【トピックス】齋藤隆之特任助教が「ガンマ線でみる極限宇宙」をテーマに講演〜西東京市・多摩六都科学館のサイエンスカフェで

齋藤隆之特任助教が「ガンマ線でみる極限宇宙」をテーマに講演〜西東京市・多摩六都科学館のサイエンスカフェで
―チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ(CTA)

 チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ(CTAグループ)の齋藤隆之特任助教が登壇するサイエンスカフェ「ガンマ線でみる極限宇宙」が3月21日、西東京市の多摩六都科学館の学習室で開かれ、36人の一般市民が参加しました。

多摩六都科学館の学習室で開かれたサイエンスカフェ
多摩六都科学館の学習室で開かれたサイエンスカフェ

 多摩六都科学館でのサイエンスカフェは、同館と宇宙線研究所が2015年に締結した広報・啓発活動に関する相互協定に基づくもので、研究現場で得た知見を広く市民に提供し、科学文化の発展に寄与することなどを目的としており、1年に2回ほど開催されています。

極限宇宙の構造を、ガンマ線で詳しく調べる...

 齋藤特任助教はまず、極限宇宙について「とてつもなく大きな重力や磁場、密度など物理状態としての極限を持つ天体のこと」と解説し、何でも吸い込んでしまうプラックホールや、直径10キロ以内に太陽くらいの重さの物質が集中している中性子星などの例を挙げました。ガンマ線については、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線などの電磁波と同じ仲間でありながら、波長が最も短く、より高いエネルギーを持つものと説明し、「高エネルギーガンマ線で宇宙を観察すると、極限宇宙の構造をより詳しく知ることが出来ます」と述べました。

サイエンスカフェで語りかける齋藤特任助教
サイエンスカフェで語りかける齋藤特任助教
カフェに集まり、熱心にメモをとる中高生
カフェに集まり、熱心にメモをとる中高生

ガンマ線の観測で解明される三つの謎

 高エネルギーガンマ線の観測でわかることについて、齋藤特任助教は、①宇宙線がどこでどのように作られたか、②ブラックホールや中性子星の側の物理現象、③暗黒物質の探索や量子重力理論など最先端基礎物理学−−などの解明が進む可能性があると説明。「電荷を持った宇宙線と異なり、ガンマ線は電荷を持たず、宇宙の強い磁場で曲げられることがないので、どこから来たのかがわかります。1912年に発見されて以来、謎とされていた宇宙線の起源がわかるかも知れません。また、暗黒物質など宇宙の根本的な謎の解明にも役立つと期待されています」と述べました。

静電気グッズを使い、電場について説明する齋藤特任助教
静電気グッズを使い、電場について説明する齋藤特任助教
リモコンが発する赤外線をTV画面で確認する小学生
リモコンが発する赤外線をTV画面で確認する小学生

 また、高エネルギーのガンマ線を出す天体の候補として、超新星爆発のあとに残る「超新星残骸」、強い磁場を持つ中性子星が回転している「パルサー」、ブラックホールや中性子星と巨大星の「連星」、超巨大ブラックホールを中心に持ち、プラズマのジェットを吹き出す「活動銀河核」、中性子星の合体などで短時間に大量のガンマ線を出す「ガンマ線バースト」が挙げられると説明。

チェレンコフテレスコープアレイ(CTA) --- 32カ国、1200人が参加する一大プロジェクト

 さらに、スペイン・カナリア諸島ラ・パルマ島に完成し、自らも建設に従事したチェレンコフテレスコープアレイ(CTA)の大口径望遠鏡を、たくさんの写真や動画を使って紹介しました。齋藤特任助教は「CTAは32カ国、研究者1200人が参加する一大プロジェクトです。計画される大中小で計100基以上の望遠鏡のうち、北半球サイトの大口径望遠鏡1基だけしか完成していませんが、日本のチームは主に、大口径望遠鏡の鏡とカメラの設置で貢献しました。ガンマ線天文学は、この新しい望遠鏡の建設が進むことで近い将来、飛躍的な発展が見込まれます」と語りかけました。

講義を終えた齋藤助教に熱心に質問する市民ら
講義を終えた齋藤助教に熱心に質問する市民ら

 会場からは「ガンマ線は曲がらないというが、重力で曲がるのでは」「ブラックホールからガンマ線のジェットが出るというが、矛盾していないか」「CTA望遠鏡が3種類あるのはなぜか」「望遠鏡の鏡の材質は何か」「光速が一定でないことがわかったら、アインシュタインの理論は否定されるのか」など多くの質問が出たほか、講演後も個別に質問を求める人たちも見られ、齋藤特任助教は一人一人の質問に丁寧に答えていました。