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(エマルション部)

研究目的と装置
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中国のチベット自治区の羊八井高原(ヤンパーチン、標高4,300m)に中国と共同で空気シャワー観測装置を建設し、高エネルギー宇宙線の観測を行っています。

研究の目的は、
 1) 高エネルギー宇宙ガンマ線点源の探索、
 2) 超高エネルギー一次宇宙線の組成とエネルギースペクトルの計測、
 3) 高エネルギー宇宙線による太陽惑星間磁場構造の研究、
 4) 太陽フレア中性子の観測、等です。

主装置として、面積0.5uのプラスチックシンチレータを15m(一部は7.5m)間隔でほぼ碁盤目状に並べた空気シャワー観測装置を用いています。荷電粒子がプラスチックシンチレータを通過するときに発する光を光電子増倍管で検出し、その時間と発光量とをデータとして収集します。約3TeVの空気シャワー現象も検出できますが、このように低いエネルギーの空気シャワーを検出できるのは、世界で本装置だけです図1)。

図1 羊八井高原(標高4,300m)に設置された空気シャワー観測装置
図1 羊八井高原(標高4,300m)に設置された空気シャワー観測装置

空気シャワー装置の中心部には、面積が80uのエマルションチェンバーとプラスチックシンチレータ製の バースト検出器とが設置されています。この装置を空気シャワー装置と連動させることにより、「Knee領域」と呼ばれる1015〜1016eVの領域の一次宇宙線中の陽子成分が観測できます。

この他に、面積9u、厚さ40cmのプラスティックシンチレータと比例計数管でできた太陽フレア中性子観測装置があります。西暦2000年頃を中心に太陽活動が最大になりますが、この時発生する太陽フレアに伴う高エネルギー中性子を観測し、フレアでのイオン加速について研究します。宇宙線加速の謎を解く貴重なヒントが得られるはずです(図2)。

図2 太陽フレア中性子観測装置 図3 カニ星雲の方向から来る3TeVガンマ線の頻度分布
図2 太陽フレア中性子観測装置
図3 カニ星雲の方向から来る
3TeVガンマ線の頻度分布
研究の現況


カニ星雲からの数TeVガンマ線の検出:

空気シャワー観測装置で、カニ星雲からのTeV領域のガンマ線を検出しました図3)。空気シャワー装置による高エネルギーガンマ線の検出は世界で初めてです。また、1997年春から活発にフレアを起こした活動銀河核Markarian501からもTeV以上のガンマ線を検出しました。空気シャワー装置は、天候等の気象条件に左右されず大きな視野で天空を常時監視できるため、高エネルギーガンマ線を放射する活動天体を観測するのに大変適しています。

Knee領域(3×1014eV〜2×1016eV)の一次宇宙線のエネルギースペクトルの観測:

空気シャワー装置により、Knee領域の一次宇宙線のエネルギースペクトルを大変良い精度で観測しました(図4)。

Knee領域は、超新星爆発の衝撃波による粒子加速の限界や、銀河からの宇宙線の漏れだしの問題を解く重要な鍵を握っている領域です。今までのデ−タと比べると、2×1015eV近辺からスペクトルの傾斜が緩やかになっているのが分かります。一方、空気シャワー装置とその中心に置かれたエマルションチェンバーとの連動実験からは、宇宙線組成に関するデ−タが得られていますが、このデ−タにスペクトルのデ−タを加えると、Knee領域の宇宙線の加速や起源についてもっと解明できるようになります。

図4 Knee領域の一次線エネルギースペクトル 図5 太陽の影の年変化
図4 Knee領域の一次線エネルギース
ペクトル
図5 太陽の影の年変化

太陽活動と銀河宇宙線による「太陽の影」の変動:

チベットの空気シャワー観測装置は精巧に作られているため、銀河宇宙線による太陽と月の影を鮮明に捉えることができます。図5はこの装置で観測された「太陽の影」の年変化です。1991〜92年は太陽の活動期で、静穏期(1996〜97年)と比べるとその影が太陽方向から大きくずれているのが分かります。

現在このような観測ができるのは、世界で本装置のみです。この実験により、今まで観測方法がなかった太陽活動と太陽惑星間の磁場構造についても貴重なデ−タが得られるものと期待されています。
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Copyright (C) 2000-2001 Institute for Cosmic Ray Research, University of Tokyo