研究所紹介
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カンガルー (高エネルギー宇宙線研究部門) [研究所HP]
研究目的と装置

図1:10m口チェレンコフ径望遠鏡
天体から飛来する超高エネルギー (200 GeV = 2 x 1011 eV) 領域のガンマ線を観測し、宇宙線の正体を探ることが研究の目的です。高エネルギー粒子はどこでどのように加速されるのか、どのように伝播し太陽系まで来るのか、ということを解明しようとしています。

超高エネルギーガンマ線が大気中で起こす粒子のシャワーから放射されるチェレンコフ光という青白い微かな光のフラッシュを反射鏡で集光し、望遠鏡の主焦点に設置したカメラ(光電子増倍管の配列)で捉えます。観測は月明かりのない晴夜にのみ可能です。平成4年からオーストラリアの砂漠地帯ウーメラで稼動してきた3.8m口径望遠鏡に引き続き、平成11年にはその隣で口径7mの新望遠鏡が運転を開始しました。さらに平成12年には7m望遠鏡は口径10mに拡張されました(図1)。口径10m望遠鏡は552本の光電子増倍管を用い、高速エレクトロニクスを用いてチェレンコフ光のイメージをデジタル化して記録します。平成16年からは4台の望遠鏡が稼動しており、ガンマ線をより低いエネルギーまで精度よくとらえることが可能になりました。
 
研究の実況

図2 :超新星残骸RXJ1713.7-3946からの
ガンマ線信号の有意度マップ
口径10mのチェレンコフ望遠鏡を用いて、パルサーおよびパルサー星雲、超新星残骸、活動銀河核、星生成銀河など高エネルギーガンマ線を放出していると期待される天体の観測を日豪共同のチームで続けています。

超新星残骸からの超高エネルギーガンマ線の発見:
西暦393年に爆発したRXJ1713.7-3946と呼ばれる超新星残骸から超高エネルギーガンマ線が放出されていることが明らかにされました(図2)。超新星残骸の起こす衝撃波で素粒子が加速され、ガンマ線を放出していると考えられます。宇宙線を加速している源として超新星残骸は古くから注目されてきた天体ですが、ガンマ線の検出により、このような高エネルギー粒子の加速が実際に起こっていることの証拠が見つかったことになります。最近では銀河を取り巻く宇宙線ハローや、我々の銀河中心からのガンマ線の信号の発見などを報告し(図3)、話題になっています。そのほかにも、パルサーなどの銀河系内の高エネルギー天体や、活動銀河核と呼ばれる銀河系外天体などの観測を行っています。


図3 銀河系中心からのガンマ線信号の
有意度マップ(右上は電波望遠鏡の観測データ
カンガルー第3期計画:
口径10mの望遠鏡4台を約100m間隔で設置し、チェレンコフ光を複数台の望遠鏡で同時に捉え、ガンマ線の検出精度を飛躍的に上げようというのがこの第3期計画で、平成11年から5年計画でスタートしました。平成12年に7m望遠鏡の10mへの拡張がこの計画の第一歩として行われ、平成14年に2台、平成15年に1台の新規望遠鏡の建設が行われ、反射鏡や光電子増倍管カメラ、高速電子回路やデータ収集システムなどの各部分の調整作業の後、平成16年3月から4台の10m望遠鏡による本格的な観測が始まりました(図4)。複数台の望遠鏡により同じ粒子シャワーからのチェレンコフ光を同時に捕らえて、シャワーの立体的な再構成を行うことにより、ガンマ線の到来方向の決定精度が大きく向上するとともに、ガンマ線エネルギーの決定精度も向上します。このような観測により、天体ガンマ線源の詳細構造の研究が可能になるとともに、より低エネルギーまでガンマ線信号を捕らえることができるため、今までは銀河系内および比較的近傍の銀河系外天体に限られていた超高エネルギー現象の研究を、より遠くまで広げることができます。
 
※CANGAROO(カンガルー)とはCollaboration of Australia and Nippon (Japan) for a GAmma Ray Observatory in the Outbackを省略した造語で、ガンマ線天体物理学のための国際協力実験です。天体からの超高エネルギーガンマ線を、南半球のオーストラリア・ウーメラに設置した大気チェレンコフ望遠鏡を用いて観測し、天体における高エネルギー現象の研究を行っています。

図4 カンガルー計画3の現在の様子。4台の望遠鏡が完成している。