乗鞍観測所共同利用研究の紹介

乗鞍観測所は全国初の共同利用研究施設として、宇宙線を利用した素粒子物理学の研究を率先し、現在の宇宙線研究所の礎となりました。60周年を迎える現在では、大型の太陽中性子望遠鏡やミュー粒子望遠鏡などの宇宙線研究のみならず、気候や環境・雷鳥の飼育など高山の特徴を活かした幅広い研究も行われています。

名古屋大学

D面積は64平方メートル。世界7箇所に設置された太陽中性子望遠鏡の中で最大を誇ります。
平成16年からは、太陽電池パネルによる自然エネルギーを利用して、データ収集に必要な電力を供給しています。太陽中性子望遠鏡の設置された建物の南側に、40枚のパネルが取り付けられています。

信州大学

信州大理・宇宙線グループは、世界4か所に設置された多方向ミューオン計からなるGMDN(Global Muon Detector Network)を用いて、宇宙線異方性の連続観測を行っています。目的は宇宙線観測による宇宙天気研究です。
太陽面爆発等に伴う宇宙嵐は、地上で観測される宇宙線異方性(宇宙線の風)もはげしく変化させます。中でも「宇宙線前兆現象」と呼ばれる変動は、宇宙線観測による「宇宙天気予報」の可能性を示唆するものとして注目されています。 乗鞍の多方向ミューオン計は、この「宇宙線前兆現象」の観測に必要な検出器の条件を調べることを目的として設置されました。入射方向の分解能を上げても十分な統計精度が得られるよう、高山での観測が必要です。
乗鞍多方向ミューオン計10cm径・5m長の比例計数管を井桁状4層積み上げています。 有効検出面積は約25平方メートル、鉛直入射ミューオンの計数率は約10万c/h。 観測はノートPCで自動制御され、データはネットワーク経由で毎時自動的に信大へ転送されます。 システム全体の消費電力は約45W。