K実験ではニュートリノ振動と反ニュートリノ振動の違いを精密に調べることによって、この謎に迫りたいと考えています。

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