本文へスキップ

研究サポート室は、研究者の皆様が十分な研究時間を確保できるようにお手伝いします。

宇宙線研究所

私と科研費 若手研究者インタビューInterview

重力波推進室助教 山元一広さん

CEO

KAGRAは重力波検出器を神岡鉱山に建設するという計画で、日本では初めてのキロメートルスケールの干渉計型検出器になります。世界ではアメリカのLIGOとイタリアとフランスのVIRGOという同じキロメートルスケールの干渉計が、今現在アップグレード中でして、LIGOはもう観測を始めたというフェーズです。今建設中もしくはアップグレード中のものはKAGRAを含めて第二世代と言われていて、第一世代に比べて感度は10倍良くなります、残念ながら第一世代ではひとつも重力波は見つからなかったのですが、それは理論的な観測頻度から見ると当然でした。第二世代になると見える範囲が10倍広がるので、見える体積は1000倍になり、飛躍的に見える可能性は高くなってきます。第二世代では連星中性子星の合体からの重力波が検出されることがほぼ確実視されていて、日米欧で熾烈な争いが繰り広げられています。KAGRAが他の国とは違う点は、一つは鉱山内、地下につくることと、もう一つは鏡を冷やすということです。重力波検出器はありとあらゆるものが雑音源になって、地面振動は大きな問題です。神岡鉱山内は、柏のようなところに比べれば100分の1ぐらい小さく、それだけでも大きなアドバンテージになります。もうひとつの重力波干渉計の雑音としては熱雑音があり、言葉から分かるように冷やせば効果的なので、これを鏡を冷やす方法でやろうとしています。キロメートルスケールで地下にあって且つ冷やすというのは、世界でKAGRAが初めてです。今すでに第三世代が構想されていまして、第二世代の10倍感度が良いのですけれども、ヨーロッパのグループは第三世代で地下と低温を採用しようと言っていて、だからKAGRAはある意味先端を走っています。私のやることは、この鏡を冷やす部分です。鏡というのは検出器の原理的要請から吊るされるわけですけれども、吊るして冷やす、それも雑音が増えないように冷やすというところが私のパートになっております。

採択された基盤(C)研究について

今回採択された基盤(C)の研究は、何年か前から考えていたことです。この研究所はともかく、通常は宇宙線というと重力波は入りませんが、重力波の検出器でもその宇宙線を捉えられるかもしれないといわれていたことがありました。昔は共鳴型という検出器をつくっていて、大雑把に言うと長さが3メートル、直径が60センチ、重さとしてトンくらいの金属の棒を用意します。するとそれの共鳴周波数が1kHzくらいになり、1kHzの重力波が来るとその共鳴が励起されます。1kHz付近しか見えないのですが、1kHzでは感度がよくなる。40年以上前はそれが主流でした。見える帯域は狭いけれども感度は良いので、共鳴型の場合も感度を極限まで詰めなければいけないと、いろいろなノイズが研究され、その一つとして宇宙線によるノイズがありました。宇宙線がその金属の棒の中に入るとエネルギーを落としてそこが局所的に暖まり、熱膨張によってその部分だけ膨張するので熱応力が加わって振動が励起され、それがノイズになると言われていました。私は干渉計ではどうなのかと考え、頻度を見積もったところそれほどシリアスではありませんでした。ノイズかどうかはある意味主観的なものでして、重力波を捉えようとしているから宇宙線はノイズなわけですが、ここでちょっと面白いことを考えた人がいました。宇宙にはダークマターというものがあるのですが、それが共鳴型重力波検出器の中を通ったら、同じ原理で振動が励起されて見えるのではないか、重力波検出器を未知の素粒子探索に使えないかと考えたのです。実際にやってみたが見つからなくて「これ以下です」という論文しか出ていないんですが。で、それと似たようなことを干渉計でできないかと考えました。多少ナイーブに考えた時はだめだったのですが、その後別のアイデアを得ていけそうではないかと。ダークマターの量はいろいろな観測から宇宙にこの程度あるというのは分かっていまして、運がよければ一年間の観測で検出できると分かったので、この基盤(C)に応募してみました。KAGRAはもちろん重力波を捉えるものでそれがサイエンスですが、重力波以外のものも見えればそれは面白いかなと、そのひとつとして役に立たないかなと思いました。プロジェクトも重いので実際かけられるエフォートは、30パーセントくらいです。
これまで何回かチャレンジしてきました。ここに赴任した2011年が最初で、去年2014年に出したのが採択されたので4度目の正直ですね。最初のころは基盤と若手に二つ出すと良いといわれて、数打てば当るとやったこともありましたが、負担にもなってきて、最後の方はどちらかひとつ、今回は基盤(C)だけにしました。テーマも毎年のように変えていましたが、今回のテーマは実は前にも出していたので2回目ですね。自分でもやっぱり一番面白いと思ったのがこれなので、ある意味自分でも納得しています。 申請するに当って、初めのころ川村先生に見ていただきました。川村先生は百発百中で、審査もされているので。例えば、ハイライトを付けるとかそういう話はもらいました。若手としてはありがたいです。それと今回初めて応募前レビューに出して、通ったのはレビューの力ではないかと思っております。とくにサポート室のコメントは、参考になりました。レビューはちょっと前倒しで出さなければならないのでつらいですけれども、その甲斐はあったかなと今は思います。

今後の抱負

今回研究代表者になって当然額が大きくなるので、分担者のときより責任は重くなったなと思います。無事基盤(C)とれてよかったですけれども、これでちゃんと結果出して次は基盤(B)とかに応募していきたいです。 若手研究者へのメッセージと言われてもあまり言えるようなことはないですが、私は海外に3年半いました。重力波推進室の教員は年単位で海外で仕事をした経験のある人がほとんどです。 重力波だけの事情かもしれませんが海外に何年か行かないと日本にはポストがないということですね。ただプラスの面もあって、英語等に場慣れするとか、やっぱり海外に知己がいた方がいろいろやりやすい。私も日本に帰ってきてから向こうと随分やり取りして助かっている部分があります。

(山元さんは2017年2月に富山大学理学部物理学科の准教授にご栄転されました。)


バナースペース

ICRR 研究サポート室

内線:65175
メール:(◎を@に替えてください)
research_support◎icrr.u-tokyo.ac.jp